読書メモ:『ほんとうの「哲学」の話をしよう 哲学者と広告マンの対話』
『いま世界の哲学者が考えていること』という、数年前に軽く話題になった一般向け哲学解説書を書いた大学教授と、博報堂の偉い人の対談本。
タイトルはやや壮大だが、中身は哲学と広告業(ひいては一般的経済活動)を架橋するための試論的対談。
最新の広告技術やAIの利活用シーン等にも触れながら、具体的な経済活動やそのトレンドと哲学/社会学を照応させていくことにチャレンジしているが、残念ながら全体的に歯切れは悪く、失敗に終わっている印象。
全編において哲学側の歴史語り先行ながら、ビジネスシーンでの具体例をその系譜の中にうまく還元できず、今後の広告を照らす新たなパースペクティブに繋がるような概念構築も特にできていない。
ただ、実業の先端をちゃんと踏まえた類書や、似た試みの研究も物凄く少ない現状だと思うので、こういう言説がもっと増えてほしいと思った。
また、特に近代~ポストモダン以降の主要学説を大まかに概観できたし、新しめのトピックに対して良いリファレンスにもなっていた。ネグリ『〈帝国〉』、ラトゥールのANT、フロリディの情報圏(インフォスフィア)、ドブレ『メディオロジー宣言』等を、現代に連なるグローバル情報革命の文脈下でマッピングできたのは良かった。
■これよりもオススメな本
哲学の醍醐味が詰まった『まんが 哲学入門 -生きるって何だろう?』
骨太すぎて噛み切れない超重厚入門書~『メディア文化論』
頂いたサポートは、今後紹介する本の購入代金と、記事作成のやる気のガソリンとして使わせていただきます。