見出し画像

失恋からの立ち直り方

“三ヶ月前に別れた元カレのことを今でも思い出し、未練タラタラで辛いです。
どうすればこの失恋から立ち直れますか?”




「失恋」と聞いて思い浮かべるパターンはさまざまです。


好きだった人に告白してフラれた、とある事情で恋人と別れてしまった、信じていた恋人に裏切られて別れを選んだ、想いを寄せていた人にパートナーがいることを知りあきらめた――
胸が張り裂けそうになって、今も生傷が癒えない失恋女子たちはちょっと読み進めてほしい。


失恋は恋を失うと書きますが、本当に失ったのは恋ではありません。
失恋するときに失うのは、未来の私です。
「そこにいたかもしれない私」。


あの人が話すエピソードにおなかを抱えて笑う私。
映画館のエスカレーターで前後の段に乗り、興奮気味のあの人と映画の感想を言い合っている私。
あの人といっしょに砂浜を歩き、これまでとこれからの二人について語っている私。

まぶしいくらいの楽しい思い出、吐き出さずにいられない辛い出来事、日常にあふれている小さな幸せ。
まだ見ぬそれらをあの人と共有し、あの人の隣で人生を歩んでいたかもしれない「未来の自分」をなくしたのです。

そんな「未来の私」が成仏せずに悪霊となって、今の私の肩に乗っかっている状態のことを「失恋」といいます。


失恋後の「私」の成仏については、まず「死の受容」の説明から。

古今東西、「死」についての研究がなされてきたなかで、自分の死を宣告された人がたどる精神プロセスについて臨床研究を重ねた博士がいます。
彼女の名前はキューブラー・ロス。末期患者200人と向き合い、死の受容に関するモデルを唱えた『死ぬ瞬間』という著書は1969年に発表され世界的ベストセラーにななりました。

そのフローは以下の通りです。

1.否認:ショックを受け、うそだ、何かの間違いだと否認する。

2.怒り:病にかかったのがどうして私なのだ!と怒りや憤慨の感情を覚え、周囲にあたるようになる。

3.取り引き:死を回避できないか、命を延ばすことはできないかと神や仏にすがり、現実逃避に近い模索を始める。

4.抑うつ:もう何をしても死から逃れられないのだと悟り、絶望や悲しさに支配される。

5.受容:十分に嘆き悲しんだあと、憔悴してほとんどの感情や執念がなくなり、死(という運命)に対する諦めを覚える。


もちろん失恋と死を前にした患者の精神を比較するなんて乱暴な論は許されないことは承知で、それでも私は、このプロセスには学べるものがあると思っています。

失恋を自覚(=つまり否認を終えた状態だと)すると、暗い気持ちに襲われながら「なんで私じゃダメなの」「どうしてあの子なの」「なぜ今なの」とあらゆる人やものやタイミングに怒りと悔しさを感じるでしょう。

そこで怒り疲れてフッと気持ちが途切れる人も多いですが、「もしかしたらまだ希望はあるんじゃないか」「私が○○したら結果は変わるのでは」と可能性がゼロに近い架空の物語(=“取り引き”)を頭で100万回ほど繰り返します。


それでもまだ想いが捨てきれない人は、「何があってもあの人の隣で笑う私には会えない」とようやく現実を認め、ひたすら深い悲しみに沈みます。

キューブラー・ロスの提唱したモデルにのっとると、その悲しみの果てにあきらめに近い境地「受容」が待っているのですが、多くの失恋女子たちは「取り引き」か「抑うつ」の段階で足踏みします。

「抑うつ」まで進んでしまえば、頭でわかっていることに少しずつ心が追いついてきます。そして、他の感情や日常の忙しさにより、一滴ずつスポイトから水がたれるように、少しずつ悲しみは薄まる。それが受容へとつながります。

一番根深い問題は、「取り引き」の段階に永遠に留まってしまうこと。
そう、失恋に長期間苦しんでいる人はまだ「未来の私をあきらめきれていない」人たちなのです。

一部でも失恋の痛みを否定している間は、「いたかもしれない未来の私」にすがっている状態です。
失ったことを認め、自分にさよならすると腹をくくった人は、悲しみから逃げない。
悲しみを味わい尽くしてやるという意思があります。


過去の想いが強いほど、ちゃんと悲しんで、ちゃんと絶望してからでないと次の恋なんてできません。
泣いて泣いて、浴びるように酒を飲んで、それでもあきらめきれない私たちに必要なのは、葬ること。

失恋前に思い描いていた希望や未来、好きな人と作れたかもしれない思い出をすべて「もう起こらない幻」として葬る作業です。

鬼のように厳しいことを書いてしまったけれど、幸い私たちは生きています。


「あの人の隣にいたかもしれない私」には一生会えないけれど、別の「素敵な人の隣にいるかもしれない私」にはこれから会いに行けるよ。

「恋愛の方程式って東大入試よりムズい」より抜粋
▶︎ttps://onl.bz/mxtdkgM

#note書き初め

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?