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5/27 ニュースなスペイン語 Solo sí es sí:ハイはハイだけ

何となく分かるようで、分からないだろう。

実は、これは、この度、スペインの下院(Congreso de los Diputados)で可決したある法律の通称である。

まだ、この法律の名称は決まっていないようだが、「garantía integral de la libertad sexual(性の自由を全体的に保証する)」ための「基本法(ley orgánica)」だ。

ちなみに、基本法とは、国家の運営のための基礎的な理念を定めるもので、憲法(Constitución)は基本法の親分だ。今回の性の自由を保証する法律は、従って、後の様々な性に関する規定や法律の根本となる法律ということになる。

さて、通称の「ハイはハイだけ」が意味するところは、女性が明示的に同意した時にだけ性的な進展がある、ということ。

つまり、オレのことを誘ってるからあんな短いスカート履いてたんだ、とか、あの目は僕のことが好きだって言ってる、とか、男性の勝手な妄想や早合点を口実に、無理やり女性と性的行為に及ぶことを犯罪とする、というのが骨子である。

この基本方針の他にも、次のような点も盛り込まれた:

① 現行の刑法(Código Penal)から、性的いたずら(abuso sexual)と性的暴行(agresión sexual)の区別(distinción)を撤廃する(supresión)
② 性犯罪(delito sexual)の立件の際、明確に表明された合意(consentimiento expreso)の有無をカギとする(hacer de clave)
③ 被害者たちへの総合的な保護(atención integral)を保証する

そして、③の方法として、

A.裁判の手続きの際、加害者(男性)と対面でのコンタクトを避ける(evitar contacto visual con el presunto agresor)
B.証言の際は、特別な部屋で行う(declarar en salas especiales)
C.成人女性(16歳以上)へのケアを行う、24時間体制の施設を設置する(la creación de centros de crisis 24 horas)
D.未成年が被害者の場合は、特別児童施設(las casas de infancia)を設置する

などの具体策が盛り込まれる。

ところで、本法は、下院で可決したものの、実は、満場一致というわけにはいかなかった。

まず、右派の国民党(PP)と極右のボックス党(Vox)が反対票を投じた(en contra)。この法案は、これら二党とは思想的に真逆のポデモス党(Podemos)が中心となって策定したものなので、反対は当然と言えば当然。

そして、棄権した政党もあった(se ha abstenido)。

スッキリしなかったのが、連立パートナーのスペイン社会労働党(PSOE)は、本法案に賛成票を投じたものの、一部の点で、折り合いがつかなかったことだろう。

というのも、売春(prostitución)をどう位置付けるかで、両党には、隔たり(discrepancia)があったためだ。

立案政党のポデモス党は「自らの身体を売ることを決心した女性たちの性の自由(la libertad sexual de las mujeres que deciden prostituirse)」を擁護する立場であるのに対して、スペイン社会労働党は売春廃止(abolición)を支持する立場である。結局、これについては、スペイン社会労働が折れ、売春を規制する法案を将来つくる(una futura ley contra la trata)か、売春あっせん業(el proxenetismo)を規制する特別法案を立案することで、落ち着いた(ley específica)。

今後、この法案は、いろいろな火種になるかもしれない。

写真は本法案の立案省庁である「平等省(Ministerio de Igualdad)」の大臣、イレネ・モンテロ(Irene Montero)。自身の所属するポデモス党のイメージカラーである紫のワンピースを身につけ、国会答弁に臨んだ。まだ、上院(Congreso de Senadores)に移して審議が行われるが、一山は超えた。

出典
https://www.rtve.es/noticias/20220526/congreso-aprueba-ley-del-solo-si/2351719.shtml