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経済に関するメモ(10) 【債券・金利】

本メモは経済の基礎的な内容に関するメモです。


1. 債券 21項目

…国・地方公共団体・企業などが投資家からカネを借りるために発行する有価証券

1-1. 経済の見方
…詳しくは【経済】に記載

・為替を見る
→債券・金利を見る
→株式を見る
→コモディティを見る
→デリバティブを見る


1-2. 金利
…借り手がカネを借りたことに対する対価として、貸し手が受け取るカネ
→カネを回してもらって利益が出たので一部を返します
→支払うカネは利息・受け取るカネは利子と表現することもある
→信用創造、信用で支払うたびに経済全体の支払いが増えて経済成長する


1-3. 利率
…1年間で額面に対する金利がどれくらいの割合であるかを表す数値


1-4. 国債
…国がカネを借りるために発行する債券


1-5. 地方債
…地方公共団体がカネを借りるために発行する債券


1-6. 社債
…企業がカネを借りるために発行する債券


1-7. 転換社債、新株予約権付社債
…一定条件で発行企業の株式に転換できる権利が付いた社債

→株式に転換して株価上昇による利益を得られる可能性
❶償還日まで社債として持つ
❷社債として持って社債価格が上昇したら売る、株価の上昇に伴って社債価格も上昇すれば
❸株式に転換して持つ、転換価格は決まっていてそれ以上に株価が上昇すれば


1-8. 利付債
…金利の支払いが行われて満期になると額面金額が償還される債券


1-9. 割引債
…金利相当額を割り引いて発行されて満期になると額面金額が償還される債券


1-10. 公募債
…不特定多数(50名以上)の一般投資家に募集する債券


1-11. 私募債
…特定少数(50名未満)の機関投資家や専門機関のみに限定して募集する債券


1-12. 格付け
…返済や金利支払いがちゃんと行われそうかをランク付けしたもの
→格付けが高いと利回りは低い、格付けが低いと利回りは高い
→S&P、ムーディーズ、フィッチが発表

AAA 5年後デフォルト0.11%
AA 5年後デフォルト0.19%
BBB 5年後デフォルト2.06%

*ジャンク債
BB 5年後デフォルト10.57%
B 5年後デフォルト29.06%


1-13. 応募者利回り
…新規発行債券の購入日〜償還日まで持った場合の利回り、0~T
$${応募者利回りr=\frac{C+\frac{F-P}{T}}{P}}$$


1-14. 最終利回り
…既発行債券の購入日〜償還日まで持った場合の利回り、t~T
$${最終利回りr=\frac{C+\frac{F-P'}{T-t}}{P'}}$$


1-15. 所有期間利回り
…既発行債券の購入日〜売却日まで持った場合の利回り、t~t’
$${所有期間利回りr=\frac{C+\frac{P''-P'}{t'-t}}{P'}}$$


→$${年平均利回りr=\frac{\left(1+\frac{C}{P'}\right)^{t'-t}-1}{t'-t}}$$

→$${割引債利回りr=\left(\frac{P^*}{P'}\right)^{\frac{1}{T-t}}-1}$$


1-16. 金利の期間構造
…債券の各期間と利回りの関係
→どうしてこうなるのか?

❶期待仮説
…長期金利が将来の金利の期待値で決まるという仮説
→長期金利で運用しても短期金利で運用しても結果が同じになるように長期金利が決まる、スポットレートとフォワードレートの関係はこの仮説をもとに考えている

❷流動性選好説
…運用期間が長くなればなるほど金利が変動して損失を被る可能性が大きくなり、長期金利はそのリスク分だけ短期金利よりも高くなるという仮説
→短期金利に上乗せされる分をリスクプレミアムと呼ぶ

❸市場分断仮説
…長期金利と短期金利は別々の市場で各期間の金利に対する資金需給により決定されるという仮説
→長期と短期の資金運用主体が異なっている場合に市場が分断されることになる

→【仮定】
・裁定取引が成立する
・マーケット参加者は金利に関して期待値を考える、期間によってプレミアムを求めない
・マーケット参加者は長期運用・短期運用に柔軟に対応している
→債券価格 P を表すと

$$
P=\frac{C}{1+r}+\frac{C}{(1+r)^2}+…\frac{C}{(1+r)^T}+\frac{F}{(1+r)^T}
$$


1-17. スポットレート r
…現在から見た現在スタートの金利

→t=0からt=jまでのスポットレートを表すと

$$
r_j=(\frac{F}{P})^\frac{1}{j}-1
$$

→t=0からt=j+kまでのスポットレートを表すと

$$
r_{j,k}=(\frac{F}{P})^\frac{1}{j+k}-1
$$


1-18. フォワードレート r
…現在から見た将来スタートの金利

→2 つのスポットレートが分かればフォワードレートを計算できる
→t=jからt=j+kまでのフォワードレートを表すと

$$
r_{j,{j+k}}=\{\frac{(1+r_{j,k})^{j+k}}{(1+r_j)^j}\}^\frac{1}{k}-1
$$


1-19. ex)スポットレート・フォワードレートの計算
→t=0~2、額面100円、価格97円、この時のスポットレートr2は
$${r_2=(\frac{100}{97})^\frac{1}{2}-1=0.0153}$$ 1.53%

→t=0~5、額面100円、価格88円、この時のスポットレートr5は
$${r_5=(\frac{100}{88})^\frac{1}{5}-1=0.0259}$$ 2.59%

→t=2~5 のフォワードレートは
$${r_{2,5}=\{\frac{(1.0259)^5}{(1.0153)^2}\}^\frac{1}{3}-1=0.0330}$$ 3.30%


1-20. ディスカウントファクター d
…債券の現在価値に割り引くために用いる係数、将来の利息収入・償還額をまとめて
→スポットレートの応用
→各期のスポットレートが与えられたとき、クーポン C・額面F・期間 T 年の利付債は、残存期間が1年からT年までのそれぞれの額面 Cの債券と、残存期間がT年の額面Fの債券との組み合わせと考えることができる
→利付債の価格を表すと
$${P=\frac{C}{1+r_1}+\frac{C}{(1+r_2)^2}+…\frac{C}{(1+r_T)^T}+\frac{F}{(1+r_T)^T}}$$
→利付債の額面を1円として考えるとディスカウントファクターとなる

$$
d_j=\frac{1}{(1+r_j)^j}
$$

$$
P=Cd_1+Cd_2+…(C+F)d_T
$$


1-21. ex)スポットレート or ディスカウントファクターからフォワードレートを算出
額面100円、価格96.5円、残存期間3年
額面100円、価格92.3円、残存期間5年

 スポットレートから算出
$${r_3=(\frac{100}{96.5})^\frac{1}{3}-1=0.0119}$$
$${r_5=(\frac{100}{92.3})^\frac{1}{5}-1=0.0162}$$
$${r_{3,5}=\{\frac{(1.0119)^5}{(1.0162)^3}\}^\frac{1}{2}-1=0.0227}$$ 2.27%

ディスカウントファクターから算出
$${d_3=\frac{96.5}{100}}=0.965$$
$${d_5=\frac{92.3}{100}}=0.923$$
$${r_{3,5}=\{\frac{0.965}{0.923}\}^\frac{1}{2}-1=0.923}$$


2. 金利と短期の信用サイクル 11項目

2-1. 金利は炭鉱のカナリア
…経済の危険を知らせるアラーム
→金利で経済サイクルのどこにいるかを知る、高値圏で買わない・安値圏で売らないために
→日次でデータを取得できる、データが改訂されない、個別要因が少ない


2-2. 短期の信用サイクル

❶大サイクル、信用サイクル、10年
…企業の調達金利下がる
→借入拡大
→信用悪化
→調達金利上がる
→借入収縮
→信用回復
→調達金利下がる

→銀行決算で信用サイクルを読み取る、引当金の戻し・金利収入が増える
→保険・投資信託の手数料・M&A 仲介の非金利収入が増える→金利収入が減る・費用削減が増える
→長短金利差拡大により金利収入が増える
→これが連なって長期の信用サイクルができる

❷中サイクル、金融政策サイクル、5年
…景気加速
→物価上がる
→金融引締め・金利上げる
→景気減速
→物価下がる
→金融緩和・金利下げる
→景気加速

❸小サイクル、在庫サイクル、2.5年
…景気によって売れる
→在庫減る
→生産増やす
→売れなくなる
→在庫増える
→生産を減らす
→景気によって売れる

→経済の大きい波は信用サイクル・金融政策サイクルで作られる、
信用サイクルの悪い時期に金融政策サイクル・在庫サイクルの悪い時期が重なると金融危機が起きる


2-3. 経済サイクルはアメリカから始まる
…アメリカが世界最大の消費国・輸入国であるため
→アメリカの景気が良ければ消費されるため輸入も増える、輸出する各国の景気も良くなる、アメリカは景気の発信源であるため景気を判断しやすい
→各国はアメリカの景気をもとに各国の事情を加えて景気を判断、通貨価値・政策・文化など
→アメリカと各国の時差、アメリカの景気が良ければ各国の景気は悪い


2-4. アメリカのカネが世界を回る
…特に新興国、中国・ブラジル・インド・アフリカ・ロシア
→ドルが安定的に流れていれば各国の通貨が流通し経済は安定的に活性化
→アメリカの経済サイクルがドルと各国の通貨とのバランスを崩すことになり徐々に各国に影響を及ぼす
→ドルは血液に似ている、世界は身体・アメリカは心臓、健康であればスムーズに血液が流れる
→1ヵ所でも血管が細くなって血液の流れが悪くなると徐々に体調に異変をもたらす


2-5. WD
…国内ドル+海外ドル、アメリカのマネタリーベース+FRB が保管する各国の中央銀行のアメリカ国債

→アメリカの金融政策・貿易収支が世界のドルの流れを決める

・アメリカの金融緩和・利下げで国内ドルが増加
→アメリカで景気が加速・インフレが発生、貿易赤字拡大で海外ドルが増加
→各国で流動性が向上・実質的な金融緩和
→各国で景気が加速・インフレが発生
→各国の為替介入、ドル高に、ドル外貨準備として中央銀行に集まる、
アメリカに輸出するとドルを売って自国通貨を買うためドル安になってしまい輸出をしても儲からない、各国の経済は不安定なまま
→アメリカの金融引締め・利上げで国内ドルが減少
→アメリカで景気減速・インフレが収まる、貿易赤字縮小で海外ドルが減少
→各国で流動性が低下・実質的な金融引締め
→各国で景気が減速・インフレが収まる


2-6. 政策金利、短期金利
…中央銀行が金融政策の誘導目標とする基準の金利、国の自己評価を表す
→変動要因は金融政策、ほぼこれ
→政策金利の予測、FOMCメンバーの見通し・FFレート金利先物


2-7. 10年物国債金利、長期金利
…国が10年という期間で資金調達するための金利、国の信用評価を表す
→変動要因は金融政策・財政政策(国債の発行量)・景気見通し・潜在成長率

→日本の 10 年金利=アメリカの 10 年金利+ドル円予想 - E / E

・雇用統計と10年物国債金利
❶当日までのトレンドが強ければ当日も継続しやすい
…1ヶ月で0.21%以上上昇→当日上昇する確率は75%、
1ヶ月で0.25%以上下落→当日下落する確率は75%

❷当日の変化が大きければ次回までトレンドが生まれやすい
…12.00%以上上昇→次回まで上昇する確率は83.3%、
6.00%以上下落→次回まで下落する確率は86.7%


2-8. 社債金利
…企業が資金調達するための金利

→社債スプレッド、信用サイクルを見る


2-9. イールドカーブ
…各期間での金利の利回りを表す線
→イールドカーブの形状変化からマーケットが将来の景気・金融政策をどう考えているかを把握
→内部収益率の応用

・順イールド
…短期金利が低く長期金利が高いイールドカーブ

・逆イールド
…短期金利が高く長期金利が低いイールドカーブ


2-10. 長短金利スプレッド
…10年物国債金利 − 政策金利
→国の自己評価と信用評価の差を表す

→ユーロは共同債がないためドイツとそれぞれの長期金利の差を見る
→逆イールドは景気後退のシグナルとなりやすい
→長短金利スプレッドが 1%を下回れば ISM 製造業景況指数が 50 より下になるのを懸念すべき
→長短金利スプレッドがマイナスになってピークをつけてから1年後に景気後退がやってくる可能性


2-11. イールドカーブと中サイクル、金融政策サイクル、5 年
…経済の構造変化が起きたら景気循環による一時的なものかを判断し、金融政策変更のタイミングを捉えることが重要

→売材料は金利観が変われば買材料に回る可能性がある
→当局の判断を考慮せずに自分の判断だけでシナリオ決定するのは致命的、当局の判断を中心とする

❶ベアスティープニング
…短期金利小さい上昇・長期金利大きい上昇・長短金利スプレッド大きい
→カネが下落、カネ余りで株式市場に流れる

・景気加速・金融引締め示唆
…FRB は低金利を維持して景気・インフレを加速

・リスクオン局面
…銀行は融資を拡大、企業は収益性が改善
→株式は上昇、社債スプレッド小さい
→ドル高、各国のドル外貨準備とマネーサプライ増加、各国の景気も加速(→2016 年、2013 年)

・株式のターン
…先進国株式・HY 社債・新興国債
→一般消費財・金融・不動産・鉄鋼・化学・機械
→バリュー・シクリカル・小型株


❶’ツイストスティープニング
…短期金利下落・長期金利上昇、長短金利スプレッド大きい
→目先では利下げが期待されているが将来的には利上げが見込まれている

・景気加速・利下げ・金融引締め示唆
…FRB はちょっとだけ景気・インフレを加速させたいから目先 1 回だけ低金利にする


❷ベアフラットニング
…短期金利大きい上昇・長期金利小さい上昇・長短金利スプレッド小さい
→カネが出回り消費が活発になる、物価が上昇、インフレ

・景気過熱・金融引締め
…FRB は高金利にして景気・インフレを抑制


・レバレッジ飽和局面
…銀行は融資に消極的になる、企業は借入拡大に積極的になる、最後は自社株買い
→株式は上昇、社債スプレッド大きい
→ドル高が止まる(2022年、2018年)

・コモディティのターン
…新興国株式・豪ドル債
→素材・原材料・エネルギー・嗜好


❸ブルフラットニング
…短期金利小さい下落・長期金利大きい下落、長短金利スプレッド小さい
→カネが上昇、カネ不足で株式市場から手にいれる

・景気減速・金融緩和示唆
…FRB は景気・インフレを抑制し過ぎたかもしれないので低金利検討


・リスクオフ局面
…銀行は融資を縮小、企業は収益性が悪化
→株式は下落、社債スプレッド大きい
→ドル安、各国のドル外貨準備とマネーサプライ減少、各国の景気も減速(→2023年これまで)

・現金のターン
…所得生成・先進国外債
→生活必需品・医薬品・公益事業
→グロース株


❸’ツイストフラットニング
…短期金利上昇・長期金利下落、長短金利スプレッド小さい
→目先では利上げが期待されているが将来的には利下げが見込まれている

・景気減速・利上げ・金融緩和示唆
…FRB はちょっとだけ景気・インフレを抑制したいから目先 1 回だけ高金利にする


❹ブルスティープニング
…短期金利大きい下落・長期金利小さい下落、長短金利スプレッド大きい
→カネが出回らなくなり消費が抑制される、物価が下落、インフレ抑制


・景気刺激・金融緩和
→FRB は低金利にして景気・インフレを刺激


・レバレッジ回復局面
…銀行は融資に積極的になる、企業は借入返済に追われる
→株式は下落、社債スプレッド小さい
→ドル安が止まる(→2024 年?2020 年、2008 年)

・債券のターン
…REIT・国内債券
→銀行・電気通信・インフラ・医療・ヘルスケア
→ディフェンシブ・収縮


3. 債券を考えるメモ

…普遍のものではない、その時その時のメモ、思考プロセスが大事

3-1. ハイイールド債に気をつけろ
…アメリカではバリュー株買うくらいならハイイールド債の方が良くない?
→株価が下がってきて信用リスクが上がる、また株価が下がる
→オプション系のリスクパラメーターからハイイールド債のリスクパラメーターへ伝わる
→不況が底を打つとハイイールドが勝つ、企業が生きればいい、企業が生きるためには金があればいい、それなら政府が金融緩和して銀行が企業に金を貸せばいい


3-2. ドル債と日本の金融株
…単体だとリスクがある、組み合わせるとシナジーがありそう
→利回り確保のための債券、日本の債券は投資できないが金利上昇時のメリットを享受、グローバルで金利上昇・金利低下が生じる際のリスクヘッジができる、金利が上がっているアメリカと金利が上がっていない日本のサヤを撮りにいく
→金利上昇による価格下落リスク、ディレーション3-5年の債権ポートフォリオで大きなやられは少なく5%強の金利水準を複数年享受できる、配当利回りが高いため値上がりがなくてもいい

おわりに

ここまでご覧いただき、ありがとうございます。
修正すべき点やご意見などあればXでお声をいただければと思います。
修正の際は、番号を指定して、フォーマットをなんとなく合わせていただけると助かります。

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