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【Design 3.0 の道標】「天才を殺す凡人」を読んで。

今日は、Design3.0の必要性を認識したきっかけとなる北野唯我著「天才を殺す凡人 職場の人間関係に悩む、すべての人へ」(日本経済新聞出版)を紹介したいと思います。

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Design3.0については
こちら
集団的創造性については
こちら
で紹介しています。
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「天才を殺す凡人」の概略

「天才を殺す凡人」は4年前の2019年に出版された本です。人間の才能を「創造性」、「再現性」、「共感性」の3つに分け、それぞれを象徴して「天才」「秀才」「凡人」と表現し、3者の人間模様をストーリー仕立てで描くことで現代企業が抱える”病”を浮き彫りにしています。多少の強引さはありますが、敢えてたった3つのタイプに分けることで誰でも非常に理解しやすい内容となっています。

創業時は、創業者というのは得てして創造的だからこそ事業を作り出すことができます。それに再現性のある仕組みを構築するのが秀才の役割で、凡人はその仕組みを動かして金にする、という構造です。

創業時の構造(「天才を殺す凡人」より作成)

しかし、創業者が引退するとそのままエレベーターで秀才がトップに立ち、中間層は凡人が占め、新しく入ってくる天才は下層に埋もれた状態となります。

創業者引退後の構造(「天才を殺す凡人」より作成)

これの何が問題かというと、秀才は再現性という才能の象徴であるがゆえに、価値観も再現性を重要視する点です。それ故にどんなに創造的で素晴らしいアイデア(新しすぎて誰も試したことがない)をもっていても再現性(特にお金になること)を証明できないと受け入れてもらえず、中間層が凡人であるがゆえに天才のアイデアを理解できず見捨ててしまうので、組織が硬直化し衰退していくという構造欠陥を抱えることになります。

本書は、そういった状態に陥った現代組織において、天才、秀才、凡人がそれぞれどのように立ち振る舞っていくべきかの処方箋となっています。

あなたの会社の日々の仕事で、「いいアイデアだと思うのになぜか採用されない」、「新しい事業アイデアに短期間での黒字化を求められる」、「会議やワークショップの結論がどうしても凡庸なものにかんじられる」といったことを感じているようでしたら、ぜひ「天才を殺す凡人」を一読してみてはいかがでしょうか?


Design3.0の目標は天才を殺さない組織づくり

さて、ここからはDesign3.0の視点での解釈を説明していきたいと思います。

よくイノベーションを実現するためにはビジネス、テクノロジー、カスタマー・エクスペリエンスの3つの要素が重要と言われます。そして、それぞれの領域のスペシャリストたる天才とそれ以外の凡人(※説明を簡略化するために秀才は凡人に含めさせていただきます。)がいるとします。

BTC領域の天才と凡人

次の図は、これまでの組織のピラミッド構造を示す三角とは違い、ビジネス(B)、テクノロジー(T)、カスタマー・エクスペリエンス(C)の三軸で作ったレーダーチャートです。

BTCの3軸

稀に複数の領域において天才的な才能を発揮する方がいますが、一旦ここでは自身の得意領域以外は凡人ということにさせてください。つまり、ビジネスのスペシャリストはテクノロジーとカスタマー・エクスペリエンスについては凡人レベル、テクノロジーのスペシャリストはカスタマー・エクスペリエンスとビジネスについては凡人レベル、カスタマー・エクスペリエンスのスペシャリストはビジネスとテクノロジーについては凡人レベル、ということです。
また、もし仮にスペシャリストと呼べるほどの人材がいないとしても、今いるメンバーの中でそれぞれの領域の得意不得意があるはずなのでその序列のトップを天才と考えてください。

その時に各天才の能力値をレーダーチャートにプロットすると緑の線になるでしょう。

Bの天才、Tの天才、Cの天才

そして、これを組織能力という観点で重ね合わせます。

BTC3軸の組織能力

各領域において天才がその才能をいかんなく発揮し、それが形となってアウトプットされれば問題ありません。(下図の赤線)
しかし、組織の大半は各領域の凡人です。そのために出てくるアウトプットは青線となっていることも少なくないのではないでしょうか?

BTC3軸における集団的創造性

よくみんなの意見を取り入れすぎるとアイデアが丸くなるといいますが、それを少し解像度高く表現したイメージです。海外からはクリエイティブだと評価される日本人ですが、GAFAMのような企業が生まれていません。それにはさまざまな要因があると思いますが、各個人の創造性を組織的に結合できていないことに一つの要因があるのではないでしょうか?シリコンバレーでは常識のリーンスタートアップはトヨタの生産方式が源流にありますし、ブロックチェーンを発明した人物は日本人かもしれません。他にも日本に源流を持つ世界的な発明は少なくないですが、それらがビジネスとして成功しているとは限りません。

もちろん各個人の創造性を高めることも大事ですが、組織として創造性を統合すること(集団的創造性)はもっと大事です。3人よれば文殊の知恵になるはずですが、そうなっていない。私は、日本人は創造性を統合するのが実は苦手なのではないかと思います。その原因はまさに「天才を殺す凡人」で説明されていることだと思うのです。そして、問題があるのなら、そこにデザインが必要であり、組織の創造性問題こそがDesign3.0の対象とする領域なのです。つまり、天才を殺さない組織作りです。

そして、これからAIが各領域の天才として解探索を行う時代となるならば、それを結合する人間の創造性がより重要となるのではないでしょうか。

ではまた。

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