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ウォーキングアプリ「aruku&」インタビュー

ゲーミフィケーション協会監事の田中(以下、JGA田中)でございます。
今回は、歩くだけで地域名産品が当たるウォーキングアプリ「aruku&」(あるくと)を提供している株式会社ONE COMPATHさんへ、協会代表の岸本(以下、JGA岸本)とお伺いしました。

JGA田中:
西澤孝太さん、大村梨紗さん、本日はよろしくお願い申し上げます。
まずは、ウォーキングアプリ「aruku&」をご紹介していただいてもよろしいでしょうか。

西澤さん:
「aruku&」は、運動がなかなか継続できない人たちでも、ゲーム感覚で楽しみながら続けられる無料のウォーキングアプリです。登場するキャラクターから出される「1時間以内に1,000歩あるいて」などの依頼をクリアすると、地域名産品やTポイントなど様々な賞品に応募できます。また、法人向けに提供している「aruku& for オフィス」では、社内ウォーキングイベントやレクリエーションを実施することもできます。


「aruku&」 ホーム画面

JGA田中:
「aruku&」を開発したきっかけやウォーキングに特化した理由は何でしょうか?

西澤さん:
開発当時はマピオンという社名でしたが(2019年に株式会社ONE COMPATHに社名変更)、位置情報ゲームの草分けといえる「ケータイ国盗り合戦」(現在は株式会社マイネットゲームスさんに事業譲渡)を運営していました。

JGA岸本:やってました!
JGA田中:めっちゃ、やってました!

西澤さん:
ありがとうございます(笑)。他にも、日本最大級の地図検索サイト「Mapion(マピオン)」も運用しており、位置情報を活用してユーザーを店舗や観光地に送客するノウハウがありました。例えば「ケータイ国盗り合戦」では、商店街で買い物をすると、「ケータイ国盗り合戦」の中で使えるアイテムが貰えるイベントを開催。ユーザーの皆さんが商店街に行って銭湯でお風呂に入ったり、ときには布団を買う人もいたりと、商店街の活性化に貢献していました。当時から、位置情報とO2O(Online to Offline)をかけ合わせたゲーミフィケーションだったと思います。その時の“人を動かすノウハウ”を活用した健康軸での新しいサービスとして「aruku&」を開発、2016年に提供を開始しました。2016年は「ポケモン GO」がローンチされ、位置情報ゲームが盛り上がっていた時代背景もありますが、「aruku&」に関しては、国民の課題でもある健康寿命の延伸のような課題をゲーミフィケーションで解決できないか考え、歩行を促進するアプリを開発しました。歩くことが健康にいいことは誰でもイメージとしてあると思いますが、それを楽しく長く続けられるアプリがいいのではと。そこで、「あなたの一歩が宝に変わる」をコンセプトに据えました。

JGA田中:
確かに、移動でポイントを増やすサービスはたくさんありますが、歩行に主眼を置いているサービスがあまりないように思います。いまサービスのアクティブユーザーはどのようなキッカケで始めることが多いのですか?

西澤さん:
「あなたの一歩が宝に変わる」のコンセプトどおり、地域の名産品や様々な賞品が当たる抽選に応募できる仕組みのため、何か当たるのであればやってみようかなというユーザーが多いと思います。また、健康診断の結果が気になる人も健康づくりとして使っていただいています。さらに、住民キャラクターをコレクションできる仕組みがありまして、それが歩くモチベーションや継続率に寄与していることがわかっています。


「aruku&」で応募できる賞品例

JGA岸本
開発当初は、どのような層がメインターゲットで、実際はどうだったのでしょうか?

大村さん:
当初は20代〜30代の女性をターゲット層に想定していましたが、現在では男女比は半々程度で、50代以上の方も多く利用しています。また、アクティブシニア層にも受け入れられています。現在は30~50代の働き盛りの男女をメインターゲットをしています。

JGA岸本:
歩行に関するアプリとして、「ポケモンGO」や「ドラゴンクエストウォーク」などの位置情報ゲームや、ポイントサービスのアプリが挙げられると思います。それらと「aruku&」との違いはどこにありますでしょうか?

西澤さん:
「ポケモンGO」や「ドラゴンクエストウォーク」などは、どちらかというとゲームにヘルスケア要素が付随しているイメージです。弊社の場合は、ウォーキングという健康習慣や体重管理といったようなヘルスケアにゲーミフィケーションが乗っかっているので、軸が違います。

大村さん:
最近では、ポイ活(ポイント活動)アプリの1つとして紹介いただくことが増えていますが、ポイントを貯める行為が中心のポイ活アプリと比べ、「aruku&」ではポイントだけでなく賞品が当たるというところも他社サービスと違うポイントかもしれません。
また、法人向けにも提供しており、ウォーキングイベントがアプリの中でできるということも差別化ポイントの1つです。例えば、全国に支社がある企業の場合、一つの場所に集まってリアルイベントを行うことは難しいですが、アプリ上でランキングを競うため日本全国規模で開催できるのが強みです。コロナ禍においては、企業の運動会やウォーキングイベントなどの中止が相次ぎ、リモートワークによる運動不足やコミュニケーション不足といった社会問題が浮き彫りになりました。従業員の健康増進施策を取り組む人事部や総務部の方からは、バーチャルでウォーキング大会ができるサービスとして引き合いが増えました。

JGA田中:
話は個人向けサービスに変わりますが、法人向けサービスと違って個人向けサービスは、自分は課金しなくても十分満足なプレイができてしますので、心配しております(笑)。

西澤さん:
おっしゃる通り、課金をしなくても結構遊べちゃうと思っております(笑)。課金アイテムとして「ポタストーン」がありますが、これは毎日のミッションをクリアするなど課金しなくても手に入る方法があります。「ポタストーン」を使うと遠くの住民キャラに話しかけられるなど、コレクションの効率があがる仕組みです。例えば課金すると歩数が2倍や3倍になるような直接的なステータスに関わるものは、あまり入れていません。それは、1歩の価値は平等でいたいという信念があります。

JGA岸本:
ゲーミフィケーション要素の盛り込み方が難しいですね。教育向けアプリに似ているのですが、学習効果を測定する時に、課金を用いて学習時間が記録上だけ増えたとしても、実際の学習時間は伸びていないので学習効果はあがっていません。学習はコツコツやることが成長につながるのに、それを課金でズルすることに意味はないのと一緒かもしれませんね。

西澤さん:
確かにウォーキングもコツコツと継続することで効果が出てくるものなので、教育と同じですね。その継続性の部分がゲーミフィケーションの担う部分かもしれません。

JGA岸本:
具体的に、「aruku&」で使われているゲーミフィケーション要素は、例えばどんなものがありますか?

大村さん:
話が少し重複しますが、地図上にいる住民に話しかけて依頼された歩数を歩くという要素や、その依頼を達成するとコレクションができるという要素があります。


「aruku&」住人からの依頼

JGA岸本:
依頼されたことをクリアしていくのはゲーム要素っぽいですね。クエストと同じですね。「世界を救えるのは勇者のあなたです」と言われると、人は自己肯定感や自己効力感が好きなので、自分も成長するし周りからも褒められるというところが、とてもゲーミフィケーションらしいと思います。

西澤さん:
あとは、ランキング要素ですね。これは1週間単位で、個人やチームで競います。ウォーキングは一人でコツコツやるにも限界があると思っています。なので、同僚や家族同士でチームを組んで励まし合ったり、輪の力で長く一緒に続けられることは必要だと考えています。

JGA岸本:
その1週間単位というのは、いろいろ期間を変えてテストしてみて1週間になったのですか?
大村さん:
もとから1週間に設定しています。1週間くらいが期間的にちょうど目標としても持ちやすく、「その週は頑張って今回1位を取ろう」といった動きが多いですね。

西澤さん:
法人向けサービスを導入いただいている企業様の中には、イベント期間を3ヶ月といった長めに設定しようという健康意識の高い企業様もいらっしゃいます。それでは中弛みをすることもあるので、イベント期間は1〜2週間がちょうど良いとご提案しています。

JGA岸本:
確かに、3ヶ月となると最初の1週間と最後の1週間だけポイントを貯めるために頑張るって人多そうですね。

JGA田中:
ランキングで競う数値は、例えば歩数や移動距離などが考えられますが、どの数値が採用されていますでしょうか?

大村さん:
コンシューマー向けのランキングでは、歩数や移動距離ではなく、住民に話しかけたり、目標歩数を達成したり、500歩歩くごとなどで獲得できるウォーキングポイント数をランキングに採用しています。単純な歩数を採用しなかった理由は、歩きすぎてしまうことを防ぐためです。法人向けのランキングは企業ごとに異なりますが、任意で作成したグループごとの平均歩数でランキングを競うことが多いです。ウォーキングを習慣化してもらうことが目的なので歩きすぎを防ぐため、「aruku&」では1日の目標歩数の上限も10,000歩に設定しています。

また、法人向けに、従業員が毎日3,000歩歩いた日数を競う無料の企業対抗ウォーキングイベント「1day3000(ワンデーサンゼン)」のようなイベントも随時開催しています。目標を細かく設定することでの成功体験が重要と考えています。

西澤さん:
ゲームはハマれば何時間でもやる方もいますが、そういった仕組みをaruku&で作ってしまうとコンテンツ寿命が短くなってしまうと考えています。1日のうち、長くてもトータルで1時間くらいの隙間時間にやれるコンテンツに抑えていく方が「aruku&」が目指すビジョンに合っていると思っています。

JGA岸本:
そこがゲームとゲーミフィケーションの違いを表しているように思えます。ゲームであれば、短期間に熱中させて「1日4万歩あるいちゃった!」みたいな世界観もありますが、ゲーミフィケーションとなると、面白すぎて短期間のみに熱中させることはなく、堅実に継続的に長くコンテンツを消費してもらう必要があると考えています。

大村さん:
続けてもらうためのUI/UXの視点だと、「ミッション」が大きいかなと思います。ここ3年でミッションを前面に出したUIに変えました。今、ランダムでデイリーミッションが4つ出るようにしています。難易度も複数あり、難しければ変更できるようになっています。基本はとても易しいミッションなので、とりあえずやってもらい達成感を味わってもらう演出をデザインしています。やはりゲームっぽくなると複雑になっていってしまい、ユーザー層と合わなくなってしまうので、いかにライトに見せるかに工夫しています。


「aruku&」デイリーミッション

JGA田中:
トップ画面の左上のミッションですね。見てみると確かに、「今日の体重を入力しよう」、「住人の依頼を開始しよう」、「ぽたろうサーチを使おう」、「目標歩数を達成しよう」という難易度は低めのミッションが並んでいますね。「住人の依頼を開始しよう」は達成しているので、受け取ると、あっ!レベルが上がりました!

一同:
おめでとうございます(笑)

大村さん:
使ってもらいたい機能や新しく追加した機能などは、イベントやキャンペーンで触れてもらうより、ミッションに入れておくほうが断然効果があります。ミッションだけは毎日全てクリアしておこうといった方もいらっしゃいます。3つだけクリアして1つだけ空きがあったりするのは気になっちゃうみたいです。

JGA岸本:
外国の方と話をすると、コレクション要素に反応が強いのは日本人の特徴なのかもしれないらしいですよ。日本人向けにはコレクション要素とガチャ要素を入れておけば最強なのですが、外国ではいまいち反応が薄いらしいです。ゲーミフィケーションも国によってささり具合が違いますね。

西澤さん:
確かに、外国ではコレクション要素とガチャ要素よりも、アクションを自分で起こしていくような、行動を想起する体験の方が好まれる印象がありますね。

JGA田中:
なるほど、確かにそうかもしれませんね。その行動に関してですが、「aruku&」を利用した方々で、行動変容に関するエピソードを聞いたことはありますでしょうか?

大村さん:
一駅前から歩くようになった方や、キャラクターを集めるために気がつくと10,000歩達成していた、なんて方がいるというエピソードはよく聞くので、無意識的に行動が変容しているということだと思います。

西澤さん:
法人向け機能を導入いただいている企業様では、組織内のコミュニケーションが増える効果もあるようです。また、部署対抗戦の場合、部署間で負けたくないという思いが芽生えやすく、普段の平均歩数が少ない部署でも奮起してみんなであるくようになったという話も聞いています。
そういえば、高齢の方から社長宛に直筆の達筆なお手紙を頂戴したこともあります。その方はもともと足腰が悪く、医者からの助言もあってリハビリも兼ねて「aruku&」を使うようになったそうです。キャラクターを集めたり、ミッションががライトだったりするので、継続的に使うことで快復に向かっていったとのことでした。これは本当に嬉しかったですね。

JGA田中:
そういえば、「aruku&」のメインキャラクターである「ぽたろう」はどういう理由で何の動物ですか?

大村さん:
「ぽたろう」はイタチですね。理由はイタチが一番可愛いと思ったからです(笑)。
「ぽたろう」も見た目がぽっちゃりしているので、ガツガツ運動するタイプではないんです。ゆるく楽しんでいただく「aruku&」のコンセプトに合わせています。他にも「ぽたこ」という妹やお友達の「悪魔ぽたろう」や「天使ぽたろう」がいます。


「aruku&」ぽたろうと愉快な仲間たち

JGA岸本:
「aruku&」をお子さんと一緒に親子で楽しむ、みたいな展開もあるかもしれませんね。ゲーミフィケーション協会の会員企業さんで、株式会社JGAbというところが、「清走中」という「ゴミ拾い」と「ゲーミフィケーション」を融合させた、ゲーム感覚ゴミ拾いイベントをやっているのですが、昆虫採集や魚取りと同じ感覚で子供は熱中していました。

西澤さん:
タイムリーなのですが、以前「aruku&」を導入いただいている工業用塗料および電子部品の販売を手掛けるオーウエル株式会社さんが、「aruku&」を使いながらゴミ拾いをするイベントを開催しました。そこでもお子さんはかなり熱中していて、終わっても駅までずっとゴミを探していて感動してしまいました(笑)。

JGA田中:
最後に、今後の新規機能や進化する点、新規サービスや海外展開の予定はありますか?

西澤さん:
現時点では海外展開は考えていませんが、海外支社がある法人さんもいらっしゃいますので、歩数だけでもカウントする案など検討していければと思います。人生100年時代を自分らしく過ごせるように、繰り返す日々の「移動」をもっと楽しく価値あるものにする弊社の重要な事業領域である「移動エンターテイメント領域」として、aruku&を今後も進化させていければと思います。

JGA田中:
「aruku&」は、運動を楽しみながら健康維持に役立つサービスであることが伺えました。ユーザーは健康的なライフスタイルを手に入れるだけでなく、地域名産品やTポイントなどのインセンティブも獲得できます。法人利用では社員の健康管理に寄与するだけでなく、社会貢献にもできる二度美味しいサービスでした。本日は、ありがとうございました。


集合写真+ぽたろう

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