見出し画像

2020.12.26 「男のくせに」

今日は私の数少ない男友達とごはん。
バンドに加入したのががきっかけとなり、かれこれ10年以上の付き合いになる。

遠い昔にカミングアウトしていたこともあり、私とパートナーとの話になった時、ふいにその違和感はやってきた。

「日本では同性婚は難しそうだね」と言われ、
私は少ない知識を引っ張り出し、「〇民党が主導権を握ってるしね。それに日本は貧しくなってるから。」と答えた。
これはもちろん経済的な意味と、思想的な意味合いで言った。
すると、「少子化も問題になってるしね。」

ここでんっ?となった。
「少子化を同性愛者のせいにするのはおかしくない?今は同性同士でも子供を持つことはできるよ。」
「じゃあ女の人が昔と比べて社会進出してるから(少子化になってるの)かなぁ。」
「そんなの父親だって子育てすればよくない?」

こんな会話をしたけれど、彼の中には
《育児と家事は女がやること、お金を稼ぐのは男のやること》と言った昔ながらの「日本の家父長制」が深く根付いている気がした。

もちろんこの男友達が悪いわけではなくて、日本の、少しづつの変革の過程にまだ乗っかれていない大多数のうちの一人なだけなんだとも思う。

そして少し前の私なら、彼の発言にきっと違和感を抱かなかった。


これは私のいけないところでもあるけれど、物事に対して何の疑問も抱かずに
「こういうもの」と受け入れてしまうところがある。
それはある意味幸せなことかもしれないけど、思考を働かせていないし、無意識に自分を抑圧している。


例えば私の父はそれはそれは絵に描いたような亭主関白な男だった。
友達に父のことを話すと、「お父さんのせいで男の人ダメになったんじゃないの?」と言われるけど、確かに一理あると思う。

酒とタバコとギャンブルに借金、浮気、私が小さい頃は母に対してDVもあった。
何度も殺してやろうと思い、布団の中で震えながら声を押し殺して泣いた。
年中家事は一切手伝わず、母の作る料理や、やることなすことに文句を付けて怒鳴り散らす。
「お前は常識がない」が口癖だった。ひどい日には皿も飛んでくる。

でもこの狭い家の中で繰り広げられる毎日が、《育児と家事は女性がやること、お金を稼ぐのは男のやること》として当たり前に染みついてしまっていた。(母はパートタイマーをしていたけれど)

だから、世の家事育児を手伝う旦那さんに「偉い」なんて感想を抱いていた。


でもよくよく考えてみれば家族はチームプレイなんだし、寧ろ手伝うのは当たり前なんじゃないか。
もちろんお互いに感謝の気持ちを持った方が気持ちがいいけれど、「ありがとう」と思うことと「偉い」と思うことはまた違う。



こんな風に考えを転換できたのは、パートナーのおかげだ。
私が父の話をした時に、「何で男だからって偉いわけ?」と私の過去を想像し、怒ってくれた。
「大変だったね」と言われることはあっても、父を通してジェンダーのギャップに疑問を抱き、日本がいかに遅れているか教えてもらったのは初めての経験だった。


私は、思う。
こんな風にジェンダーギャップについて知ることができて本当に良かったと。

なぜなら、自身の男性への性差別にも気付けたからだ。


少し前にパートナーと韓国料理店で食事をしていた時、私の視線の先に若い男女が座っていた。
メニューを二人で眺めた後、店員を呼ぶために男の子が手を挙げるが、なかなか気づいてもらえない。
その間声を上げることなく、心細そうにもじもじと手を挙げていた。
結局女の子が「すみません」と声を上げ、事なきを得た。
その時私は「男のくせに店員も呼べないのか」と思ったのだ。

思った後でハッとした。
これこそ、性差別なのだ。
男性はこうあるべき、女性はこうあるべき、のような偏見こそ誰かを傷つけることになる。

思えば日傘をさして歩く男の子にもそんな感想を持っていた。
「男のくせに日傘なんかさして」と。
でも男性が日焼けしたくないと思うのは自由だし、逆に女性が日焼け対策をしなくたってそれもまた自由だ。

これではかつて私に、女の子なのに何でそんなにボーイッシュなのかと槍を投げてきた人と何も変わらない。




話が逸れてしまったが、私はラッキーなことにパートナーのおかげでジェンダーギャップや、自身にも性差別的なところがあったことを知れた。

でも冒頭の男友達は、そういったことを知らない。
知らないし、知りたいとも思ってないかも知れない。

知る機会があること、知りたいと思うこと、経験すること、これらが合わさらないと、なかなか自分の思考を変えることはないと思う。


私はこれからも自分からジェンダーについて発信するつもりはない。
そういうことは既にやってくださってる方にお任せする。(勉強が苦手なだけ)

でも、もし周りの人が興味を抱いた時に、自分が不便だったことなどを交えて、少し話せるくらいは勉強しておこうかなと思う。


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?