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好きな子がいるのなら家を探しにいこうぜ【勝手にリレーエッセイ2023春 #0】

〈まえがき〉
さぁ、この記事から勝手にリレーエッセイ2023春がスタートだ。通算3回目のスタートである。ご参加くださった方々一人一人にお礼申し上げたい。

今回のテーマは「有意義で無意味」であり、裏ルールに「いいことを書くのはNG」「お互いに批評はしない」を設けている。

タイトルから察せられる通り、このスタート記事ではいいことを言うつもりは1ミリもない。ただの個人的な記憶を呼び起こす内容にした。これを読み終わったみなさんの頭に、クエスチョンマークが浮かんだのなら、このスタートは成功だ。
ではいってみよう!

本編


高校時代の私は、
なぜかみんなの悩みを聞くことが多かった。

理由はわからないけれど、私には誰かの秘密の情報が集まってきた。

「これ、まだ誰にも言ってないんだけど」「お前だから話すんだけど」とかそんなこと。


私は時によき相談役になったり、許可を得てその秘密をみんなに笑いながら拡散するという、いま思えば不思議な役回りだったように思える。

「お前にはなぜだか情報が集まるよな」

そう言ってきたのは、高校の友だちのT君だが、
社会に出たいまも、そんな役回りになることが多い。




私が15歳、高校1年生のとき。

「好きな女の子がいるんだ」と言ってきた部活の男友達がいた。部活も同じでクラスも同じ友だちだった。


「え、だれなの?」と聞くと、彼はその子の名前を教えてくれた。仮にその恋のお相手をピーちゃんとしよう。

私はピーちゃんがどこの中学の出身なのかも知っていたし、恋人がいないことも知っていた。


だから、なんでかわからんけど、彼に言った。


「じゃあさ、放課後、
 ピーちゃんの家を探しに行こうぜ」


いまだったらありえない。コンプラ問題だ。

なんで家を探しに行くんだ。まず見つかるわけないだろ。札幌だぞ。どんだけ広いと思ってるんだ。

彼は言う。


「それ、いいな」


なぜだ。なぜそれがいいんだ。思いとどまれ。

てなわけで、部活の練習がオフの日、彼と2人でピーちゃんの家を探しに行くことにした。高校1年の初夏、よく晴れた日の15時台だった。



よく思い出せないけど、自転車が1台だけしかなくて、彼と2人乗りすることにした。自転車の2人乗りのことを、我々は「ニケツ」と呼んでいて、彼がチャリを漕ぎ、私が後ろ。


ピーちゃんがどこの中学校出身なのかは分かっていたから、住んでいるであろう地区も推測できた。高校からは自転車で40分くらいの距離の地区。白いYシャツを着たニケツの我々は、そこへ急いだ。




ピーちゃんの家を探そう、と急いで学校を出たものの、手がかりがまったくない。

……というわけでもなく、
実はひとつだけ手がかりがあった。


クラスメイトの男の子が「ピーちゃんと一緒に帰ったことがある」と言うのだ。

ピーちゃんと彼が一緒に帰った道すがら「お化け屋敷みたいな家を見た」と言っていたのである。それも私だけが知っている情報であった。


まずは、該当の地区に行って、お化け屋敷のような家を探そう。その近くにピーちゃんハウスがあるに違いない。


そんなことをニケツの後ろから指示しながらチャリを進める。どんな経緯で恋をしたのか、ピーちゃんのどこが好きなのかをチャリの後ろから聞きながら。


北海道の夏はそれほど暑くなく、私たちはスクールバックを肩にかけ、少し汗をかきながらチャリを進める。

目の前には絵に描いたような青空が広がって、気分もいい。


約30分。チャリを進めた。


私たち2人はやがて話すこともなくなって、無言の時間が訪れる。静かにチャリが進む。ピーちゃんハウスがあるであろう地区まではまだ少し距離がある。無言だ。






すると彼が言った。


「なんかさ、無言の状況が続いても気まずくない俺らって、なかなかにいい関係だよな」


そうだね、と答えて、私も言った。

「いつか今日を思い出す日が来るかもね」

いや、待て待て。


なにを美しい感じにしようとしているのだ。

こんなのストーカーだぞ。

ダメだろ。絶対ダメだろ。




でもなぁ……私にとってのあの時間って、
とても有意義だったんだよなぁ。


結局、ピーちゃんの家は、



見つからなかった。



好きな女の子の家を探しに行く、
という経験が、高校時代にあと2回ある。


……

..


……あれ? 今回のリレーエッセイのテーマって、なんだっけ?


<1,473文字>


【勝手にリレーエッセイ2023春"無意味"】

おつぎは…

2023年4月10日(月)!

『なとふむら』さん、
『三毛田』さん、
『ギア3』さん、
『AI夏目漱石』さんにお任せします。

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春ですね。新年度ですね。疲れてませんか。さて、クエスチョンマークは浮かびましたか? 勝手にリレーエッセイ2023春"無意味"はこの記事からスタートです。このエッセイを踏まえ、それぞれの「有意義で無意味」論をリレー、そして展開してください。形式はなんでもOK! もう知らん! どうなるか楽しみだぜ!


<あとがき>
このエッセイに登場する彼は、過去の記事でもたくさん登場する例の粋な彼です。めちゃくちゃ有意義な時間でした。ピーちゃんには大人になってからこの話をして、ちゃんと笑ってもらいました。この記事はいわゆる青春時代の思い出を振り返る内容ですが、縛られる必要はありません。それでは次の4人にバトンをお渡ししましょう。好きなことを書いちゃって!

【フォーマット参考】
「2022秋」の2番目の記事(勇敢なヘラジカさん)


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