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植物をみわけるアプリをつかってみてかんじたこと


はじめに

 研究パートで植物を試料としてあつかう。植物を見わける作業が必要になり、このところ登場してひさしいアプリをためしている。たすけをかりて感じたこと。

きょうはそんな話。

研究パートで

 しごとがら植物を試料として生化学的な分析が多い。するといろいろな植物を観察して種やちがいを見わける必要性にせまられる。

以前だったらその分野にくわしい分類学者の方がごく近くにいたので、調べつくせなかったり、絞りこめなかったりしたときにアドバイスをいただいていた。論文を執筆する際に種の同定や記載が必要なときには、私ができるところまではやったうえでたずねて確認していただいた。

それだけにこの方が試料を前にして「これは…ですね。」とあっさり口にするときは、やっぱりこちらでもわりとすぐに見わけられるものだし、「それは花がさかないと見わけられないよ。」とおっしゃるときもあった。種の同定がむずかしいときは専門家でもやっぱりたいへんだと知れた。

DNAの情報を加味

 いまは多くの植物種のゲノム情報がだれでもその気になれば入手できる。そのリストにあるものならば比較もできるだろう。そのリストにあがっている種ならば、自然のものでも確認作業自体は委託業者に分析をお願いできる場合もある。

そこそこの機材がそろえばじぶんでも分析できる。上の形態学的手段とゲノムからの情報の両方をつかえるとより分析しやすい。ただしさまざま限界がある。DNA情報単独では成り立つものでない。

もちろんつねに分析操作中のコンタミネーションや、分析の再現性などにも注意する必要がある。そしてなにより実際の植物の分類学上の位置づけは時とともにうつろいで、分類はつねに更新されるものと認識しておかないとならない。

助っ人が…

 そしてさきほどのアプリ。国内外にいろいろある。あくまでも植物の外見から候補をあげていくものが多い。ごくごくおおまかな候補をあげる程度の作業をサポートしてもらう位置づけ。

なかにはある程度くわしい方とのやりとりができるものも。さまざまなサービスがあるようだ。ただしそこまでつかえるものかどうか、そして候補がいくつかあらわれたとしても限界がある。

進歩しつつあるようだが…

 日進月歩で改良がくわえられているようだが、植物はそのすがたやかたちはおなじ種でも千差万別。わたしたちヒトですら、おなじ顔かたちのヒトがほぼいないのとおなじ。こんなにちがうのかと思えるほど。植物を採集したものどうしを見くらべても幅がある。専門家の方々はそのちがいを明確にそして慎重に吟味なさる。

そしてあらかじめその学問上のルールにしたがってこのなかまかなとか、このエリアのあたりで採集したの?とか、分布がこのへんなら妥当だろうとか、網をかけていくような言いかたをなさる場面によく出会った。

たずさえた植物の一部を目のまえにされて「採集場所はこのあたり?」などと地図を片手にこちらとやりとりされた。さすがにくまなくフィールドワークをされている方はすごいなあと思ったことも。

大胆な?区分

 もうひとつアプリについて。スマホで撮影した植物を提示し「まあ、こんなに大胆なものまで候補にあげて…。」とこちらがとまどうことがある。「ははん、きっとこの葉の特徴を認識して拡大解釈したのかも。」と思いあたることも。

アプリはあくまでもサポート役にすぎない。おおまかな傾向やぶ厚い植物分類学の書物のこのあたりからそのあたりと区分けしてくれるぐらい。その分冊のこのあたりとおおまかにしぼりはしてくれそう。

わたしはそこから先の作業を担当。たとえば採集現場の時期ごとの形態の変化の観察などをしたり、花や果実、周辺の環境のようすなど対象の植物に関してさまざまな情報を蓄積したりしてから種の区別をこころみる。

そしてようやく時間をかけてきっとこれかこれだろうと知れることもある。こうしてしぼれたあとはゲノム情報をたずさえて専門の方にみてもらう。論文にする場合にはよほど慎重にやらないと。周囲やのちのヒトビトへの混乱を絶対にさけなければ。

おわりに

 もちろんゲノムの情報からの助けで分類を再検討したり、位置づけを整理しなおしたりのうごきもある。

たえずこうした情報をみずから更新してそなえておかないと、うっかり古いままだと混乱しかねない。報文など公の場に公表するときはこの点は怠れない基本だろう。

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