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苦い泡

3人で飲むのは何度目だろう。

ジョッキに注がれた生ビールは乾杯の一口目から全く量が減っていない。
店先の炭火焼き鳥の炎と煙は、通りの人の空腹をくすぐるだけでなく開放された店内にも容赦なく入り込んでくる。

「失敗は仕方ないがお前も見習えよ。」

上司の目は私をキッと見つめた後に隣の子の顔に移るときには目尻が下がっている。
発注ミスで得意先からクレームを受けた。
発注書作成は上司。得意先に送付を任されたのは私。
たまたま得意先に出向いていた隣の子が収めてくれたおかげで事なきを得た。
でもちょっとまって!数に関して桁が違うとさんざん進言したのに聞いてくれなかったのは上司であるアナタじゃないか!
喉から声が出かかったがビールを一口のみ言葉を押し込んだ。
まあ仕方ない。同僚の隣の子は上司のお気に入り、、、。

「ちょっと待ってください。今回の件は課長が確認してなかったから起きたことですよね。この間も数字がずれているのを聞いてきた子にちゃんと確認してなかったのを聞いていたんです。たしかに彼女は得意先に送ってしまいましたけど課長の責任もありますよね。ミスはきちんと認めてください。」

静かだが真剣な佇まい。

「あ、そうか。すまない。」

バツの悪そうになんとなく謝る上司を見て彼女がさらに一言。

「もうちょっときちんと謝ってあげてください。」

これに

「申し訳ありませんでした、、。ごめんおれちょっと用事思い出したから二人であとは飲んで。」と荷物を一気に抱えて出ていってしまった。
振り返りざま後ろの席のおじさんの足に引っかかりズッこける上司。駆け足で店からいなくなってしまった。

一連の流れを見た後に隣の子と目が合う。

「今日のことは気に入らなかったから言ってやろうと思ってたんだ!さあてお金もおいていってくれたしどんどん飲もう!」
そう言って二人でもう一度乾杯をし直した。

ビールの泡がちょっとだけ苦く感じなくなったのは気のせいじゃない。

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