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コレクターでシンプリストな私が集めているもの

私はシンプリストだ。

「ミニマリスト」と言えるほどではないけれど、持ちモノは少ないほうだと思う。
決して広くはないクローゼットには、1年分の衣類がすべて収まっている。衣替えの必要がない。
靴は合計6足。
いつも使うお皿は4~5種類。
飽きのこなさそうな、単色でシンプルな持ちモノを選んで手元に置くことがおおい。

モノの少ない、統一感のある、シンプルな部屋は、その空間で暮らす「私」にとって本当に重要なことへ意識を向かわせてくれる力を持っていると思う。

「モノを減らす」という片づけ法は、確実に私の人生を変えてくれた。片づけに追われ、モノに忙殺されていた過去が今や嘘のようだ。

初めて棚卸のような片づけ祭りに着手した時、私はまだ中学2年生だった。
本当に「人生がときめいた」か、あるいは人生ががらりと変わったのかどうか、実は当時、あまり手応えがなかった。
学生には当たる宝くじも、突然降ってくるボーナスも、好ましい人事も何もなかったから。

けれども「モノに追われなくなった」という点で、私の暮らし方そのものを変えたという点で、人生が変わったといえる。それがだんだん分かってきた。


前述したが、モノの少ない部屋は、本当にやるべきことに集中せざるをえない環境を整えてくれる。
シンプルな部屋は視覚的ノイズが少なく、気が散りづらい。
厳選されたモノで、居心地の良い空間がつくられているとなんだかほっとする。そういう空間は見るのも居るのも好きだ。

私には「モノを減らす」ことが、整理された部屋がきっと必要だったのだろう。



同時に、私は生まれついてのコレクターである。
……ということには、実は最近気づいた。

モノをコレクト(集める)ことが大好き。
昔はシルバニアファミリーや、ぷちサンプルシリーズをたくさん集めていた。ガチャポンの景品、ぬいぐるみもたくさんあった。
今も油断すると「あれがほしい、これを全部揃えたい」と思ってしまう。

つまりは、きっとモノが好きなのだ。

お気に入りのモノを集めて、手に触れる範囲に置いておけること。
あるいは集めたモノをどう飾ろうか考えて、ディスプレイする行為そのもの。

もし地震の心配がない土地に暮らせるとしたら真っ先にやりたいのは、どっしりした大きなカップボードを買って、そこに好きなカップやお皿をたくさん並べることだ。


モノを集めることと、シンプルな部屋に住むことを、私の中で両立することは難しい。
視覚優位な私は確実に飾り物で気を散らされるだろうと確信できる。それでもモノへの愛情は捨てられないし、捨てたら心が乾いてしまうと思う。


ふと、気づいた。

たくさんのモノを「モノを増やしたくない」一心で我慢してきたけれど、心が乾ききってはいない。
もしかして私はまだ、心のうるおいを保つ「何か」をコレクションしつづけているのではないか?


改めて部屋を見回す。部屋にはときめくモノを残しているから、必然的にときめくジャンルのモノの数は多い。

私の部屋で大量にとってあるもの。それは棚を埋める本たちだった。


仕事柄、そして趣味として。私は読書が限りなく好きだ。

新しい知識を得られること、知識をアップデートできること。
違う世界に行き違う人生を疑似体験できることがすごく楽しい。

そう、私は物体の代わりに「知識」という目に見えないものをコレクトしていたのである。


気に入った本は購入して手元に置いておきたいし、ちょっと読んでみたい本は図書館で借りられる。
必ずしも、得た知識の分だけ書籍が増えるわけではない。

陶器が好きなら陶器について解説した本を読めば、そのものの謂れや質感を想像することができる。あわよくば綺麗な写真も載っているかもしれない。インテリアもしかり。

実物がなくても、疑似体験で「モノ」に触れられるというわけだ。


それに、知識は滅多に壊れない。

地震が来ても落ちて割れることがないし、使っているうちに破けたり、壊れて機能を果たさなくなることもない。(アップデートさえ怠らなければ)

地震に強い、モノの少ない部屋を維持したい私にとって、またとない蒐集ジャンルだったのだ。


気がついたら、久々に湧きあがっていた物欲が豊かな気持ちとともに収まった。

私はモノが好きだ。
気に入ったモノには触れていたい、手元に置きたい。

だがシンプルな部屋が好きだし、大量のモノを管理しながら暮らすのは少し苦手。

だから代わりに知識を集めて、頭の中に知識の博物館をつくるようなイメージでいる。
誰も全容を見ることはできないけれど、確かに「知識」という蒐集品が収められた巨大施設を。




サムネイルの画像はPixabayからお借りしています

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