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ハワイの星くず 〜祖母の誕生石〜

ふたつ前のnoteには、とてもプライベートなことを書いたのだけれど…

『今日の注目記事』にピックアップしていただいたことから、数日間はたくさんの♡の通知に驚きっぱなしでした。1か月ほど経った今でも、初めましての方に読んでいただけているようです。
皆さま、ありがとうございます!!!


さてさて、先日、特別展『宝石 地球がうみだすキセキ』にて展示されていた とある標本を目にして、祖母の遺品整理のことを思い出さずにはいられなくて…
今回はそのエピソードを。




祖母は写真が好きな人で、それこそ100年分の写真を残していった。
印象的だったのは、祖母の60歳の頃のアルバムだ。ざっくり計算すると1970年代半ば、だいたい昭和50年前後である。私はまだ生まれておらず、父母もまだ若い。


還暦記念にハワイへ旅行したという当時の写真は、薄い赤茶色のフィルターを通したように色褪せて、なんだかいい感じの「古い思い出色」に落ち着いている。
被写体もレトロなものばかりで、自分の知らない時代が垣間見えて面白い。
角ばったデザインの車や、派手すぎないビーチの風景。髪をカールさせ大きなサングラスをかけた祖母。彼女が身につけた水着やサマードレスが、意外にもおしゃれで可愛らしい。


この旅行中に祖母は誕生日を迎えたのだが、現地の名産品だからとすすめられ、ペリドットのネックレスを買った
という。
それは、宝石らしいきらびやかな品物ではない。不定形の小さな原石をつるんと磨いた さざれ石のビーズを、簡単なパーツでつないだような、素朴なネックレスだった。

残念ながら、祖母の一番お気に入りだったとか、お守り的なエピソードはない。
しかし、今はこうして『祖母を想うためのキーアイテム』になってくれている。

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ハワイ島でペリドットが採れることは、古くからよく知られていた。
ハワイ島は、火山活動が起こるホットスポットの上にあるのだが、火山弾に橄欖石(かんらん石、その中で宝石質のものがペリドット)の結晶が含まれていることは、鉱物が好きな人ならよく知っている。マントル上部の成分なんて、ほぼ橄欖石ともいわれている。

また、ハワイ島には「グリーンサンドビーチ」と呼ばれる砂浜もある。真緑ではないものの、たしかに緑がかった色をしている。
この砂の正体も、実は橄欖石なのだ。火山の火口の一部が崩れ落ちてできた海岸で、マグマに含まれていた橄欖石が波間で砕け散り、長い年月をかけて砂浜になったのだろう。


『宝石展』に展示されていたのは、これ。
ペリドットの結晶を含む隕石を、スライスして磨いた標本だ。

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展示のために裏から光を当てる仕組みになっているが、透明感があって美しい黄緑色の部分もあった。

地球すなわち星を作る成分なのだから、宇宙にペリドットが在っても不思議なことではないのだ。


そういえば、ハワイ島は宇宙観測に適した環境ということで、各国の第一級の天文台や望遠鏡が集合している。地球と宇宙を結ぶ場所だ。

ペリドットを知れば、地球が見えてくる。
もっと知れば、宇宙にもつながる。


おばあちゃん、あなたのいる空の向こうには、あなたの誕生石がたくさん、たくさーん、浮かんでいるよ。




(※祖母が購入した当時は分からないが、現在ハワイ島では採石が禁止されているので流通もほぼ無し、現地のお土産として販売されているペリドットはアリゾナ産なのでご注意を。
現地でなく日本の宝石店などでも、特に産地表記がなければアリゾナ産が多い。)




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