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手順を踏めば興味のある分野の学術論文を読めるまでになるか


はじめに


 研究職からはなれてかれこれ15年ほどのころ。学位をもつ身としてときにみずからの研究分野に関してチラリと文献などをながめるぐらい。この間の学問の進展はめざましく、じゅうぶんフォローできないでいた。

ブログをつうじてこの分野を教えてほしい方との出会いがあり、中学校の教科書レベルから順に大学院レベルまで教えることになった。その学習サポートに関するこれまでのあゆみをふりかえりたい。

さいしょには


 その方は理系の出身だが、ご専門は高校の科目でいえばわたしとはちがう。しかも大学を卒業後、お仕事に就かれてから、ご自分の専攻や専門からはなれていた年月はわたしとさほどかわらない。サポートするための学びなおしになるし、せっかくの機会だからいまの情報に追いつこうと考えて、ふたつへんじでひきうけた。

そうなるとてはじめになにからはじめようかとなった。本業の学習サポートでは日ごろから児童・生徒たちにおしえている。だからテキストは小学校のものから息子の卒業したばかりの大学のものまである。このことをしめすと、じゃあ中学校ぐらいからお願いしますとなった。ちょうど4年前のこと。

中学校の理科では物理、化学、生物、地学と書く分野をバランスよく基本をまなべる。この方の専門の単元はさらりと思い出すだけでよかったので、そのほかの単元をじっくりいっしょにたどっていった。パートナーのいる登山のよう。コンパクトなテキストとともにうすい問題集を解きつつ、理解を確認。

おたがい1000キロ以上はなれているのでスカイプやzoomを利用。古本でおなじ版のテキストをネット上でさがし、おなじテキストのページをおたがいに開いて説明や質問をくりかえした。

週1回のまなび


 両者ともしごとがおわりひと段落した時間にはじめる。週に1回。わたしは本業から帰宅して食事をすませた頃からちょうどはじめられる。単元内容の予習は本業の昼休みや休日になる。そんなに時間をとられるわけではない。

順調に半年で中学校の単元をクリアでき、そののち高校レベルにすすんだ。化学と生物のほぼ全範囲を1年弱かけてマスター。はじめて1年半後には大学の教養レベルにすすめるところまで達した。

週1回1時間ずつでここまですすめたのは、なによりこの方の努力あってのこと。

越えにくいところ


 独学ならばわかりにくいだろうなというところが何か所かある。たとえば高校化学ならばモル(mol:物質量)という考え方。これは化学特有の概念。

世の中には通貨をはじめとしてこうした単位としてのとらえかたがあふれている。さらに化学構造式についてもおなじ。化学結合の表し方としてじつにシンプルで合理的にできている。

分子やイオンの数であつかうよりもモルにおきかえて考えれば化学はわかりやすいこと、有機化学ならば化学構造を官能基ごとの性質の特徴を理解できればわかりやすいことなどを紹介。ペースを調節しながら身につけていただいた。

すると、ああ、そうかこういうことですねとご理解いただけた。それらを越えるとわりとスムーズにすすんだ。

このように要所要所のサポートさえあれば、けっこう離れていても教えられると実感できた。有機電子論をはなれていておしえられたのは収穫のひとつ。

おわりに


 現在は大学院レベル。生命科学を化学と生物を基礎に積みあげてきた。すでにこの分野の原著論文をお読みになれるほどに。

たまに読まれた論文や資料から興味をもたれたものをわたしに報告していただけている。それからどうじに関連する実験技術を少しずつ身につけていただいている。

ここで欠かせないのが安全に関して。化学薬品の取扱法や人体への影響についてもふれた。さらにはこの分野における生命倫理など周辺領域に関しても。

わたしの知るかぎり情報や法令に関してうらづけをとりつつ、あたらしいものを紹介してきた。ここではじめて甲種危険物取扱者の免状が役に立つ。

ここまでほぼ4年。なんとかなるものだと感じている。わたしの専門領域だけではか細いので、周辺の無機化学や微生物学など生命科学の周辺分野をいっしょに身につけようとおたがいに学びあっている。

テストや入試にとらわれない学びのなんとたのしいことか。あらためて実感している。

追記

 昨年末からふたたび研究職(パート、兼職)に。上に書いた学習サポートが、わたしにとってアイドリング状態となり、すんなり復帰できたのではと考えている。

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