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酒井透

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(さかい・とおる) 東京都生まれ。写真家・近未来探険家。 小学校高学年の頃より趣味として始めた鉄道写真をきっかけとして、カメラと写真の世界にのめり込む。大学卒業後は、ザイールやパ…
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【写真家・近未来探険家 酒井透のニッポン秘境探訪】沖縄県石垣島の『川平集落の風葬墓』

 セルリアンブルーに輝く海。咲き乱れるホウオウボクやメヒルギの花。日頃から都会で暮らしている人たちにとって石垣島は憧れになっている土地のひとつだ。  せわしない日常生活から離れ、この島に渡って来た観光客は、観光スポットを回り郷土料理に舌鼓を打つ。しかし、風葬墓を見に行くようなことはない。  石垣島の川平集落にある風葬墓には、7柱の頭骨が安置されている。今から15年くらい前、福岡県に住んでいる男性がこの風葬墓で奇妙な体験をしている。 「石垣島には、珍しい蝶の採集に行きまし

【写真家・近未来探険家 酒井透のニッポン秘境探訪】青森県つがる市・弘法寺の『花嫁人形』

亡くなった人と冥土で結婚  青森県の津軽地方にガラスケースに納められた『花嫁人形』が祀られている寺がある。  『花嫁人形』というのは、結婚することができないまま亡くなった人たちを、あの世で結婚させてあげることを目的として、親や親戚が寺や地蔵尊に奉納する人形のことを指す。『ムカサリ絵馬』が亡くなった人や結婚する相手を描いたものを奉納するのに対して、『花嫁人形』は、人形自体を奉納する。『ムカサリ絵馬』同様に、このような形で結婚することを『死霊結婚』や『冥界結婚』と言う。  

【写真家・近未来探険家 酒井透のニッポン秘境探訪】東村山市運動公園の『解体されたD51』

 昭和50年まで日本全国で走っていたD51型蒸気機関車が解体されてしまった。D51は、デゴイチという愛称で呼ばれ、蒸気機関車の中で最もポピュラーな形式だ。この愛称は、鉄道ファンならずとも良く知られている。  解体されてしまったのは、東村山市恩多町の運動公園に保存されていた「D51684」。昭和17年3月に製造されて、関西や東北、北海道で走ってきた。  現役を引退してからは、こちらの公園に保存されていたが、40年以上の年月が流れ、老朽化したことによって解体・撤去されることに

【写真家・近未来探険家 酒井透のニッポン秘境探訪】愛知県西尾市鳥羽町で行われる『鳥羽の火祭り』

 自らの命を顧みることもなく、燃え盛る巨大な松明に挑んでいく男たちがいる。彼らの使命はただひとつ。神殿に祀るための「神木」と「十二縄」を取り出すことだ。  毎年、愛知県西尾市鳥羽町にある鳥羽神明社(とばしんめいしゃ)で行われている「鳥羽の火祭り」は、見るものの想像をはるかに超えている。男たちは、大松明「すずみ」の中に納められている「神木」と「十二縄」を引き抜くために梯子を駆け上り、激しく燃えさかっている「すずみ」を激しく揺さぶる。  「すずみ」の高さは、5メートル。重さは

【写真家・近未来探険家 酒井透のニッポン秘境探訪】九州某所・山中の洞穴にある謎の祠『シシ権現』

 ヒンヤリとした冷気が肌を刺す自然洞穴の中には、おびただしい数の頭蓋骨が祀られていた。  そこには、イノシシやシカのものと思われる頭蓋骨が整然と並べられており、牙や角がついているものもある。その数、10000~20000個。洞窟の奥には、傾きかけている小さな祠がある。  九州某所の山中にある「シシ権現」は、知る人ぞ知る神聖な場所だ。ここに祀られている頭蓋骨は、すべて山猟師によって奉納されたものである。山猟師は、毎年、狩猟が始まると安全狩猟と豊猟を祈願するために、イノシシや

【写真家・近未来探険家 酒井透のニッポン秘境探訪】東京都杉並区の『商船三井・上井草社宅』

 廃墟マニアや建築構造物マニア、ゴスロリファッションマニア、写真愛好家などから親しまれていた「商船三井・上井草社宅」(東京都杉並区)が取り壊されていたことが分かった。  この建築物は、 1970年代に建てられたものと見られ、2018年まで住居として使われていた。閉鎖されてからは、敷地内に入ることはできなかったが、独特の外観がフォトジェニックなことから注目を浴びていた。  何と言ってもその特徴は、住宅公団などで良く採用さていた階段室型の住棟になっていることや階段室部分にある

【写真家・近未来探険家 酒井透のニッポン秘境探訪】名古屋市中村区の骨仏『中村観音』

 愛知県名古屋市中村区にある中村観音(瑞龍山白王寺)に、コンクリートや漆喰に火葬場から出た廃骨を混ぜて練造された骨仏が奉安されている。  この骨仏を発願したのは、白王寺の初代住職。寺の近くにあった米野火葬場から出た廃骨を供養することと、地域の発展守護を願って、昭和8年に高さ8メートルあまりの十一面観世音菩薩像を練造した。  名古屋市中村区は、日本3大遊郭のひとつである中村遊郭のあった場所だ。そのようなことから、骨仏が練造されると中村遊郭で働いていた遊女の遺骨がその『胎内』

【写真家・近未来探険家 酒井透のニッポン秘境探訪】神奈川県大和市の廃線『米軍厚木基地専用線』

 相模鉄道大塚駅構内(神奈川県大和市)から専用線で在日米軍厚木基地に航空燃料輸送を行なっていた米軍厚木基地専用線(廃線)のレールの撤去作業が進み、廃線マニアや懐古マニアなどから悲鳴が上がっている。  米軍厚木基地専用線は、神奈川県大和市にあることも手伝って「毎日行かれる廃線跡」として人気があった。地元の鉄道マニアも時間があると通って写真を撮っていたところだ。 「米軍厚木基地専用線は、自分が物心ついたときには廃線になっていました。家からさほど遠くないところにあるので、気が向

【写真家・近未来探険家 酒井透のニッポン秘境探訪】石川県・金沢市『大円寺の骨仏』

 大円寺に伝わる寺伝によると、この骨仏は、往事の住職であり画僧でもある心岩上人(※)が発案したもので、宿場町の入口にあった地蔵尊の脇に集められていた旅人の遺骨が使われているという。  江戸時代末期、宿場町では、病気や怪我などで亡くなった旅人の遺体を荼毘に伏した後、その遺骨を地蔵尊の脇に集めていた。江戸参りをすることが多かった心岩上人は、誰からも拝まれることのない遺骨を各宿場町で拾い上げ、粉末状にしてから膠(ニカワ)に混ぜて樫の木で造った木像に塗り込んだ。このときに膠に混ぜた

【写真家・近未来探険家 酒井透のニッポン秘境探訪】姿を消した調布駅前公園の『タコのすべり台』

 日本全国の公園で見ることのできる「タコのすべり台」。その第1号だったとされる調布駅前公園(通称・タコ公園/東京都調布市)のすべり台が、2016年9月30日をもってその姿を消してしまった。当日、同公園では、午前9時半から「タコのお別れ会」が行われた。   昭和46年(1971年)に設置され、40年以上の長きに渡って多くの子どもたちから愛されてきた「タコのすべり台」。平成元年(1989年)に赤色からピンク色に塗り替えられ、平成21年(2009年)には、再び赤色に塗り替えられた

【写真家・近未来探険家 酒井透のニッポン秘境探訪】京都府八幡市の元遊廓旅館『橋本の香』

 令和の時代に入り、昭和の頃に建てられた様々な建築物が次々と姿を消している。遊郭跡も例外ではない。かつての妓楼建築も年月を重ねるごとに取り壊しが進んでいる。  そんな中、妓楼建築を残すために尽力している人がいる。京都府八幡市在住の政倉莉佳さん。驚くなかれ、政倉さんは、橋本遊郭跡に残されていた物件を購入して旅館『橋本の香』を開業したのだ。そこでは、按摩店『漢方エステ 古民家サロン』も営んでいる。  「ここを買ったのは、不動屋さんから勧められたからなんです。元・オーナーは、旦

【写真家・近未来探険家 酒井透のニッポン秘境探訪】沖縄県那覇市の子供を抱く女性の霊がでる『波の上ビーチ』

 沖縄県那覇市内に地元で暮らしているお年寄りから敬遠されている海水浴場がある。ここは那覇市内唯一の海水浴場であることから、シーズンになると観光客や地元の人で賑わっている。しかし、ここはいわくのあるスポットとされている。『波の上ビーチ』にまつわる話を那覇市に住む男性に聞いた。 「あれは今から50年くらい前のことになります。ある会社の人たちが、みんなで海水浴に行きました。何人かで泳いでいると、小さな女の子を抱いていたお母さんが流されてしまったのです。  お母さんは、子どもに水

【写真家・近未来探険家 酒井透のニッポン秘境探訪】コンゴのルンバ王『パパ・ウェンバ』

 2016年4月24日、西アフリカ コートジボワールの最大都市であるアビジャンで行われていた音楽祭の公演中に倒れ、その後、病院で亡くなった歌手のパパ・ウェンバ(享年66歳。死因は、心臓発作)が死去してから8年という時が流れた。  今、彼の死を悼む声が世界中からあがっている。同年に発売された追悼盤は、8年経った今も売れ続けている。  パパ・ウェンバは、1970年代のザイール(現在のコンゴ民主共和国)の音楽シーンに革命を起こしたミュージシャンだ。ジャン・ポール・ゴルチェやマリ

【写真家・近未来探険家 酒井透のニッポン秘境探訪】鹿児島県沖永良部島の交通事故が多発する『アーニマガヤのトゥール墓』

 鹿児島県の鹿児島新港からフェリーに乗って南下すること約17時間半。奄美群島の南西部に位置する沖永良部島の中央部に奇妙なスポットがある。  地元の人たちによると、アーニマガヤのトゥール墓付近では、雨が降ると交通事故が多発するという。和泊という集落で暮らしている男性は語る。 「実を言いますと、あそこは島で最も注意しなければいけないところなのです。道路のすぐ下にはトゥール墓(横堀り式墓)があります。その昔、このトゥール墓には亡くなった人の遺骨が納められていました。どういうわけ