俺の一次創作を見ろ
僕は昔から、誰かと仲良く、とか、そういうのが大のニガテだった。
物事にはルールがある。ルールは、守らなくてはいけない。それに良いものを作ろうと思ったら、「これくらいでいいか」なんて思っている場合じゃない。ダメなところは全部直さないといけない。
僕はただ、ルールを大事にしたかった。
僕はただ、良いものが作りたかった。良い演奏がしたかった。
でも、僕の周りからは、次第に人がいなくなっていった。
不器用でルールを守るだけの僕 真面目だなんて言われたくない
私は、変な奴だ。
普通に生きているはずなのに、どうにも人の反感を買いやすい。
だから私は、この場所に来た。ここなら、変なことを考えるおバカはいないと思ったからだ。
でもその代わり、悲しい目をした人と出会った。
掲示板 ひとり佇む君の目を はるか昔の誰かに重ねた
ある女の子に声をかけられた。
すごくにぎやかで、正直変な奴と思った。
うまく断れない僕は、彼女に手を引かれるがまま、重い気持ちで廊下を歩いた。
着いた先は講堂だった。もしかすると、ポスターを眺めていたのがバレていたのかもしれない。顔が熱くなった。僕のような人と関われない人間が吹奏楽部なんて、彼女は一体どう思っただろう。
彼が吹奏楽をやりたがっているのは分かった。
だって、すごくうらやましそうだったんだ。
そして、私は知っている。そういう目をする人は、何事も絶対に諦めない、強い人なんだ。
コンサートが終わると、私は一目散に駆け出した。もちろん、彼の手を引いて。
手を引かれて、ある部屋に飛び込んだ。
音楽室の中だった。
夕陽というにはまだ高い、でもきらきらと晴れ上がった空の光が僕らを包んだ。
ねえ、一緒に吹奏楽やろう。
それが、僕らの始まりだった。
君に「まだできる」と言われて 踏み込んだ音楽室はいい匂いがした
吹奏楽部に入部届を出した。
もったいない、といろんな人に言われた。
おれは運動が得意だったし、受験だって首席合格だ。どの運動部からも引っ張りだこだったし、英語部だの歴史研究部だの、勉強系の部活からもたくさん勧誘された。もっとも後者は、女子ウケのいい見た目のせいかもしれないけど。
もったいないと言う周りに、そうかななんて笑い返す。テキトーな返しで喜ばれるのが、なんだかばかみたいだった。
にっこりと 笑って逃げる ずる賢い僕を人は優しいと言う
僕は吹奏楽部で、トランペットを吹くことになった。
同じトランペットには、同級生が2人いた。僕を誘った彼女と、金髪に緑色の目をした美しい男子だ。
自己紹介を終えたあと、僕らは早速練習を始めた。彼女の音、そういえば聴いたことがないな。当然、もうひとりの音も。どんな音なんだろう、なんだかわくわくするなあ……
え?
心を射抜くような、でもどこか弱々しくて哀しそうな、美しい音。
そっと隣を見る。今日初めて会う彼の横顔が、身体が、心が、音が、輝いて見えた。
お陽さまが ボクのものだと 金色に 透かした儚げな君の音
彼は僕とは正反対で、器用でいい加減な性格だった。きれいな言葉で心をつかみ、頑なにならず、面倒なことは上手いこと避ける。
そんな彼に苛立ちつつも、僕はなぜか彼と一緒にいることを選ぶようになった。
自分じゃ決して考えないことをする君。そんな君がちょっとだけ面白くて、でもそれが、今までも彼の隣にいたかのように当たり前になっていった。
おれと彼は、正反対だった。
不器用でお堅い彼をばかにしつつ、でもどこかでモヤモヤしていた。
きっとこいつは、本当に楽しい時にしか笑わないんだろうな。
そんな素直さが大嫌いで、でもちょっといいなと思ったりして。隣にいるのは、なんとなくそれがしっくりきたからなのだった。
何もかも真逆の君と ふたりきり 過ごす時間は 三ツ矢サイダー
次第に僕は、2人に劣等感を抱くようになった。
僕は……俺は、彼女のように誰かを救えない。
俺は、彼のように要領よくものをこなせない。
俺は、2人のように誰かを笑顔にできない。
そんな暗い気持ちが渦巻いて、思わずその場にしゃがみこんだ。
そこには、誰もいないはずだった。
でも、そのはずなのに、気がついたら目の前に何かが見えた。差し出された手、見慣れたスカートとスラックス。顔を上げると、もはや見慣れた2人の顔。
2人の口が、同時に開いた。
あれもダメ、これもダメだと 立ち尽くした先で 皆が「おいでよ」と言う
時は流れ、半袖がちょっぴり肌寒くなった頃。
ぶかぶかだった制服もつんつくてんになって、俺は動きづらいと文句を言った。
大きくなった足には、昨日買い換えた茶色いローファー。そこにはらりと、カーネーションの花びらが落ちた。
新しいローファーで踏みしめた地に 残る色とりどりの足あと
※この物語は、私の部活動経験から着想を得たフィクションです。
気が向いたら本編を書きます。