夏袋

10年以上読書を趣味にしている27歳。 年間150冊ほど読んでいます。 あらすじという…

夏袋

10年以上読書を趣味にしている27歳。 年間150冊ほど読んでいます。 あらすじというより、読んで面白かったところを中心に深掘りする記事を投稿中。 【contact】kenta.ju16@gmail.com

マガジン

  • 小説の感想

    大好きな本を読んで考えたことについて。いつでも思い出せるように。

  • 新入社員の頃に感じた日々の記録

    新入社員の悩み、考え、ちょっとしたぼやきのエッセイをまとめています。

  • 短編小説

    日常がテーマの短い小説をまとめています。

最近の記事

  • 固定された記事

卒業と友達とのこと

人生で4回目の卒業式を迎えた。 その日は、ジャケットすら脱ぎたくなるほどの暖かい日差しが降り注ぐ春の日だった。とても良い門出の日ということ覚えているのだけれど、式そのものについては改めて思い出すことがなにもない。 ありふれた言葉が並ぶ祝辞を、うとうとしながら耳にする。それが終われば、全く知らない在校生の送辞に、全く知らない卒業生の答辞。歌ったことのない校歌を雰囲気で口にした。そうしているうちに、終わりを迎え、いつのまにか卒業が完了。晴れて卒業生となった。 むしろ記憶に残

    • 「作文で永遠のような一瞬って書いたら先生にどういう意味って言われたんです」

      夏はちょうどいい。 まず長さがいい。オープニングに1ヶ月、メイン2ヶ月、エンディングに1ヶ月をかけたこの上ない構成で成り立っている。とりわけて長くもない。されど短くもない。もう飽きたと思う頃には終わる兆しが見えている。 そして会話のきっかけにちょうどいい。 少し暑くなれば「夏が始まったね」なんて会話が聞こえるし、夏の渦中には「今年も暑いね」なんて声が飛び交っている。極めつけは涼しくなってきた頃に、「そろそろ夏も終わりだね」と、ラスト1曲を迎えるライブのように僕たちにそろそ

      • 【読書感想】『怪物』〜怪物とはいったいなんなのか〜

        事実と真実は違う。 当事者は真実が見えているが、傍観者は事実のみを受け取り、そこから想像していくことしかできない。そう思うことが近年増えてきていると感じている。 例えば最近、地方移住者のカフェ経営の話でSNS上では大炎上していたが、二転三転する追加の情報にもはや何が正しいのかというところはわからなくなっている。 実際のところどうなのか、というのはやはり自らが当事者である以外は知る由もない。誰かに伝えられた情報は、その時点で疑わないといけないのかもしれない。情報は複雑に絡

        • 『天才はあきらめた』山里亮太著 ー人生に効く名言盛りだくさんのバイブルー

          自己否定は努力をやめる言い訳でしかない。 今や天才芸人とも言われる南海キャンディーズの山里亮太さん。 大女優の蒼井優と結婚し、順風満帆の人生にも見える彼だが、そこには地獄のような努力の日々があった。 自分の醜さも交え、死にものぐるいで笑いのために奮闘する芸人としての人生を綴った自叙伝。人生に効く名言盛りだくさんのバイブルです。 *** つい諦めてしまいそうになることがある。 大きな失敗をしたとき 自分なんか……と自己否定するとき 目先の楽しみに気持ちを奪われてしま

        • 固定された記事

        卒業と友達とのこと

        • 「作文で永遠のような一瞬って書いたら先生にどういう意味って言われたんです」

        • 【読書感想】『怪物』〜怪物とはいったいなんなのか〜

        • 『天才はあきらめた』山里亮太著 ー人生に効く名言盛りだくさんのバイブルー

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        • 小説の感想
          33本
        • 新入社員の頃に感じた日々の記録
          13本
        • 短編小説
          10本

        記事

          『蜜蜂と遠雷』恩田陸著 ー好きになることより、好きでい続けることのほうが難しいー

          『蜜蜂と遠雷』を読むと、音楽の可能性が無限大だと思い知る。 ふだん音楽を聞いていると、情景が思い浮かぶことってあると思う。それこそミュージックビデオみたいに、音楽の雰囲気をまとった映像がふんわりと頭のすみをかすめるみたいな。 暗闇を走り抜ける少年。 月の光のもとで物思いに耽る老人。 大草原で手を広げて叫ぶ少女。 様々なイメージを見たこともないのに、まるで記憶の中にあったかのように錯覚させる。 それは音楽が与える一つの魔法のようなものだ。 ただ、『蜜蜂と遠雷』は音楽と、

          『蜜蜂と遠雷』恩田陸著 ー好きになることより、好きでい続けることのほうが難しいー

          【散文詩】愛は呪い

          呪詛の塊になったわたしの愛はもう形を留めていないんだって。 今、なにをしていますか。 そう聞くことは愛です。 わたしはあなたを愛しているから、目の前から消えようと思います。 目にはうつらないわたしが言います。 わたしは愛を語るけど、あなたは口を閉ざしていて。165センチの肉体からこぼれ落ちるすべてのわたしを受け止めないでいて。 血も涙も細胞も。 風にのり、世界中をさまよって、いつでもどこにいても愛を感じられるようにわたしは飛び立ちます。 かけがえのない大切なあなたがどう

          【散文詩】愛は呪い

          『坂下あたると、しじょうの宇宙』町屋良平著 ー芥川賞作家が描く現代詩案内ー

          頭の中にあるものを外に出したいと思うときってありませんか? 例えば本を読んでいると、ある1文がふと現れて、自分の感情をぐわーっと頭まで押し上げてしまうような瞬間。 「どういうことだ?」 「ああ、こういうことかも!」 「そういえばこういうことあったな」 「あれでも、このパターンだとこういう考え方もできるな?」 「うーんわからん!」 みたいな。 目は次の文を追いつつも、全然違うことを考えてしまって、またもとの文の位置に戻る。 そういう本に出会えた時、ほわほわした幸福感に包

          『坂下あたると、しじょうの宇宙』町屋良平著 ー芥川賞作家が描く現代詩案内ー

          【散文詩】幸せと蝶々

          この世にあるものが、できればなるべく近くにあるものが全部嘘だったらいいのになあと思います。 歯磨きは実はしちゃいけません。人に優しくしてはいけません。夜は日が上りはじめたら寝ましょう。そうなったらみんな慌てふためくでしょうか。素直に嘘を認めてあたらしい世界に馴染んでいくのでしょうか。中には、受け入れられなくて今まで通りに生きていくことを選ぶ人もいるでしょう。 そもそもみんななんで信じれるんだろう。目の前のものを。コップは本当にコップですか?鉛筆は本当に黒いですか? 子供

          【散文詩】幸せと蝶々

          読書感想『成瀬は天下を取りに行く』宮島未奈著 ―なんでもやってみようと思える元気がもらえる1冊―

          いつから結果を気にして何もできなくなったんだっけって思う。 大学受験で自分の限界を知ったから? 社会人になって意味のないことより、結果だけを求めてしまうようになったから? 結果を残せるかわからないけど、やりたくなったからやってみようって思えなくなったのは何が原因だったんだっけ。いや、原因なんてなくて、いろんなことの積み重ねなのかもな。 最近は何かをやろうと思うと、いつもできなかったことばかりが頭に浮かぶ。 先にできなかった時の言い訳を思いついて、「それならやらない方が

          読書感想『成瀬は天下を取りに行く』宮島未奈著 ―なんでもやってみようと思える元気がもらえる1冊―

          1人で生きていくことはこんなにも怖いのか

          急に1人でいることが怖くなった。 27歳になり、周りが結婚し始めて、仕事に対してある程度覚悟が決まったり、それ以外にも違う道に進んだりしている人を多く見かけるようになっているからよくある話なのかもしれないけど、なぜだか「ああ自分は1人で生きて行くんだな」とふと思った。 最近、卒業以来あっていない大学の後輩に会った。 この人とはもう縁が切れたなと思っていた中でも、さらになぜ?という人だったので困惑したのだけれど、聞けば、共通の友人と飲んでいて話題に出たから久しぶりに会いた

          1人で生きていくことはこんなにも怖いのか

          読書感想『毒をもって僕らは』冬野岬著 ―少年少女はいつの時代も苦しい―

          世界は汚いことであふれている。 いじめや殺人、政治家の汚職、最近は動画投稿サイトでの炎上が後を絶たない。見るたびにうんざりするし、こんな世界でこれからも生きていくなんてと絶望さえしてしまう。 第11回ポプラ社小説新人賞特別賞を受賞した冬野岬著『毒をもって僕らは』という小説は16歳の誕生日を迎えた木島道歩が、余命宣告をうけた少女、綿野詩織と出会う場面から始まる。 病院で過ごし、年相応の生活を送れずに生きてきた綿野は、せめて外の世界は汚いものだと思いながら死にたいと吐露する

          読書感想『毒をもって僕らは』冬野岬著 ―少年少女はいつの時代も苦しい―

          読書感想『光のとこにいてね』一穂ミチ著 ―女性たちの名前のない関係について―

          名前のない関係と聞いて何を思い浮かべるだろうか ちょっといい感じだけど恋人にはなっていない相手とか、小さい頃、近所に住んでいたよく遊んでくれるお兄さんとか。 名付けようと思えばきっと、出来るのだろうけどそれはちょっと野暮のような気がする関係。 そんなものがあずかり知らぬところで無数に存在している。 名前があるものは安心する。 恋人と名前がつけば、「僕たちってどういう関係なの!?!?」とやきもきすることはなくなるし、なんかちょっと体調悪いなと思って病院に行けば、「あなた

          読書感想『光のとこにいてね』一穂ミチ著 ―女性たちの名前のない関係について―

          読書感想『月と六ペンス』~名作と現代人が抱える狂気の共通点~

          あの頃、僕はたしかに呪われていたのだと思う。 小学生の頃、流行っている曲の歌詞をひたすらノートに書き込んでいたことがあった。誰に言われたわけでもなく、そのような生業をしていた人が取り憑いたかのようにひたすら文字を書き留めていた。 サビは赤色にしようとか、好きなところは少し字を大きくしようとかこだわりを持って、繰り返し同じ曲を聞く。覚える。曲を止める。書く。巻き戻す。また聞く。 なぜそんな事をしていたのかと聞かれれば、今でも理由はわからないけれど、まぶたが開くことを諦める

          読書感想『月と六ペンス』~名作と現代人が抱える狂気の共通点~

          読書感想『スター』で手軽に答えにたどりつける時代について考えた話

          大人になってしみじみと思うことなのけれど、答えのない問いについて考える時間って本当に少ない。というかほぼない。 たとえば恋愛。 自分がどういう人となら一緒にいれるか、パートナーとどのように向き合っていけばいいか。そもそも愛するとはどういうことなのか。 人によって違う考え方、選択があるこの問いにおそらく決まりきった答えはない。 たとえば人生。 あわせて生きることと死ぬこと。 自分がどのように生きていきたいのか。何を目指しているのか。幸せとはなんなのか。多分に漏れず、この

          読書感想『スター』で手軽に答えにたどりつける時代について考えた話

          読書感想『星に帰れよ』で価値観という言葉を使うのをやめた話

          「人それぞれだと思う」 と、彼女は言った。 それはたぶん飲み会の席だったと思う。 何の話をしていたのかは忘れたけれど、それはおそらくイエスかノーで答えられない会話。例えば「浮気ってどこからだと思う?」とか「1億円を手に入れたどうする?」とかいう類のもの。 なぜだか、僕はその瞬間、胃の底が熱くなるような怒りを感じた。 だからといってそれを言葉にするほど感情だけで生きているわけではないのだけれど、むしろそこでその怒りをぶつけない自分に余計にいらだった。 つまるところ、こ

          読書感想『星に帰れよ』で価値観という言葉を使うのをやめた話

          読書感想『汝、星のごとく』が名言のオンパレードだった話

          僕たちは常に何かを選んで生きている。 朝起きると、「う~んあとと5分だけ寝よう…」と選んだり、定時頃に「今日中に仕事を終わらせようか…それとも明日にまわしちゃおうか…」と選んだり、いつ、どこで、何を、1日だけ振り返ってみてもそこには無数の選択肢があふれている。 ただ選ぶことって怖い。 自ら選ぶと誰かのせいにできない。早送りも逆再生もできない。誰にも言い訳はできなくて、どんな結果になろうとも尻をぬぐってはくれない。 選んだとしても、選んだ未来は間違っていなかったか、選ば

          読書感想『汝、星のごとく』が名言のオンパレードだった話