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いつか旅に出る日。 (ギリシャ新婚旅行記 ミコノス〜サントリーニ〜ナクソス)

なんの変哲も無い、フツーの夫婦の新婚旅行記を綴りたい。

もともとは2019年7月、ギリシャはキクラデス諸島を2週間滞在している間、友人に見てもらいたくてInstagramにアップしたものの転載である。

ジャズのことじゃないんかい、というツッコミが聞こえてきそうな気もするが、コロナ禍で海外に赴くのが難しい今、旅というものがとても貴重でかけがえのない時間と経験だったなぁ、としみじみと思い、ここに残しておきたくなったのだ。

1年半経って、あらためて読み返してみると11,000字超となかなかのボリュームだが、毎日読んでくれた友人にはあらためて感謝したい。

すでに懐かしいNHK朝ドラや映画のタイトルが出てきたりと、鮮度には欠けるが、旅の記憶のおすそ分けとして楽しんでいただけたら幸いだ。

タイトルは2020年5月号のBRUTUSの『SOMEWHERE, SOMEDAY いつか旅に出る日。』から拝借した。

7/3-7/4 Day0-Day1 新婚旅行前日〜ミコノス島

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いまサントリーニ島にいます。
少し長いですが旅の手帖をアップしていきます。
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延び延びになっていた新婚旅行をいよいよ明日に控える。
挙式から半年以上経ってしまった。
結婚式とは違いコーディネーターも参列者もいないので行き先やらスケジュールやらフワフワとして二転三転四転七転八倒。

お互い今日は荷造りの日。
8時に起きてなつぞらを見る。
ちはるは乳搾りをして笑顔が見え始めるもまだまだ翳りが多くミステリアスだ。

2週間も家を空けるため、余った野菜を極力使い切る。朝も昼も野菜尽くし。
あぁ、羽田空港深夜発は最高かもしれない。ゆっくり起きて身支度できる。

妻とはこれからまる2週間一緒にいることになる。日常よりもずっと長い。
あいのりとかテラスハウスとかこんな感じだろうか。
旅行中に何回ケンカするかね?と話していたが、門仲駅に着いた矢先、エレベーターに乗る乗らないで早速1回目。
とりあえず先に謝る。男女問題はいつも面倒だ。

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[羽田では機嫌が直っていた]

初めて乗るカタール航空は快適上々、機内食も美味い。流石はリッチマンの国。
13時間のフライト中、スパイダーマン・スパイダーバースを2度観た。
スプラトゥーンのような色味とグランドセフトオートのような世界観が印象的なセンス溢れるアニメーション。
ブルックリンの少年マイルス、時空加速装置と悪玉キングピン、異次元のスパイダーマンたちが勢揃いするオススメの作品。

ドーハからミコノス島へのフライトはそれまでとは乗客層がガラリと違ってバカンスに訪れる20代がわんさかしていた。

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ようやくホテルに到着し荷物を預けビーチ沿いを歩き、カラマリとギロとビールで腹と喉を満たす。
ミコノスタウンはとにかく白と青と迷路のような小路の世界。
その後、部屋に戻り仮眠のつもりが5時間くらい寝てしまい気付くと深夜0時半。
真夜中のドンチャンしたタウンを散策し一杯飲んで初日を終えた。

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7/5 Day2 ゲイとビーチとサンバーン

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8時に目が覚める。
昨夜ミニマートで買っておいたヨーグルトをホテルのルーフトップに登って食べる。
妻はレモン味で俺はプレーン。何かの成分が5%と書いてある。固形の度合いが強く食べ応えあり。

今日も眼前には雲ひとつなく真っ青な空と海に白い建物たちが広がる。
風が強くカモメが気持ちよさそうにゆらめく。
昨夜のドンツクした喧騒が嘘のように静かだ。

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[Return to Forever風]

5分ほど歩きカフェlalalaでパンケーキとクラブサンドの朝食をとる。
2人で40€と激しくリゾート地価格だ。
ドロっとしたグリークコーヒーは目覚めに効く。

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今日はビーチに行こうと決めていた。
ミコノスはパラダイスビーチスーパーパラダイスビーチが有名らしい。
もちろんスーパーの方を選ぶ。

バスターミナルは浮き足立ったツーリストたちで賑やかだ。
バスは往復で9€。ロングアンドワインディングロードを進み1つか2つ山を越えたところに、名前の通りのビーチが出現した。
ゴツゴツした岩肌に囲まれた中にブルーオーシャンと隠れ家感のある洗練された雰囲気のビーチがお目見えする。

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スーパーパラダイスビーチはゲイが沢山だ。
皆が皆知り合いであるかのように気さくに挨拶しあっている。
目の前のゲイカップルは気分が高まったのかチュッチュし始めて目のやり場に困るが、こういう時にサングラスは便利だ。

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隣の男女のカップルは2人とも村上春樹の騎士団長殺しを読んでいる。
カバータイトルからすると隣国イタリア人だろう。
俺も隣で村上春樹の遠い太鼓を読んでいるので勝手に親近感が湧く。

少し期待していたヌーディストもいるにはいるが大分おばちゃんばかり。
それでもしっかり見てしまうのは男の性。やはりサングラスは便利だ。

海に浸かり空を見上げると随分近くを飛ぶ飛行機が目に入る。
着陸態勢に向かっているのだろうが、海辺の岩肌に向かって突っ込んでいくような様がLOSTを彷彿とさせる。

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海水は結構冷たい。なのであまり水には入らずにほぼほぼ寝転がっていた。ビールを飲み本を読み寝てビールを飲み本を読みまた寝る。
おかげで火傷かというくらいに足が真っ赤に焼けてしまった。
特に左足はひどく、歩くたびに激痛が走る。

バスターミナル付近のスーパーマーケットでAfter Sun SOSと書いてあるモイスチャーローションを買って早速塗るが鼻水みたいな色だ。
塗って少し経つと粉っぽくなるし。期限切れから何年も経っていると思われる。

エーゲ海の陽射しの強さとスキンケアの大事さ、そして寄る年波を痛感したDay2だった。

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7/6 Day3 手負いのディロス遺跡と感謝の夜

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8時に起床。寝起きの足は特に激痛で左足首はパンパンに腫れている。
鼻水ローションと日焼け止めを塗り、今日はディロス島に向かう。
面積の大半を遺跡で占め、島全体が世界遺産に登録されているというなんとも胸熱な場所。

連日の陽射しの強さから体力を消耗しており、どこにも行かずにのんびりと過ごすか悩むものの、遺跡に行く機会はこのワンチャンスのため2人で頑張る。
旅支度をしながら、前日に買っておいたヨーグルトを朝食代わりに食べる。これまた固形分が強く濃厚なプレーン味。

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船着場にはわずか5分ほどで到着。タウン近くの宿を取っていて本当に良かった。
今朝も海は穏やかだ。コントラストの強い青が映える。
10時に出航。船内よりもデッキ席が人気で多くの人が陣取っている。
我々もデッキに座り風を受けながらミコノス島が離れていく様を眺める。
シンボリックな6つの風車が素敵だ。

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ディロス島到着。すこぶる灼熱。ミコノス島とはちょっと違う。日よけの類は一切無く、心なしか陽炎が見える。
紀元前1世紀に島民が滅ぼされ、1873年に発掘されるまでの間、歴史の舞台から姿を消したという。
劇場では、ライブアットポンペイ遺跡でピンクフロイドが熱演したエコーズを思い浮かべる。

神殿ではイイ感じのツーショットを撮ってもらえて嬉しい。
博物館前には猫たちがたむろしていた。博物館で配ってくれたフリーの水に喉を潤す。
しかしまったくギリシャ神話に馴染みがない。
太陽神アポロン、月の女神アルテミスとか聞いたそばから記憶の舞台から姿を消す。日本に帰ったら阿刀田高を読んで勉強しよう。

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ミコノス島に戻って少し街を散策し、リトルヴェニス沿いのナイスビューイングなVerandaでMythosビールを飲む。
7.5€とここもやはりお高いが歩き回った褒美だ。
妻はお洒落な外人をスケッチするといい、ちょこちょことスナップ写真を撮り溜めている。

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足の腫れを見かねた妻が気を遣ってくれ、早めの夕食を済ませて部屋に戻る。

湿布代わりに水に濡らしたタオルを冷蔵庫で冷やして足にかけてくれた。
妻に聞くと湿布はエビデンスがないらしく西洋では処方していないらしい。
追い湿布(濡れたティッシュを冷凍庫に入れて少しカチンコチンになったやつ)も作って患部に貼ってくれた。

カチンコチンぺたん。カチンコチンぺたん。
何度も何度も献身的に介護してくれる妻の姿に涙が溢れた3日目の夜。

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[介護中の1枚]

7/7 Day4 ミコノス島からサントリーニ島へ

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足の腫れは大分引いてきた。
ロフトのベッドに洗濯機やキッチンのあるアパートメントを去る。
生活感のある良い宿だった。
ミコノスの朝の海を横目にガラガラとスーツケースを引いてバスに乗り込み10分ほどで港に到着。

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到着時間を少し過ぎた頃に巨大高速船 SEA JETSが颯爽と登場。
2時間のサントリーニ島への船旅だ。

我々の席にすでに人が座っていた。
係員に尋ねたがどこに座ってもOKだそうだ。指定席の意味がない。

船内で飲むカプチーノは泡とコーヒーがまったく混ざっていない代物だがなかなか美味しい。(後で知るがこれはフラッペというインスタントコーヒーを泡立てたものでギリシャでは有名だった)
途中にナクソス島を経由し、SEA JETS号はグングンと進む。

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サントリーニ島に到着。港に着くや目に飛び込むのは断崖絶壁の岩々。
送迎の呼び込みの人々とスーツケースを引いた大勢の乗客で賑やかだ。

バスに乗る。見えるのは赤茶けた大地と煤けた自動車。ところどころにピンクの花。
空は今日も変わらず青い。雲はどこかに消えてしまったのか。
そんな中、Yahoo天気から「大田区に雨雲接近中」の通知が届き、少しだけ梅雨の日本を思い出す。

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無事イアに着きバスを降りると屈強ガイのリッキーがホテルまでお出迎え。
丸太のような腕でスーツケースをひょいと肩に担ぎスイスイと歩く様を見て、やはり漢は腕っぷしだと感じる。

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Virginia'sCaveVillasは洞窟のホテルだ。この旅1番の奮発。
ジョアンジルベルトを偲んで三月の水を聴きながらジャグジーに浸かる。

ウェルカムワインにフルーツをいただきながら真っ青な空と紺色の静かな海を眺める。定期船やクルーザーがぽつぽつと浮かぶ。
何もしないをすることができる最高のプライベート空間と贅沢な時間。

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陽射しが和らいだ頃に、田舎風の落ち着いたレストランCandouniでブズーキとガットギターの演奏を聴きながら夕食をとる。
イアのサンセットを駆け込みで眺め、スーパーマーケットで仕入れるが、またすぐに部屋に吸い寄せられてDay4を終える。

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7/8 Day5 あるイアの一日

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眩しくて目が覚めるとまだ5時半。
玄関の非常灯が点いておりどうやらまた停電したようだ。

昨日も洞窟部屋に感激してキャッキャしていたら停電した。
何やらわからず困ってしまい、リッキーに「Fix it, right now. (すぐ直せ、この野郎)」と間違えて高圧的なLINEを送ってしまったのは恥ずかしい思い出。
英語力の無さよ。このエリアはぼちぼち停電するらしい。
完璧な絶望が存在しないように完璧なホテルも存在しないのか。

8:30 二度寝から覚めて朝食に出るために着替える。
旅先でしたかったことの1つ、上下白のコーディネートで2人とも揃える。
外はすでにジリジリと陽射しが強い。

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Vitrinではチョコレートと苺のクレープを食べた。バナナが良かったがすでに売り切れとのこと。
白い服に飛ばさないように気をつけながら濃厚なチョコレートとこれまた濃厚なグリークコーヒーでシャキッとする。
ウェイトレスは健康的グラマラス。

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その後夕方まで、部屋ジャグジー→プール&バー→また部屋ジャグジーとひたすら水の中へ。
これだけ水に入っていると、湯治しに来た坂本龍馬とおりょうの気分になってくる。
妻はひたすらLINEマンガでセーラームーンを懐かしがって読み耽っている。
この先どんなお仕置きが待っているのだろう。

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18時 前日にたまたま発見し、予約しておいたMelitiniで夕食をとる。
トラディショナルなギリシャのタパスでとても美味しい。
特にタコのグリルはねっとり溶けるようなほろほろ溶けるような食感がたまらない大ヒットの逸品だった。
表現できないけどほんとにたまらん。炭火焼してハーブとオリーブオイルかけてるだけっぽいが一体何をしているのだろう。

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[伝わらないが魔法の食感のタコ]

西日を浴び過ぎてバテたので水分をたっぷりと摂りつつイアの日の入りを見にビザンチン城跡まで散歩する。

ギリシャは日の出(6:09)、日の入り(20:39)と日本よりも1時間半ほど遅く、日没前の2時間くらいまではずーっと真っ昼間のような陽射しだ。
店はどこも0時過ぎまで開いていて、1日がめちゃくちゃ長い。
15時〜18時くらいは休憩の店も多く、そのあたりに昼寝したくなったのは体内リズムからして必然だったのだ。

道すがら「平日だから観光客が少ない」「いや別にバカンスシーズンだから変わってない」としょうもないことで言い争いになりかける。
人間やはり疲れが溜まったり余裕がないと気が立つのだろう。

その後またまた部屋に吸い込まれジャグジーにズブズブと沈没してDay5は過ぎてゆく。

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7/9 Day6 イア、フィラ、センチメンタルな夜

今朝もVitrinで朝食。名店である。ウェイトレスは今日もグラマラス。
俺はハムエッグとフェタチーズ(山羊)のクレープ。妻はグリークサラダ風のクレープ。
2人ともすっかりフェタチーズが好きになってしまった。それとリンゴとナッツ、ハチミツのヨーグルト。今日はバナナを仕入れてくれていて嬉しい。バナナの有無で幸せ感が違う。
妻にカチャカチャ五月蝿いとテーブルマナーについて怒られる。これ見よがしにそーっとナイフとフォークを動かす。

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近くで子猫が屋根から降りられずミャーミャーとずっと鳴いている。
様子を見に行ってジャンプできるように下から両手を広げたが向こうに行ってしまった。

ミニマーケットでネクタリンを2つ買い、来た道を戻る。
さっきの子猫はどうやってか屋根から降り、準備中のレストラン前でまだ鳴いていたが、若いサングラスの兄ちゃんに水を掛けられてミャーと一目散に逃げていった。

部屋に戻ってジャグジーに浸かり、洗面所で洗濯をして軒先に干す。暮らしの時間が流れる。

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12時過ぎた頃からは別行動を開始。妻は洞窟部屋での贅沢な時間を過ごし、俺は島中心部のフィラに向かう。
束の間の一人旅。いつでも連絡が取り合えるSIMは本当に便利だ。

バス待ちは長蛇の列。灼熱。
間違えて絶景とは逆サイドの席に座り、残念な25分の車窓を眺める。
岩と草、時々家。

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フィラに到着。ここも灼熱。
バスステーションから市街地にあてもなく歩く。
目に留まったタベルナに入るがイマイチの味。旅先の貴重な一食をロスした。
この街は渋谷センター街のような雰囲気。とにかく暑い。汗だくになって歩く。
ケーブルカーで港まで降りて、すぐまた登り、冷房のよく効いたダサい土産屋で涼む。

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妻からLINEが届く。部屋で漫画を読みワインとフルーツとチーズを楽しむ写真。羨ましい。帰りに水1本のおつかいを頼まれる。

15:55 イアに戻るバスに乗る。今度はちゃんと絶景サイドをキープし、海と葡萄畑が一面に広がる様を堪能する。

最後のサントリーニの夜、妻と一緒に昨日に続きMelitiniまで歩く。
手前の角を左に入り、店が目に入ったところでテラス席から昨日の店員さんが手を振ってくれる。嬉し過ぎる。
意気揚々と入口に着くと今日は予約で満席とのこと。
悲し過ぎる。幻のタコのグリルよ。

気を取り直して眺めの良いSkalaで夕食をとる。
看板猫に誘われて入ったが、本場のタラモサラダとイカのグリルが美味くて少しお高いけど素敵なレストランだった。

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夜の街歩きを精一杯楽しんで部屋に戻る。
妻は2軒目で飲んだ気の抜けたラムコークで仕上がりすぐに寝てしまった。
俺もベッドに入るものの、最後の洞窟部屋への名残惜しさにまったく眠れず、ワインを無理矢理飲み干してDay6の夜を過ごす。

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7/10 Day7 さよならサントリーニ、ナクソスへ

この日はとにかくサントリーニ島ロスが激しく、ナクソス島に入った時はかなり虚ろな気持ちだった。写真を見返しながら記憶を辿る。
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8時起床。今朝もいつものVitrinへ。3日目にもなればいつものと言ってもよいだろう。
スウィートなクレープとグラマラスなウェイトレスともお別れ(Αντίο)だ。

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部屋でスーツケースに荷物を仕舞い込むがそれはすぐに終わる。
スーツケースが2つ並んだ部屋を見渡すとまたひたすら感傷的な気持ちになり泣けてくる。

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11:30 チェックアウトの予定だがリッキーがいつまで経っても現れない。
泣きの1ジャグジー(足湯)に浸かる。その後ソファーで遠い太鼓を読む。
さよなら(Αντίο)、洞窟部屋と素敵な時間よ。

結局リッキーは13時に迎えに来た。帰りもひょいとスーツケース担いでスイスイと歩く。
別れ際に丸太のような腕と固い握手を交わした。

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1時間弱バスに揺られ港に向かう。
BlueStarFerriesで2時間の船旅だ。いざナクソス島へ。
船は客船クラスのデカさで快適。7Fのデッキでサントリーニ島の遠景を眺めながらホロリとする。

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18時ごろナクソス島に到着。この旅の終着点。これから4泊をここで過ごす。
地球の歩き方で見たイメージ通りの素朴な港町だ。

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お出迎えタクシーに乗ってホテルへ。
車中、運転手と片言の英語で会話を交わす。
途中すれ違うオバさんと運転手が挨拶をした。
知り合い?と聞くと息子の名付け親とのこと。重要人物だ。
息子の名前(確かスタニアス)の由来を尋ねると、運転手のジイさんの名前とのこと。名付け親の意味があまり無い。

荷解きをして旧市街を少しぶらつきレストランAntamomaへ。
妻の同僚たちはギリシャ経験者が沢山いるのだが、皆大絶賛のレストランだ。
ズッキーニのコロッケと、ラム煮込みとクリームのリゾットが絶品。
酒の消費の48%がワインというのがうなづける気候と料理だ。

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ここでも停電を経験する。
1度目は数分、復旧後すぐに2度目で15分くらい。長い。
が、みんな慣れた様子でスマホのライトを照らしたり照らさなかったりしてのんびりと会話を楽しんでいる。

食事の時間を大事にし、特に夕食には時間を掛けるという事前知識を目の当たりにした瞬間だった。こんなもんでいいんだよな。
デザートを頼むと、停電のお詫びとしてケーキをサービスしてくれた。

少し移動疲れの身体とマイペンライの心でDay7を終える。

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7/11-7/12 Day8-Day9 ドライビング ナクソス

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朝起き抜けに洗濯をしてベランダに干す。
速乾タオルは、濡れた衣類をくるんで足踏みするだけで脱水機代わりになって便利だ。

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Kitronで朝食を。洒落たお店でとても居心地良し。
サンドイッチが美味(Νόστιμο)である。ここもオススメされただけあって名店である。
店名はナクソスの特産品であるレモンに似た柑橘系果物のリキュールからきているとのこと。内陸部のハルキ村で作っているそうだ。

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食後、レンタカーを借りに行く。
ナクソスはキクラデス諸島最大の島。
ここに来るまではノープランで、気ままにのんびりと過ごすのも悪くないと思ったのだが、内陸部の村々やビーチを求めて走り回りたくなったのだ。

どこのレンタカー屋にするか妻と小競り合いしつつ妻の選んだほうへ。
店のおばちゃんは、1日45€で貸すよと。まごまごしてたらすぐに40€にまけてくれた。
もう一声粘るも無理そうだったので別の店へ。
こっちの店は混んでおり、聞くと65€とえらく高くて諦める。
すぐさま元の店のおばちゃんに泣きつき、2日間借りた。
満タン返ししなくていいとのこと。というかガソリンはわずかしか残ってない。ユルい。

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左ハンドル右車線。センターラインはずっと左。左折は対向車優先。全てが逆の鏡の世界。
逆走してしまうお爺ちゃんの気持ちが少しだけわかる。
不慣れなラウンドアバウトにもビビる。何度もワイパーを動かす。

Prokopiosビーチ(ヨーロッパで五本の指に入るとオススメされた)で軽く海に入る。水が冷たいが美しい。

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途中で燃料補給し内陸部へ。
ワイルドな山々とオリーブ畑が広がる景色はただただ壮観だ。野良ヤギがちらほら見える。

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ハルキ村に到着。ビザンチン教会への道を歩く。
完全に中世にタイムリープしてしまったようだ。時をかけるおっさん。ドラクエのテーマが激しく脳内再生する。かつてこの村には勇者ハルキがおったそうな。
古代/現代/中世と時空を超えたクロノトリガーの世界。

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さらに内陸部に進み、小さな村アピラントスへ。
ここは大理石とテキスタイルの街。クッパ城がそびえる。
長野育ちの妻は山が多くてご機嫌だ。

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帰り途中は窯元に寄り、おそらくナクソス最大のスーパー(SPAR)で大量の土産を購入する。
すっかり遅くなり、ナクソスタウンに戻るも駐車場探しに難儀し、2人とも空腹と疲れでピリピリとし口数が少ない。

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翌日は11:30と遅めの起床。よく寝た。毎日が快晴。
ルーフトップで買っておいたヨーグルトを食べ、ギロピタの美味い店で朝飯を済ます。

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駐車場に向かう途中で最終日の船のチケットを引き換える。
妻が手続きしている間、俺は看板猫に癒される。
めちゃくちゃ懐っこくしゃがんだ途端に膝に頭をグリグリしてくる。
かわええ。ニャクソスと命名する。

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[ニャクソス]

ナクソスで不足気味だった猫成分を補給してドライブに出る。
海っぺりに一晩停めておいただけで車はすっかり砂まみれだ。
信じられないくらい汚い車が多かったのにも納得。
ウォッシャー液が入ってなかったので2人でせっせこ窓を拭く。

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内陸部はデメテル神殿でアルゼンチンの夫妻にツーショットを撮ってもらい、お次は海を求めてプラカビーチへ。のどかな海。
シャレオツなバーTortugaで耐え切れずにアルファビールを飲む。
日焼けはすっかり落ち着いて脱皮が始まっている。

人間、海と山どちらかだけでは生きられずバランスを保ちたくなるようだ。

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夕方、車を返却する。最初は四輪バギーを借りるかどうか悩んだが車にして大正解。
屋根が無ければ、暑くて1時間と持たなかっただろう。おばちゃんありがとう。

西日が強い時間帯は部屋に戻り洗濯したりゴロゴロする。
妻はLINEマンガでラッパーに噛まれたらラッパーになる漫画を読み耽る。無料期間を逃したくないそうだ。

サントリーニ島ロスがすっかりどこかへ行ってしまった2日間のドライブだった。

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7/13 Day10 ナクソス ラストスタンド

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明日にはいよいよギリシャを発つ。噛みしめるようにしてナクソスの1日を過ごす。
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閑話休題。
ギリシャでやり残した3つのこと。

1つ目は髪を切ること。クールな髪型にしてくれとおまかせしたかったのだが圧倒的な語学力不足に一抹の不安を感じて諦める。
2つ目はランニングすること。宿命的に村上春樹の影響である。2人ともシューズとウェアを持ってきたのだが灼熱過ぎて諦める。
3つ目はこの日妻と話していて思いついたこと。
道端のそこかしこで出会う猫々にちゅーるを与えて、いなば風の動画を作りたかったのだ。
だがちゅーるがないので諦める。
ちゅーるは国境を越えることを証明したかったのだが。これは是非とも誰かに実現してほしい。
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10:30起床。今日もKitronへ。海辺の席でサンドイッチをいただく。
腹ごなしにアポロ神殿まで歩いて記念撮影をしまくる。ギリシャの至るところにアポロンに捧げた神殿があるようだ。平将門の首塚のようなものか。

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猫成分を補給しに船のチケット屋に寄ったが、ニャクソスはいなかった。

神殿付近のビーチでぼってりとしたおじさまおばさまたちがプカプカ浮かんだり潜ったりする様を見て、我々も聖ジョージアビーチへ。
ここは超遠浅の海。水温もぬるくて助かる。
妻に平泳ぎの正しい泳法を習う。腕の使い方はわかったが足が難しい。
最後にしっかりと海水浴を楽しめた。

疲れた身体をビーチ沿いのカフェで休める。
BGMのコールドプレイのリミックスがベタベタな曲ばかりでアガる。
Shazamしたが誰のリミックスかわからなかった。

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19時を少し過ぎた頃にAntamomaへ。
ベストオブこの旅の料理店。最後の晩餐はここしかないと満場一致しての再訪だ。

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妻は気合を入れてミコノス島で買ったワンピースに着替えている。
誰そ彼のマジックアワーに味わう、伝統と創作が複雑に入り混じった繊細で丁寧な料理の数々に大満足。
ワインは白と赤を飲み、締めにはマスティカという蒸留酒を振舞ってもらい、旅の思い出話はコロコロと転がりながらリズムよく弾んだ。

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21:50 すっかり陽も落ちた頃、ヴェネツィアン要塞(古城)の広場へ。
すうっと流れる風を感じながら、星空と虫の音に包まれて、ポツンと一つライトの下で聴くピアノ独演会。
マエストロによるチャイコフスキーは感動的に深いところまで沁み渡り、旅の終わりが近づくのを惜しみながらホロホロと涙を浮かべて鑑賞した。

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余韻に浸りながら少し歩く。
時計は0時を過ぎた頃だがギリシャの夜は賑やかだ。
港の広場のベンチに腰掛ける。今日もサッカーをして遊ぶ少年たちを眺めつつ最後の夜は過ぎてゆく。

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[0時過ぎでも遊んでいた少年たち]


7/14-7/15 Day11-12 ドーハ、出国、Aさんのこと

ドーハのホテルで最後の旅行記を書いている。
柱谷が両手で顔を覆って号泣し、ラモスが座り込んでうなだれたあのドーハだ。
カタール航空はドーハで8時間以上のトランジットがあると、いわゆるアゴアシマクラというやつを大盤振舞いしてくれるのだ。流石はリッチマンの国。
キングサイズのベッドとルームサービスで身体を休め、早朝の羽田行きを迎える。
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8時 Kitronで朝食を。ナクソスの朝はいつもここから始まった。
早起きして最後にここに来れて幸せだ。
自然豊かで素朴な港町ナクソスよ、すっかり大好きになったよ。
さぁあばよ(Αντίο)の時間だ。

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12時 ミコノス空港に到着。ナクソスからミコノスまでの船は2度大揺れして船酔いしかけた。
この旅はミコノスに始まりミコノスに終わる。
到着して景色を見渡すとすでに懐かしい気持ちになる。
フライトまで時間に余裕があるので空港向かいのスーパーマーケットへ。

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店内は天井が高く、落とし気味の照明でネオンが光る。
妙にシャレオツな空間と内装だ。ところどころに描かれたイラストは少し抜けていて楽しい。

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お菓子コーナーのすぐ脇にはDJがいる。
黙々とスピンしている。見る限りいっぱしのDJブースである。
カメラを向けるとドヤ顔でサムズアップ。
いったいどういうことなのだろう。昼の12時過ぎのスーパーである。

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しかも曲のセンスが凄く良い。ミコノスタウンの夜の大味な感じよりもずっと良い。
123でチルアウト。少なくとも妻はノリノリである。
常連客はその辺の棚にあるワインとかチートスを片手に踊るのだろうか。

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思わず飲みたい気分になってしまいアルファビールを買う。
が、店内では飲めず栓抜きも持ってないのでレジで開けてもらい、入り口で飲み干した。

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パーリーアイランド ミコノスの底知れなさを最後に見せつけられた気分だ。
さようならミコノス、さようなら青と白のギリシャよ。また来るよ。
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最後にAさんのことについて触れたい。

妻の同僚で俺とは同い年のご近所さんの友達である。世話焼きの超良い人なのだ。
自他ともに認めるギリシャ通で、新婚旅行先をギリシャに決めるきっかけをくれた。

バカンスシーズン限定のおトクな航空路線に、ホテルや空港、港までの送迎バスやタクシー、それに船の手配などあらゆることに関して相談に乗ってもらったり調整をしてくれ、おまけに値引きまで交渉してくれたのだ。
それもギリシャ語でだ。

交渉のメールを転送してもらったが完全に文字化けにしか見えなかった。

旅の道中も絶妙なタイミングで美味い店やコラムのような豆知識情報、DJのいるスーパーなどをLINEで送ってくれて、6時間の時差を感じさせず、まるでいつでも我々の肩の上にいるティンカーベルのようであった。

決してアクセスが良いとはいえないキクラデス諸島の周遊は、ティンカーベルAさんがいなければトラブルだらけだったはずだし、まずもってナクソス島に出会うことはなかっただろう。

すごく心強かったし、心の底から感謝している。Σας ευχαριστώ!

そうそう、幻のようなタコの食感の秘密についてもティンカーベルAさんが教えてくれたので紹介しておく。

「ギリシャのたこの食感が違うのは、たこを獲った直後に漁師がビターンビターンと岩に打ち付けて叩き内部の繊維をこわし、そのあと時間をかけて干すから柔らかくなるらしいよ。」

-おしまい-

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