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数学を「わかる」にするには:てがかりとなる4つの手順


はじめに

 数学をわからないまま解決できずにいる生徒に対して教えるコツを。しごとをつづけるのに困らない範囲で。

「わかる」と「できる」は違いますが、ここでは「わかる」までに求められる要素にしぼってお伝えします。

高校時代に数学でどん底までいき、そこからなんとか「わかる」までたどりつきました。そして生業にして以降、「できる」への道のりの途上で気づいたことです。くわえてわからずに手の止まりがちな生徒をサポートするとき、なにが必要か実践から得たポイントでもあります。

①どこがわからないのかわかっていない

 いろいろな教科を教えているのですが、とくに数学がわからないよ、とわたしのもとへ訪れる児童(この場合は算数)・生徒(中高生)たち。それこそさまざまな理由やレベルでつまずいています。

そのつまづきの原因のうち数学にありがちな点にしぼると、ほんのいくつかの理由で停滞しているとわかってきました。算数はこちらが参考になるかも。

どこがわからないのか自分で把握できていない。とくにまだ言葉がつたない小学生にわからなくなった理由など説明しろという方が無理でしょう。そこへ「なんでこれがわからないの。」とか、ただただ「やりなおしてごらん。」と言われても先へ進めません。これは中学生、高校生でもほぼ同様のようです。

結局、わからないところを見つける作業をわたしといっしょに探していきます。そしてあっけなく「わかる」の段階まで到達。その先の「できる」への第1歩です。以下の以降で具体例をあげながら示していきます。

②演算のルールはこれだけか

 手がとまってしまう場合、その演算のルールと手順が頭のなかに網羅でき手が動くかに帰着しそうです。

つぎのような例。

分数どうしの加減算ではふつう通分しないと解けません。そして通分とはなにか、どんなときに使うか、そして通分の手順はと解決すべき段階においてそれぞれにポイントがあります。ひとつひとつクリアしていくほうが結局のところ早道です。

高校の数列の各項の和の計算などでとまどう生徒のなかにはこれがありがち。数列をおしえるはずが数式の通分から教えるはめに。

おなじくわり算の筆算は、超難関高校に通いつつ現役で東大をめざしている生徒でも横で見ていると、あれっとこちらが気づく。ようこそいままで修正せずにやってこれたと思います。おかしいなとふりかえるセンス・スタンスや、確固とした手がかりを複数手段でもつことはどのレベルや仕事でもだいじなのですが…。

わり算の筆算の手順は小学校中学年から6年生までにみっちりじゅもんのように習います。それをいつのまにかすっかり自己流でやってしまっています。割られる数と割る数の順序を逆にしたり、筆算上で商を立てる位置や小数点をつける位どりでとまどったり。

たとえば2.8÷0.014のような問題です。答えの商の200が、0.2や2になってしまいがち。割る数の小数点以下に何桁存在するかが位どりのポイントです。また、あまりのあるわり算ではあまりの小数点の位置をまちがいやすい。

割られる数と割る数の順序が逆になってしまう生徒には、「1÷2が2分の1になる。分数は’上割る下’を覚えておきなさい。迷ったときに思い出しなさい。」とつたえて実行させています。

また文章題では「問題文の’もとにする数(語)’は1とおける数で、割る数だよ。」などとまずは国語として教えつつ立式させています。文章が変わり読解力が求められる問題へとつなげていきます。

小学校のお手本にしたがいつつ、商を立てる位置と小数点に関しては、わたしのくふうでまちがいにくいさらなる確認法(ここはわたしが報酬としていただくところ)を身につけひとつひとつクリアしていきます。

③整然と作業できているか

 もうひとつはノートに整然と図表や計算過程が書かれているかです。リズムよく解ける人のノートは見やすい。きれいな字である必要はないですが、見やすさは数学では必須といえそう。採点者への心づがいでもあります。本人をふくめてだれがみても見やすいとどこがまちがいか気づきやすいです。

つぎの例がそう。

ノートの1本の罫線のあいだに分数の分母・横線・分子をすべていれると見づらいもの。罫線上に横線をひき2本の罫線の上下に分母・分子を記入すると、おのずとかなりの生徒は成績を上げていきます。見やすくなりまちがいに気づきやすく、じっくり確認しながら先へ進めるからでしょう。

さらに方程式を解く際に途中式の等号(=)が縦に整然とならんでいるとひとまずOK。集合のベン図を面倒がらずに描くこと、関数の最大値や微積分の極大値などのグラフの概略や増減表を描きつつ、確認しながら解くことなどはたいせつな手順です。

こうして一見すると時間がもったいないじゃないかとか、ほかに時間をかけたいよと声が聞こえてきそうな手順ばかりです。細かくてどうでもよさそうにみえるかもしれません。

手を動かし図やグラフで表現して問題を解きほぐし、見とおしやすくする作業をつうじてやさしくします。そのうえで諸条件を確認しつつ解き進めるので、ミスを生じにくく正解に迅速に到達できると確信しています。
 

④省かずに計算

 そして途中式を省かずに書いているかです。慣れてくるとめんどうでだれでも省いてしまいがち。そこにケアレスミスを生んでしまいやすい。

高校生に数列やベクトルを教えていて目につきます。途中式を暗算にたよりミスしがち。暗算のたびに手が止まってしまいます。手が止まるということは時間のかかる暗算をしているか、解けないで行き詰まっているといえそうです。

すでに高校数学で佳境といえる単元ですし入試によく出題されます。このあたりで上述した分数を罫線上に書く、わかりやすく式を省かずに整然と表記するを無意識に実行できていると計算ミスにじわりと効いてきます。

この段階までに②~④が身についている生徒は、あまり心配せずともせっせとひとりでリズムよく解いています。手が止まりません。わたしは横についてほぼタイムキーパーをしている状態になります。生徒の表情があきらかにちがいます。

実例を示すと

 なにもチャンピオンデータを示しているわけではありません。ある生徒の例です。中学3年夏休みでわたしのところへ来た時点ではケアレスミスが多く、たえず消しゴムをごしごしやって答案の紙が薄くなっていく生徒でした。懸命なのはわかりますが努力の報われない状況でした。

そこでどうしたかです。

i.  消しゴム禁止に。まちがうと横線を引かせ下に書かせた。⇐見直せる
ii. 問題を読みつつ図を手書きで描いてから解きはじめる。⇐上の③
iii. 途中式を省かずに書く、筆算を残す。⇐上の④
iv. 1行書くごとに検算する。⇐上の③
v.  まちがえた問題を1週間後と1か月後の2回やり直す。⇐上の①、②

以上を時間をはかりながら実行しているうちにケアレスミスがほとんど見られなくなり、計算スピードが格段に上がりました。i.で見直すときに自分のミスのくせや傾向がつかめます。そこに注意を払えばいいです。消してしまうとその情報が入手できません。

そして志望高校に合格、のちの高1春の全国模試数学ではSランク(難関大レベル以上)の判定。

そののちはスムーズでした。高1で数ⅡBまでのセンター試験範囲を終了、高2の1学期には数ⅢC教科書完了、高2の1月にセンター過去問で志望大学(旧帝大理系)の合格ラインを上まわり、高3夏休み終了時に2次試験合格ラインを上まわる実力をいずれの教科も身につけ、余裕をもちつつ現役合格しました。

もちろんこの生徒の努力には脱帽します。運動部で活躍し充実した高校生活を余裕を持って過ごせていたようです。

小手先の方法ですぐに成績を上げる手法ではありません。時間がそこそこかかり「できる」へ近づけていきます。したがってべつの諸事情(昨今の流行り病でも)もふくめて、業を煮やしてつづけられなくなる生徒(なかなか世の中はかんたんではありません)がでてきます。

生徒たちの多くはつづけてくれると、各教科でわかるようになった、自分でできるようになってきたと言ってくれますが。

おわりに

 学習の遅れた児童・生徒の前ではどっしりかまえようと思っています。こちらのようすはこどもたちの鋭い感性でよみとられるようです。学習を手順よくすすめて、ポイント部分を維持できると学校についていきやすくなり、時間が取れるので遅れをとりもどす努力にあてられます。

こうして本来やりたいコミュニケーション能力や、興味・関心を広げて先の見えにくい将来への糧となる力をやしなうほうにエネルギーを向けています。

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