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AIチャットの情報の出どころを科学の作法でもってみずから調べられるだけの能力を身につけてほしい


はじめに

 研究パートで従事してふと思う。これからの学生さんたちに、AIを道具のひとつとしてつかえるようになってほしい。あくまでも使われるのではなく、道具としてつかいこなすこと。

このところ勃興いちじるしいAIチャットについては、科学の素養と作法をしっかり身につけて、その示す情報の出どころをみずからあたりしらべられるようになってほしい。

きょうはそんな話。

情報にあふれるなかで

 なにもAIだけではない。世のなかには科学まがいのアヤシイ表現にみちあふれている。もちろん表現の自由は尊重したい。その一方でヒトをまどわしてはならない。

それをあばけるチカラを身につけるために、わたしたちは学校などで「このヒト、分野は狭いけれどそこの部分ならば真偽や定義を知っているよ。」という意味で準学士、学士、修士、博士などの学位のお墨つきをもつ先生たちからまなぶ。まなびをつうじて科学の流儀や作法を知れる。なかには科学にせまりつづけてそのままなりわいにするヒトもいる。

博士の学位をもつ立場から、科学的かそうでないかをみきわめるのにもとめられるちからとは。

科学のせかいにひたって

 しごとをしながら博士論文を書きあげ論文博士の学位を授与された。遠くはなれた指導教員のもとへ飛行機で往復しながらしあげた。やがて総長から学位記を押しいただいた頃から、関連分野の論文に目をとおすとアレッそうかな~とアヤシイ表現が目に留まる。

日課のように読みつづけていると判断が容易になるし、しばらくはなれるとさびつく。というのも科学の世界は日進月歩。きのうまでの常識が翌日にはくつがえされかねない。耳をアンテナのようにそばだてて、研究エリアをくまなくサーチする。これをおこたるとたいへん。

これが専門をはなれて周辺領域となると、もはや数十年分ぐらいのレビューを読みかえして内容を理解して、ようやく最近の動向までたどりつける。せまいエリアの周辺でさえそうだから、もっとはなれた分野となるとそうはいかない。その専門の方々のところへ出向いて疑問な点を教えを請う。講演や学会はそういう機会。

地位や立場に関係なく、おなじ学会や催しの参加者でありさえすれば、学生であってもおかまいなく質問できるし、問われたらわけへだてせず真摯にこたえる。これがルール。

するとどうなるか

 だんだんとまわりのようすがみえるときがある。霧の一瞬の晴れ間のよう。あっ、これはおかしいと気づける。とくにみずから手を染めたすぐさきのごくせまい領域の記載については敏感に反応する。この記述はどこに裏づけがあるのかな、みつからないけど…と思うときはたいていアヤシイ。調べても一次情報にたどれない。チャットAIでもごくふつうにやらかす。

ていねいに問いあわせてみるとあやふやな返答だったり、すぐに訂正しましたとお礼をいただいたり。科学にむきあう立場ならばおたがいにあっさりケアレスミスかそうでないかはピンときやすい。追試をしてみるとよくわかる。

がっちりした多くのヒトから引用され評価の定まったしごとを手順どおりにやってみると実験結果がきれいにでてくる。なるほどここがポイントなのねと納得できる。ここを踏破するのにきっとざんざん苦労されたのだろうな。

実証実験や観察結果にもとづかない記述は、その分野にたずさわるヒトにはただちにピンときてしまうもの。再現しようにもうまくいかない。とりちがえたのはここかな、と。一流の雑誌でも追試ができない、うまくいかないはよくある。じつはこれが多い。

もしも実験や観察にもとづかずに信念だけで書かれていれば論理が破綻しかねない。巧妙にみえても論理の飛躍があったり、まぎらわしく変に難解だったり。それはすでに科学になりえていないので相手にしない。

おわりに

 すぐ上の文は「~ナイ」の典型文になった。ムキになってもしかたナイ。もっと前むきに語ろう。だから学生さんには最初はつたない結果でもそれをそのまましっかり観察してありのまま記録しようとだけつたえる。

じつはそのなかにいままでにない興味深い現象がかくれているもの。それをみおとさないで見つけるには? おそらく上に書いた科学の所作をみにつけると同時に、自然に対して愚直なまでにすなおになり観察をくりかえす態度、それに必要なしばらくの忍耐力かな。

それだけ泥くさいしごとといえそう。

その作業をつうじて観察の蓄積という努力に報いるだけのものをそのヒトと周囲にのこせる。かおりたかいエッセンスのように。それはまちがいないし、うそいつわりはそこにはない。データから真理がわからないときは、そのままわかりやすく記録としてのこし、後世にまかせればいい。


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