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マネージャーがいきいき働く姿を ~日経産業新聞 HRマネジメントを考える 第25回 (2022.06)

日経産業新聞「HRマネジメントを考える」の再録、事情があって少しキャッチアップを急いでいます。バックナンバーのまとめページも作りました。ようやく、第25回目。このテーマは、ここ2年ほど人事として最も重要なテーマではないかと思っているものです。日経ビジネスの特集でも語らせていただきましたし、JMAMのセミナーでも語らせていただきました。なんとか社内でも実践していきたいと思っています。これがうまくいくと、企業全体が元気になり、会社業績もきっと上向くはずです。

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日経産業新聞 HRマネジメントを考える (2022.06)
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マネージャーがいきいき働く姿を
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 ビジネス人生では何度も過渡期 (トランジション)に見舞われます。その度に悩み、苦しみ、奮闘の末にそれを乗り越えていきます。ビ ジネス人生における最大のトランジションは、1人のプレーヤーから管理職として組織をマネジメントする 立場になる瞬間ではないでしょう か。  
 多くの組織では、優秀なプレーヤ ーが抜てきされて組織マネジャーになります。本人は意気揚々と新たな役割に取り組みます。しかし、しばらくして気づくのです。どうやら今 までのやり方ではうまくいかないこ とがたくさんあるようだと。  
 すべての新任組織マネジャーがこ うではないでしょうが、多かれ少な かれ似たような経験をする人はいるはずです。プレーヤーとマネジャーでは、求められる態度も知識も経験も何もかもが違うのです。  
 自動車を運転する人は運転免許を取得しなければなりません。でも、組織マネジャーに免許が求められることはありません。組織が無免許運転を許しているのです。天性の才能で乗り切れる人、実直に自らが学んで乗り切る人も多くいます。しかし、無免許運転の結果として起こる交通事故も少なくありません。  
 職場における交通事故は、業績の低迷、チーム内の不協和音、長時間労働の常態化、メンバーのやる気の低下、メンタルヘルスの問題、マネ ジャー自身の疲弊や燃え尽き症候群というかたちでやってきます。頑張った結果としてこのような事態が起こるようでは、あまりに切ない。  
 人事として必要なのは、組織マネ ジャーの無免許運転をなくすことで す。徹底的な組織マネジャー支援です。昇進選抜の厳格化や従来型の新任管理職研修の実施だけでは足りません。  
 世の中には多種多様なマネジメント理論が存在します。社会科学における理論とは過去の経験を束ねたものだといえます。多くの先輩たちがもがき、苦しみ、真摯にマネジメントという難物にチャレンジしてきたリアルな日々を束ね、整理したものです。マネジメント理論を学ぶことにより、失敗の確率を下げることができるはずです。  
 学んだ理論は意図的に活用することが重要です。自分の職場や自部署のメンバーにあった適切なカスタマ イズは自分にしかできません。試行錯誤の末、経験学習サイクルをまわし、少しずつ自分のマネジメントの型をつくっていくのです。  
 このプロセスで大切なのは対話です。特に同じ立場である他部署の新任組織マネジャーとの対話には意味があると感じています。自分の取り組みを言葉にして、他者の目でのフ ィードバックをもらう。他者の取り組みを聴き、自分の経験と照らし合 わせる。こういった組織内の対話の機会を増やしていくことも、人事の大切な仕事です。  
 人事の提供する研修も、何かを教える場から、良質な対話の機会を提供する場へと軸足を移していきます。組織を超えたマネジャー同士の対話は、うまくいけば組織内の壁をなくしたり、イノベーションの種を創出したりすることにもつながります。そして、組織マネジャーがいきいきと働く姿をみせることこそ、実は中堅若手層に対する最大のリテン ション施策なのです。いきいきと組織マネジャーが働く組織に、彼ら彼 女らは未来を感じるのです。

※写真はTDLから昇る初日の出です。

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