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長引くリモート環境で、SNSを禁止している大手企業が不利になりつつある

 「従業員のSNS利用を禁じます」。この時代においても、こういう企業は多い。ちょっと信じられないくらい、本当にまだまだ多いのだ。しかし企業側の言い分としてはこうだ。「SNSを解禁したくても、リスクが大きすぎる」。どの会社に聞いても、だいたい同じような答えが返ってくる。当面は、SNS解禁に踏み切る予定もない会社は、相変わらずとても多い。


SNSを解禁することのデメリットが大きい?

 多くの会社はこう言う。従業員の不用意な投稿によってブランドが毀損されるかもしれないし、情報漏洩のリスクも怖い。企業を守る立場からは、そう考えてしまうのであろう。特に上場企業であれば、コンプライアンスという重圧を考えると、どうしても無難な道を選択してしまうのも理解できなくはない。

 しかしこの急速に普及するリモート環境下においては、それ以前の時代に比べ、個々の従業員がSNSアカウントを持っていないことは、SNS利用が自由な会社に比べ、著しく不利な環境をもたらす。

 ましてやスタートアップの中には、個々のメンバーによるSNS運用を積極的に推奨する会社も増えつつある。その差は開く一方だ。ちなみに、SNSを禁止されてる会社の従業員でも匿名でこっそり運用してる人は多いだろうが、「それが企業の利益になるかどうか」との今回の観点からすると、あまり意味をなさない(後述するが、むしろ不利益になってることも多い)。


リモート下における人材採用で、存在感が出せない

 「採用企業は学生のSNSも見ている」ことは、学生にもよく知られている。しかし従業員にはSNS使用を禁止する企業に関しては、学生側からは、会社の中にいる個々の従業員の思い知ることはできない。この状態は、ある種の矛盾と言えるのではないのだろうか。

 人の情報は見たいけど、自分のところの情報はできるだけ隠したい。編集してお化粧した、キラキラのオフィシャル一方通行情報だけ見せたい。こういうアンフェアな態度は普段から問題だと思っているが、リモート環境下においてはさらに大きな問題となる

 いま、リアルで企業と学生が接触することができない。OBやリクルーターとの接触も含め、「対面での本音トーク」という技が使えないのだ。その代わりにビデオ通話での説明会や面接が進められているが、リアルで会う時に比べ、得られる情報量はどうしても圧倒的に少なくなる

 だから学生はいまできる最善の努力として、ネットを使って企業の情報を少しでも多く知ろうとする。そしてそのとき、気づくはずだ。「SNSで社員個人の顔が見え、社会に対してオープンな会社」と、「社員の存在が見えず、中の人の声が全く聞こえてこない会社」の2種類が存在することを。

 しかも、たとえ会社がSNSの利用を禁じたとしても、会社に不満がある従業員はSNSに匿名で赤裸々な話を書き込んだりする。また、企業情報専門の匿名クチコミサイトもある。そうやって社員のネット利用を縛れば縛るほど、会社に対する不満だけが、一番悪い形で世に流れていく

 それに比べ、メンバーそれぞれが自分の考えをしっかりとSNS上で発信し、活発な議論もしている会社の方が、はるかに顔も見えるし安心感もある。SNS上では、大企業よりも、スタートアップの方がはるかに存在感があるのだ。


マーケティングやセールスでも不利な状況へ

 現在、企業による営業の方法が様変わりしている。展示会ができない、プロモーションイベントも打てない。それに、対面での訪問営業もかなり控えられている。営業活動の多くが、オンラインにその主戦場を移しているのだ。

 一方、ウェビナー(Web上でのセミナー)はとても活況だ。毎日のように、あちこちで開催されるようになった。自分も知り合いの開催するウェビナーには積極的に参加するし、登壇者(ウェビナーに「登壇」というのが正しい表現かどうかわからないけれど)としてもたくさんお声がかかるようになった。ありがたいことだ。向こう半月だけでも、3本のイベントに登壇する。リアルイベントの時よりもペースが早い

 

 大事なのは、ウェビナーの場合、SNSでの告知が一番確実で、かつ多く集客できること。先日出席したウェビナーは、その準備期間が2週間以内という非常に短いものだったにも関わらず、あっとういうまに数百名の参加者を集め、大盛況なイベントとして実施された。

 しかも、準備や運営にかかったコストは「ほぼ0円」という。通常なら数百名規模のイベントをやろうと思えば、数ヶ月前、長ければ半年前以上も前から会場を押さえ、多額の会場費を支払う。設営や諸々の準備、運営スタッフの稼働も大変だ。

 また、集客にもコストやリソースがかかる。自宅から気軽に参加できるウェビナーよりも、「往復の交通費と移動時間をかけ、わざわざ会場に出向く」労力を払ってもらう参加者を集めることは、本当にいつも大変だ。あまりにイベントの集まりが悪く、毎回胃を痛めてる担当者はとても多い。


 リアルイベントにおいてもSNSは集客に重要な役割を果たすようになってきたが、リモートによるウェビナーの世界では、その重要度が一気に増した。「SNS上でつながっている、知っている人」からのお誘いであれば、信頼した上ですぐにそのイベントに参加することができるのだ。だから、SNS上でよく見る会社、そして個人はものすごく有利な立場にある。上記のウェビナーの成功例も、普段からツイッターで活発に活動している人の主催だった。


 リモートでの営業も、SNSを積極的に活用する事例が増えている。全くつながりがないところへメールしたりDMしたりしても単にスパム扱いされるだけだが、あらかじめSNSで繋がっていると、お互いにとてもスムーズに商談に入ることができる。大企業で個人SNSが禁止されたままだと、この手法は全く使えないということになる。


 リモートの世界では、うまくSNSを活用できていると、「資本力」では全く太刀打ちできなかった大企業に対し、スタートアップは「つながりの信用力」によって対抗することができる。

 大企業としても、いつまでもSNSに対してネガティブな姿勢を続けていると、いつの間にか新興スタートアップに足元をすくわれることになるかもしれない。そしてその日は、それほど遠くないかもしれないのだ。


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