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いつのまにか翻訳アプリをしごとのなかでしっかりつかっていた


はじめに

 このところ研究パートに働きに出ている。そこでの気づき。

ごく最近のこと。翻訳アプリがしごとのかなめの部分を変えつつある。数年後にふりかえると、いまこの時こそ、AIがしごとをがらりとかえた転換期といえるかもしれないな。

きょうはそんな話。

研究をすすめるにあたって

 生命科学の実験とともにでてきた結果を論文にまとめている。この研究に至る経緯や過去から現在までの関連する研究内容をIntroduction(序論)のかたちで紹介する。

この部分をあらわすには関連する英語論文をかきあつめ熟読する。おおげさでもなくしごとの命運に関わるだいじな作業のひとつ。ここをつくる際の所作が従来とまったく違ってきた。実用レベルの翻訳アプリの登場だ。

論文の閲覧・執筆のためには

 ごくごく一般的な学術論文の体裁はこんな感じ。もちろん論文で多少異なる。

Title(題名)
Authors(著者)
Abstruct(要旨)
Introduction(序文、序論)
Methods & Results(方法と結果)
Discussion(考察)
References(参考文献)

論文の執筆にあたって、そのテーマに関連する研究者の原著論文や著書、レビューなどをIntroductionのセクションで紹介する。

もちろん後半のDiscussionでも今回出た結果を従来の研究結果と照らし合わせつつ、予想される反論への対処や将来への課題など議論を多面的にすすめる。そこでもたくさんの論文を引用する。

論文全体でたいてい数十本ほどの論文を引用することになる。ほぼ英文。以前は逐一著者に論文請求するならわしになっていた。わすれたころに船便でやってきた。これらの送付はたいてい送り元払い。研究者間ではおたがいさまなのでそれで済んでいた。

個人で入手がむずかしい場合には機関の提携している図書館に協力をもらい複写してもらえた。

最近はオープンアクセスのしくみの普及で、必要な論文の多くをとりよせる手間なくネット経由でその場にいて読める。出版社とのあいだで契約をむすんだ研究機関のIDがあればその場で閲覧できる。便利なサービス。

これとはべつにクローズドの機関がまとめて出版物利用料を払い閲覧できるサービスがあり、併用している。

どれだけ読むか

 さて、これらの論文。以前ならば濃淡の差はあるが原文に目を通していた。前述のように論文にReferencesとするならばすみずみまで熟読する。引用するほどでない論文でも講座で情報を共有したいのでゼミで購読に利用したり、授業でつかったりする。

こちらも正確に読みとる。そしてその他の論文については題名もしくはAbstructのみのななめ読み。ノートに骨子を論文名とともにメモ書き。そうしていかないと関連する学術論文雑誌だけでもすべてに目をとおすことは不可能。

しばらく前のことだが紙の冊子体だった頃。冊子体で研究室に届けられる学術雑誌の高さは毎月1メートルあまり。これを教授、助教授(准教授)、助手(助教)と順に目をとおしたあと書棚にならべた。学生たちは必要な論文の多くをここから収集していた。

このほかにも一般書籍が新たにはいる。学術雑誌のほうは背表紙に金文字をいれたかたちで数冊ずつ製本したあと再度書棚へ。棚が埋まると中央図書館の開架へ搬出。こんどは全学で利用しやすくなる。

雑誌をひとつとりあげよう。アメリカの生化学の学術雑誌のひとつJ.Biol.Chem.。当時は週刊で紙冊子ならば4センチほどの厚みだった。まとめて1か月分ごととどいていたので、これだけで20センチぐらいの高さ。掲載された論文の表題だけざっと目をとおすだけでもかなりある。

こうした十数種の学術雑誌の定期購読、そのほかに専門書を注文していた。したがって、1か月でゆうに胸の高さほどの書物を読みつづける。

そのなかから目にとまる論文のページにすすみ、Abstructだけ目をとおす。さらに興味があれば本文へ。そんなことをしているとすぐに毎日お昼になってしまう。合間に実験装置のめんどうをみつつ、午後からは実験の指導や方針をスタッフたちと話し合う。

現在の作業では

 さて、話を現在にもどす。

上に書いたように機関に所属するアカデミックユーザーならば基本的に学術論文の多くにアクセスできる。その一方で実用的なレベルのAIが普及しつつある。とくにDeepLによる翻訳機能はもうしぶんない。生命科学の用語でもほんのすこしの修正をたまにおこなえば、一時期べつのアプリであったあやしげな訳にはならない。

もちろん専門の基本を持ち合わせていること、一般的な英文法や解釈をある程度できる前提でのはなしになるが、やはりそこは日本人。英文のままでもよい場合と日本語にしたうえで教育に利用したい用途など目的によっては翻訳にわずらわされる。その時間をなんとかしたい。その点でこのアプリはよい相棒となる。

そして最近では英語論文執筆時にも活用しつつある。書いた英文がまともな日本語に訳されるか否かだ。英文から翻訳された日本語の意味が通ってふつうにそつなく読めれば、もとのつくった英文はそれなりにできていることになる。これをくりかえしつつ英文を見直して、体裁や内容のさらなるチェック。さらにネイティブの方へ見ていただく。

すこしはネイティブの方々の手をわずらわせることを軽減できそう。

おわりに

 この翻訳アプリの登場で、ほかのしごとのすすめかたもかわってきた。学生の指導。学生たちがそれらを使ってもべつにとがめない。むしろ論文内容の理解のほうに力点をおきたいから。英語はアプリにサポートしてもらい、ヒトは書かれた内容の理解にはげむ。

とくに英語の学習を小学校以来延々と時間をとられる日本人。そろそろそこの一部の労苦はAIにアシストしてもらいつつ、より本質的な内容理解や討議とその先へとすすんでもらいたい。もちろん英語も勉強してほしいけれど。

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