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次世代リーダー育成塾 第3講 リーダーの持つべき土台(正しい考え方とは)

おはようございます。本日は第3講をお届けします。今回はリーダーの持つべき土台とは何かについてお話し致します。前回も示したリーダー育成モデルを改めて。

リーダーモデル2.1

上記モデルの通り、リーダーの土台は人間力です。分解すると「正しい考え方(精神・信念の拠りどころ)」「軸としての観性」そして「情熱」です。志の磨き方とも言えます。順番にお伝えして参ります。

1.正しい考え方(精神・信念)とは何か?

正しい考え方とは何か?一言で言えば人類が有史以来(文字として記録が残って以来)、具体的には2000年以上、或いは数百年にわたって正しいとされてきたことです。古くは紀元前に編まれ12世紀に南宋の朱熹(朱子学の祖)によって整理された四書(大学・中庸・論語・孟子)、五経(易経・書経・詩経・礼記・春秋)、西洋であればアリストテレスの哲学書、倫理書など、これらは2000年以上にわたって多くの人類にとって「正しい」とされてきた古典です。現代に世に成果を生んでいる経営者、リーダーの多くも勿論この古典から多くを学び人格形成に役立てています。古典とはいつの時代、或いはいつ読んでも気づきが得られる不変にして普遍の本質を享受できる記録であり思索のことです。

古典には2000年以上前ではなくても20世紀以降のものも含まれます。ビジネス社会で正しい考え方を得るためには100年経っていないにしても現代を生きる私たちに原理原則として学びの対象となるものにピーター.F.ドラッカーの著作があり、日本で言えば松下幸之助さんや稲盛和夫さんの著作や考え方も古典と呼べるでしょう。もう少し古から日本の商いの基本理念や精神、リーダーの精神、考え方を学びたい場合には二宮尊徳、渋沢栄一の『論語と算盤』などがあります。いまのように資本主義社会が行き詰っている、新しい哲学が求められているなど未来社会を志向する人には約250年ほどさかのぼりますが経済学の父と呼ばれるアダムスミスの『道徳感情論』や日本の近代化(明治維新~日露戦争)を推し進めたリーダーの共通した精神、考え方の基とされる佐藤一斎『言志四録』、吉田松陰先生の著述も古典としてお奨めです。私の仕事の基本信条でもある「世の為人の為に尽くす」もこうした古典からの学びを実践する中で確信に至ったといえます。「利他の心」という仏教の教えにも通ずる価値観でもあります。次世代リーダーとの講義や対話の中ではこれに最新の心理学の知見(エビデンス)を活用しお伝えすることも多いです。まさに古典は活きた学問です。

その他にも挙げたらきりがないので世に「古典」と呼ばれているものの内、これは!と思ったものを先ずはしっかり自分と対話しながら読み進めるとよいのではないでしょうか。現代を生きる私たちの強みは、それらが簡単に手に入るということです。まさに先人、碩学のお陰です。先ずそのことに感謝したいものです。

現実的な話として、生きていると様々な困難、苦悶に晒されます。例えば事業に責任を持つリーダーであれば、描いたビジョンに向かおうと歩みを進める中で、仲間との様々な葛藤や、現在のコロナ禍のように予期せぬ外部環境の変化によって翻弄されたり、とかく世知辛い世の中です。こうした苦難にぶち当たった時にでも立ち返る場所がこの土台たる「正しい考え方」なのです。私の例では思うように人が動いてくれないときは四書の『孟子』にある「至誠にして動かざる者は未だこれ有らざるなり」(真心を尽くして動かされないものはいない)という言葉や『孟子』の吉田松陰先生の解釈本『講孟余話』にある「余寧ろ人を信じるに失するとも、誓って人を疑うに失することなからんことを欲す。」(私は、人を信じたことによって失敗したとしても、決して、人を疑って失敗するようなことがないようにしたい。)という言葉を拠り所にしています。若い時は疑心暗鬼になりよく人を疑ってかかっていました。本当に恥ずかしい思いです。そうした人間を観る眼差しではチームとしては成果を上げられません。何しろ仲間の強みを失ってしまいます。いまではメンバーの強みを活かすことはマネジメントでは常識ですが、全て古典に書いてあるのです。いかにこうした「正しいとされてきた考え方」を素直に実践するか、「知行合一」が学びの基本であるのも実践した人間には深い認識を持たせてくれます。

世の為人の為、と上記モデルに明記しています。この価値観にも似た考え方が土台にあることが非常に重要だと考えています。こうした土台を持ったリーダーを一人でも多く世に育まれて欲しいと願っています。この考え方は自己犠牲しろという考え方ではありません。最近の本で言えばアダム・グラント『GIVE & TAKE 「与える人」ほど成功する時代』などにも示されているように、結果として成果を生む、人を幸せにする考え方なのです。古くは仏教の言葉で「利他即自利」という教えもあります。相手の為に、世の為人の為に尽くしていればそのうち「自利」を得るという解釈が多いですが、もう少し深く読むとこの教えは自利とは利他そのものでなければならない、ということを説いているようです。深いですね。先ほどの「至誠」にも通じます。自利とは利他を言う、このことを価値観、信念、自分の基本精神にまで自分に内在させるにはこの思いで実践して人に喜んで頂く体験を積み重ねるしかありません。素直に実践しましょう。

私は「精神」という言葉をよく使います。意識して使っています。なぜならば、今の我が国の国難はこの「精神の脆弱化」にあるのではと危惧しているからです。こういうと恐らく「精神論を語る古い人間」と思われがちです。確かにやや古風な人間かもしれません…ナウいものも好きですが。ナウい、も良く使ってしまいますがこれが古風なのは分かっています(笑)でも新入社員にも案外通じてます(笑)

話しを戻しましょう。「精神」とは何のことを言っているのか。改めて辞書に書いてある意味を観てみましょう。

三省堂 大辞林 第三版
【精神】
①人間の心。心のはたらき。 「健全なる-は健全なる身体に宿る」
②物事に対する心の持ち方。気構え。気力。 「そういう-では成功はおぼつかない」 など
③物事の最も根本的な意義。真の目的。理念。 「憲法の-にもとる」 「教育基本法の-にたちかえる」
小学館 デジタル大辞泉
せい‐しん【精神】 の解説
1 人間のこころ。また、その知的な働き。「健全な精神」
2 物質に対し、人間を含む生命一般の原理とみなされた霊魂。たましい。
3 物事をなしとげようとする心の働き。気力。「精神を鍛える」「精神統一」
4 物事の基本的な意義・理念。「憲法の精神」
5 ある歴史的過程や共同体などを特徴づける意識形態。「時代精神」「民族精神」

つまり「精神」とはその人物と民族の根本を為す目に見えない重要な要素であるのです。会社であれば理念。個人であれば信条。モチベーションの源泉と言っても良いでしょう。そういう意味で「精神」を語ります。そしてこの精神とは磨き続けないと衰えるもの、無くしてしまうものでもあるのです。

少々長くなってしまいました。「2、軸を磨く」「3,情熱~志を高める~」についてはまた改めてアップします。今回はここまで。お読みいただき感謝いたします!

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