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天使のちぢれ毛

今回の記事はこちらの企画に参加しての記事となります。

〈まえがき〉
イトーダーキさんが主宰するリレーエッセイというものに初めて参加してみました。
今日はそのリレーエッセイのテーマである、【有意義で無意味】にまつわる記事です。

以前からイトーダーキさんの記事はよく読んでいて、リレーエッセイの存在は知っていたのですが、

(私みたいな者が参加するのは恐れ多い・・・)

と思い遠くで見ているだけでした。

ただ、stand.fmで参加者の皆さんが楽しそうに話されているのを聴いて、参加してみたいという思いが沸々とわいてきて、決死の覚悟で今回参加申請ボタンを押させていただきました。

で、参加申請した後に、今回のリレーエッセイのテーマが発表されたのですが、今回のテーマは【有意義で無意味】。

(うーん、むずかしい・・・)

大体何でも理由をこねくり回せば有意義な方向に持っていける気がするというのに、更に一見有意義そうに見えるけど、実は無意味なものってなると余計にむずかしい。

なんだろうなーと考えてたら、ふと昔の思い出が蘇ってきて。
あぁーあれなら有意義で無意味と言えるかもしれないというものが出てきました。
(ここから先は多少下ネタが混じり、人によっては気色悪さを感じる方もいるかもしれませんので、苦手な方はここでそっと戻るボタンを押していただければと思います・・・)

本編

それは私がまだ社会人2~3年目くらいの20代前半、新卒で入った会社内での話です。

私の一個上に女性の可愛い先輩(仮名でHさんとします)がいて、Hさんとどういう会話の流れでそうなったのかはよく覚えてないのですが、「天使なんかじゃない」という漫画が面白いから是非読んでみた方がいいと言われて。

私はそうは言われても、少女コミックはほとんど読んだことがなかったし、お金払ってまで読むほどだろうか?と思っていたら、

「私持ってるから貸してあげようか?」

とHさんが言ってくれたので、20代前半でお金も持ってなかった私は、

「本当ですか?ありがとうございます!」

と言って、お言葉に甘えて貸していただくことになりました。

で、後日会社に「天使なんかじゃない」を数冊Hさんが持ってきてくれて、家に持ち帰って1ページ、1ページ読んでいたのですが、Hさんから借りた「天使なんかじゃない」から、本来ならそこにあるべきではない、まさしく天使なんかじゃない不可思議な毛が出てきて。

「こ、これは、まさか・・・」

と思った自分は、翌日出社した際に、Hさんと同期の男の先輩と、更にHさんの先輩にあたる男の先輩の二人を会議室に呼び出して、

「お二人に、重大な報告があります・・・」

と重たいトーンで話し始め、

「昨日、Hさんから借りた【天使なんかじゃない】から、こちらが出てきました」

と言いながら、四つ折りにしたティッシュをゆっくり解体していき、その中から露わになったちぢれ毛を親指と人さし指でゆっくり持ち上げ、会議室の白い机の上に置き、

「私はこれを一体どうしたらいいでしょうか・・・?」

と報告、連絡、相談しました。

そしたら、流石は私が見込んだお二方の先輩というべきでしょうか、すぐに状況を理解していただき、

「まずはこれが入っていたことに感謝しよう」

と言って、3人で拍手しました。

その上で、

・これは実は「私のことを可愛いと憧れてるかもしれないけど、私だって天使じゃないんだよ」というHさんからのメッセージだったりしないだろうか?

・これはそもそもHさんではなく、Hさんの彼氏のちぢれ毛の可能性はないか?

・Hさんがもしブックオフで「天使なんかじゃない」を買っていたとしたら、前の持ち主、例えばおじさんのちぢれ毛の可能性もあるのでは?

・そもそもHさん絡みのちぢれ毛ではなく、室内の空気の循環の中で空気中を巡り巡った自分自身のちぢれ毛の可能性はないか?

など、疑問点はいくつか出てきたものの、今後の対応策としては、

・Hさんに僭越ながらちぢれ毛が入っていましたと報告する
・そっと本の中に戻す
・こちらで預かる

の3点のどれかだなという話になりました。

で、やはりここは見つけてしまったからには責任を持って、こちらで預かろうという話で満場一致でまとまりました。

我々は普段の会議の何倍も真剣な熱量で話し合えていたと思います。

少女漫画である「天使なんかじゃない」から天使じゃないものが出てきたことによって、少年達3人があの日、あの会議室で、熱を持って議論していたあの瞬間は、日本、いや地球上で考えても、その後に何も産み出さない、とても無意味な時間だったとは思いますが、間違いなく我々にとっては、とても有意義な時間でした。

私は家に帰ると、アクセサリーを入れるような小さめのジップロックの中にちぢれ毛を入れて、保管することにしました。

そして時は流れて、数年後、私は結婚することになりました。

一人住んでいたアパートから今の奥さんと一緒に暮らすマンションに引っ越すために、部屋の片づけをしていたら、数年前ジップロックに入れて保管することにしたあのちぢれ毛が出てきました。

そのちぢれ毛は、当時と変わることなくちぢれていました。

あのときの、あの熱量を一身に受けたからか、心なしかちぢれ毛は少し燃えた後のようにも見えました。

そして、私は奥さんに見つからないように、そのちぢれ毛をそっとゴミ箱に捨てました。

<1,607文字>(本編のみで)

<あとがき>
今回のテーマは「有意義で無意味」としたが、
これは2つの事柄へのアンチテーゼである。
1つ目には「AI」。
2つ目には「リレーエッセイ」に向けてである。
byイトーダーキさん

とのことだったので、AIだったらゴミだと判断してしまうであろう「ちぢれ毛」に対して、人間は無意味だとわかりながらも意味を見出し、そして有意義な時間を過ごせるんだよということを表現しようと試みました。

そして、いいことを書くのは禁止にして、リレーエッセイを壊してみたいとイトーダーキさんが仰っていたので、そのお手伝いが少しでもできればと、僭越ながらこのようなちぢれ毛話を投稿させていただきました。

きっと気色悪さを感じられた方もいるかとは思うのですが、「有意義で無意味」を感じていただけた方がもしいらっしゃいましたら、これ幸いです。

お次は第3走者のよよさんです!

私と同じ、30代で2人のお子さんのお父さんであるよよさんの記事を楽しみにしています!

第0走者イトーダーキさんの記事。

第1走者ギア3さんの記事。

ではまたー。

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