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人と音楽、写真と人、そして人と人。(ii)

コンサートのカメラマンとして活動をはじめてから、これまで出会ってきた人たちの正確な数を計算することは難しい。

言い換えれば、それくらい多くの人との出会いをカメラが、あるいは音楽がつないでくれているということでもある。

以前に(i)でも書いたように、僕はいろいろな人の優しさでカメラマンを続けてきた。優しさをくれるのは、決してきらびやかなステージに立つアーティストばかりではない。

いわゆるオーディエンスとして、会場で踊るお客さんから貰える言葉に救われて、この仕事を続けてこられたことは間違いない。

アーティストのほとんどは、僕が撮った写真をInstagramに投稿する際にタグづけをしてくれる。つまり、僕が撮ったものだということをクレジットしてくれるのだ。これはギャラとして支払われる金銭的なものにプラスされるおまけのようなものだが、僕にとってはアーティストからカメラマンへの尊敬の表れと感じられる。

そのタグを見て、僕をフォローしてくれる方も多い。自分が写っている写真を見つけて、「この写真、くれませんか?」とDMをしてきてくれる人もいる。

僕もお客さんの立場でクラブに遊びに行っていたとき、撮って貰った写真が欲しいと思ったものだ。大抵は手に入らず、どのカメラマンが撮ってくれたのかも分からないので連絡のしようもなかったため、寂しい思いをしたものだった。

そういう経験があるから、頼まれた場合には可能な限り丁寧に返信をしたいと思うし、アーティストがタグづけをしてくれることでそれが可能になると感謝している。

そうして連絡をくれるようになった人の中には、クラブで見かける度に声をかけてくれる人もいる。自分の顔をほとんどInstagramに載せたことがないのに、どうやって見つけてくれているのかいつも謎である。

そういった人たちからもらえる言葉の一つひとつが,僕の写真の原動力になっている。

そんな数ある出会いのうち,今日はひとつのエピソードを紹介したい。

Reiと僕は呼んでいるのだが、チリ人の彼とは昨年はじめにVirtual Riotというドイツ人アーティストが新宿でファンミーティングをひらいた際に知り合った。僕はカメラマンとしてシャッターをきっていたのだが、彼はチリで活動するミュージシャンとして、アニメソングに影響を受けたまたま日本に滞在していた最中にこのファンミーティングがあったのである。

そんな偶然の出会いだったが、帰国後も彼は連絡をことあるごとにくれた。新しいアーティストと仕事をしたとき、彼にとってお気に入りの写真を僕が投稿したとき。あるいは落ち込んでいるときには、これでもかという長文で僕を励ましてくれた。

彼とは一時間ほど一緒にいただけだが、Virtual Riotが彼の投稿に僕をタグづけしてくれたことで、Reiは僕のことを捜し当ててくれたのである。

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写真は、僕にたくさんの出会いを与えてくれている。そして新しい出会いこそが、カメラを続ける原動力になっていることは、何度でも繰り返したい。

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8月末には、あこがれ続けたアムステルダムを旅する。早速多くのオランダ人のアーティスト、カメラマンから、ぜひ会いたいと連絡をもらった。僕がしてきたことを、ほんの少しだけ誇ることがあるとすれば、そんな、あたたかく迎えてくれる友人が世界中にいる、そのことなんじゃないだろうか。

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