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【写真家・近未来探険家 酒井透のニッポン秘境探訪】鹿児島県沖永良部島の交通事故が多発する『アーニマガヤのトゥール墓』

 鹿児島県の鹿児島新港からフェリーに乗って南下すること約17時間半。奄美群島の南西部に位置する沖永良部島の中央部に奇妙なスポットがある。

 地元の人たちによると、アーニマガヤのトゥール墓付近では、雨が降ると交通事故が多発するという。和泊という集落で暮らしている男性は語る。

トゥール墓への入り口

「実を言いますと、あそこは島で最も注意しなければいけないところなのです。道路のすぐ下にはトゥール墓(横堀り式墓)があります。その昔、このトゥール墓には亡くなった人の遺骨が納められていました。どういうわけか分かりませんが、雨が降ると成仏されなかった霊が助けを求めて道路に出て来るようなのです。あまり言いたくないことなのですが、車を運転しているときに急ハンドルを切って大けがをした人は何人もいます…」

そこには祠のようなものがあった

 ある日、男性が話していたトゥール墓を訪ねると、昼間だというのに妖気が漂っていた。その昔、この中には、数多の遺骨が納められていたという。

 今回、その中に入ることはできなかったが、トゥール墓には、人骨のかけらが残されていた。ある女性は、ちょっと怯えた表情をしながら話してくれた。

人骨のような物も

「もう10年以上前のことになります。あそこで車をぶつけてしまいました。事故が多発していることは知っていたので、ゆっくり走っていました。すると木陰から人影のようなものが飛び出して来たんです。慌ててブレーキをかけましたが、タイヤが滑って草むらの中に突っ込んでしまいました。私は、この島に来て20年くらいになるのですが、こんな怖い思いをしたのは初めてです。あの事故以来、車の中にはお守りを入れています。近くを通るときは、もちろん最徐行しています」

付近の道はカーブになっており注意!

 その昔、このトゥール墓には、遠く離れた場所から遺骨を納めに来ていた人がいたという。それだけではなく、行く場所のない遺骨が放り投げられることもあったという。

 霊の中には、49日を過ぎても成仏されていないものがあると言われている。遺骨だけ投げ入れて、読経もしなければ、そうなってしまうことは、誰にでも想像できる。

 沖永良部島は、鹿児島市から南へ552km、周囲55.8km、面積93.8km2の隆起サンゴ礁の島だ。和泊町と知名町があり、この2つの町を合わせて1万4千人あまりが暮している。

 年間平均気温は、22度で温暖な気候に恵まれていることから、四季を通じて熱帯、亜熱帯の花々が咲く。東洋一の鍾乳洞である昇竜洞をはじめ200~300の大鍾乳洞群があることから、「花と鍾乳洞の島」としても知られている。

 地元の人たちは、素朴で人情も厚い。澄みきった青い海と空、まばゆい太陽は、旅行者の心を癒してくれる。隆起サンゴの小さな島には、美しいビーチが多い。沖縄本土に比べると、まだまだ知名度の低い沖永良部島だが、観光旅行などで行ったときは、安全運転を心がけたい。万一、レンタカーを何かにぶつけてしまったらショックも大きい。

妖気のような独特の空気が広がる



写真・文◎酒井透(サカイトオル)
 東京都生まれ。写真家・近未来探険家。
 小学校高学年の頃より趣味として始めた鉄道写真をきっかけとして、カメラと写真の世界にのめり込む。大学卒業後は、ザイール(現:コンゴ民主共和国)やパリなどに滞在し、ザイールのポピュラー音楽やサプール(Sapeur)を精力的に取材。帰国後は、写真週刊誌「FOCUS」(新潮社)の専属カメラマンとして5年間活動。1989年に東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件(警察庁広域重要指定第117号事件)の犯人である宮崎勤をスクープ写する。
 90年代からは、アフロビートの創始者でありアクティビストでもあったナイジェリアのミュージシャン フェラ・クティ(故人)やエッジの効いた人物、ラブドール、廃墟、奇祭、国内外のB級(珍)スポットなど、他の写真家が取り上げないものをテーマとして追い続けている。現在、プログラミング言語のPythonなどを学習中。今後、AI方面にシフトしていくものと考えられる。
 著書に「中国B級スポットおもしろ大全」(新潮社)「未来世紀軍艦島」(ミリオン出版)、「軍艦島に行く―日本最後の絶景」(笠倉出版社 )などがある。

https://twitter.com/toru_sakai

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