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ディズニーのゲーミフィケーションデザイン~書籍『ディズニーキャストざわざわ日記」』

 こんにちは。「世界を神ゲーに」するゲーミフィケーション賢者Lv98の”きっしー”です。

『ディズニーキャストざわざわ日記――〝夢の国″にも☓☓☓☓ご指示のとおり掃除します』(2022、笠原一郎 (著)、フォレスト出版)を読みました。

以前は、ゲーミフィケーションについての大学授業の中で、事例として、ディズニーのカストーディアルも紹介していました。

それは、清掃員アルバイトであろうが、一番最初に、

あなたは、青空を背景にした巨大なステージという舞台に立つ役者なのです。そして、すべてのゲストに、Happinessを届けることが役割なのです。
と言う教えを受けて、モチベーションMAXになるという事例です。

まさにドラクエの最初の、賢者からの教えを受けて、冒険に町から旅立つ少年をイメージしました。

ストーリー、役割、ゴールを用意してあげることがモチベーションMAXのキモです。

個人的に、『交通誘導員ヨレヨレ日記』以降のヨレヨレ日記シリーズが好きでよく読んでいます。今回も、

夢の国のリアルな現実。57歳で早期退職後、あこがれのディズニーランドでキャストとして6年間働いた、汗と涙の話。

概要

と書いてあって、興味をもち読みました。


 本書『ディズニーキャストざわざわ日記』を読み進めると、夢の国を支えている人たちの、夢だけではない様々な現実がとても面白かったのですが、

思ったのは、やはり、ディズニーには、来場者の心のみならず、キャストの心をつかむ、優秀なゲーミフィケーションデザイナーがいるに違いないということです。

本書から引用しながら、いくつか事例を紹介していきます。

ゲーミフィケーションデザイン6要素の「③称賛の演出」をふんだんに使っています。

●キャストのグレード名も、マジック!

準社員のキャストは「M」「A」「G」「I」「C」という5つのグレードに別れている。これは「マジック(魔法)」のスペルから来ており、Cが最上位で、I,G,A,Mの順となる。グレードによって時給が違う。基本時給は最上位のCが最高で1350円、最下位のMは960円である。

P59より

※味気ない数字だけなく、MAGICのそれぞれの文字になっているのがすばらしい。「C」まで昇格すると夢が叶いそう。本協会も、「G」「A」「M」「I」「F」とかにしましょうか。


●学びのためのトレーニングパスポート!

キャストは年間8枚程度トレーニングパスポートが配布される。
(中略)
無料で東京ディズニーランドまたはシーを利用できるチケットで、「自分以外のキャストの言動から学ぶことを通して、キャストとしてさらなる向上を図る」ためのものである。通常は年4回、合計8枚もらうことができる。

p125より

※成長のための学びの機会を、会社側が提供している所がすばらしい。

●「WE ARE ONE 心はひとつ」!

(震災での)約1カ月の休園のあと、舞浜に再び戻ってきたキャスト全員にオンステージでつける青い腕輪が配られた。それには次のように記されていた。
「WE ARE ONE 心はひとつ」

p144より

※キャストは無料でもらえたそうです。ゲストの購入金は、災害支援金に当てられた。人は本来、人助けや一体感が好きなのです。

●「仕事のやりがいは?」と聞かれる!

小中学生のゲストからの質問といえば、「仕事のやりがいは?」とか「仕事をしていて嬉しいことや気をつけていることは?」といったものがある。きっと学校の課題か何かなんだろう。こうした質問にはできるだけ丁寧に答えるように心がけていた。
「仕事をしていて嬉しいことはなんですか?」
「ゲストの方に喜んでもらえて、楽しい思い出作りのお役に立てたかなと思うときです」私の答えを、持っているメモ帳に必死で書き留めている姿は健気でかわいい。

p145より

※普段仕事をやっていて、小中学生「仕事のやりがいは?」と聞かれることはないはず。これは嬉しいですね! 自己肯定感が高まって、幸せを感じる。



●失敗が取り消される 魔法の粉!


 キャストは「ピクシーダスト(PIXIE DUST=妖精の粉)」というツール(用紙)を携帯している。この「ピクシーダスト」の用紙にはティンカー・ベルのイラストが書かれていて、ティンカー・ベルの魔法の粉に由来する「ちょっとしたプレゼント」の意味があるらしい。
 キャストは「ピクシーダスト」にリカバリーしたい内容を書いてゲストに渡す。たとえば、ポップコーンを大量にこぼし、キャストがその場を離れられない場合など、「ピクシーダスト」に「ポップコーンキャラメル味、バゲットに満タン」などと記入してゲストに渡すのである。ゲストがこの用紙をポップコーン取り扱いワゴンに持参すると「サービスリカバリー」を受けることができるというわけだ。

「サービスリカバリー」
ほかにもアイスクリームを落としたときとか、風船が飛ばされてしまったときなどにも使われる。

p185より

※絶対失敗が許されない状況では人のモチベは下がります。ポップコーンをこぼしてはいけないも同じ。でもゲームだと失敗オッケー、失敗から学んで行くのがゲーム。なのでゲームは、面白い。


●バースディシールで、女子高生に祝われる!


 さて、このバースディシール、ゲストだけではなくキャストが自分の誕生日につけることも認められている。
入社して4年目、私も還暦の誕生日に「一郎、60歳」と書いてつけてみた。
オンステージに出るときは、年甲斐もなくドキドキしてしまった。(中略)
最終的にはその日一日で30人ほどのゲストから祝福の言葉をいただいた。
その中にはギャル風の女子高生グループもいた。彼女たちがほかのどこかで赤の他人である私の誕生日を祝うことなどありえない。これも”夢の国”の魔法のひとつなのだろう。(中略)
 その経験をして以降、私もより多くのゲストに祝福の魔法をかけてあげたいと思うようになった。こうして私もバースディシールをつけたゲストを見つけると、自然と祝福の言葉が出るようになっていった。

p190-191より

※人は褒められる、祝福されると嬉しい。そして次には、他の人を祝福したくなる。ポジティブループが回る仕掛けです。




●「ファイブスターカード」のメッセージを読み返すたびに嬉しい


 前職はサラリーマンとして34年勤務したが、仕事の中で相手を褒めたり、誰かに褒められたりする機会は多くはなかった。
これに対して、ディズニーランドでは褒める文化が浸透していた。その背景には、いくつかの仕掛けがある。
ファイブスターカード」はよく知られている。
オンステージでキャストの素晴らしい行動に対して、それを実際に見た社員が称賛ポイントを記したカードを手渡す。(中略)
このカードは間違いなくモチベーションアップにつながる。私は年に1~2枚しかもらえず、渡される人をうらやましく見ているのがほとんどで、ケチケチしないてもっと積極的に渡せばいいのにと思っていた。
素晴らしいゲスト対応でした。これからも笑顔でゲストにハピネスを届けてください!
そこに書かれていたメッセージを読み返すたびに、今でもあのときの嬉しさがよみがえってくる。

p196-198より

※著者はサラリーマン時代に褒められる褒める経験をしたことがほとんでないと書いていますが、そんな不幸な職場に同情します。ゲーミフィケーションを入れて、もっともっと褒められる褒める場を増やしましょう。


●相手の良い部分に注目できる「スピリット」!

 もうひとつの褒める仕掛けが「スピリット」である。
毎年、秋に2カ月程度の期間行なわれる恒例行事で、キャストの良い点や見習いたい点を所定用紙に記入して提出する。
記入用紙は複写になっており、相手に渡されるのは記入した人の名前が表示さ れていないページである。
この「スピリット」では相手の良い点を認めて、惜しみなく褒める。
私自身も「スピリット」の用紙を記入して実感したことだが、褒める点を探すことは、相手の良い部分にだけフォーカスすることになり、自然とその人との関係も円滑になる。
口頭でなくメッセージが形になって残る点も良い。実際、もらうと嬉しく、天邪鬼な私ですら仕事へのモチベーションがグンとあがる。 この施策など、ほかの会社でも真似して導入してみたらいいのではないか。間 違いなく、社員のモチベーションアップにつながるはずだ。

p198より

※著者も、他の会社での導入を推奨しています。人に褒められる、人を褒めることにより、組織全体の人たちのポジティブループが回っていくのです。

 すばらしい仕掛けの数々でした。まさに優秀なゲーミフィケーションデザイナーの存在が垣間見えます。良い「褒める仕掛け」作りが大事なのです。仕掛けがあれば、人は勝手により良い方向への行動してくれる。

どの職場でも、「人が能動的に行動したくなる仕掛け」をゲーム要素を使って作ってあげることが、従業員みんなのモチベーションUPに繋がります。

(おわり)

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