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日本学術会議 任命拒否問題

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2020年9月、菅義偉内閣総理大臣(当時)が、日本学術会議が推薦した会員候補のうち6名を任命しなかった問題を機に、関係する情報整理とJASTJ会員の意見表明のために立ち上げました。
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記事一覧

【学術会議_法改正問題】学術会議改革で開かれた議論を

【学術会議_法改正問題】学術会議改革で開かれた議論を

2023年4月21日
日本科学技術ジャーナリスト会議 事務局長 滝順一

 政府は日本学術会議法改正案の今国会提出を見送った。改正案の提出をいったん思い止まるよう求めた学術会議の勧告を受けた格好だ。後藤茂之・経済再生相が言うように「学術界と政府との決定的な決裂を招くおそれ」があった。話し合う時間ができた。両者が「開かれた協議」のテーブルにつくことを期待したい。

 勧告は政府に対し「改正案の今国会

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【学術会議_法改正問題】政府との対話を望む学術会議

【学術会議_法改正問題】政府との対話を望む学術会議

2023年4月19日
日本科学技術ジャーナリスト会議 事務局長 滝順一

 日本学術会議は4月17、18日に総会を開き政府への勧告を決議した。日本学術会議法改正案の今国会への提出を「いったん思い止まり、日本学術会議のあり方を含め、さらに日本の学術体制全般にわたる包括的・抜本的な見直しを行うための開かれた協議の場を設けるべき」と政府に対応を求めた。合わせて改正法についての学術会議の考え方を説明する国

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【日本学術会議_法改正問題】 日本学術会議をめぐる動き

【日本学術会議_法改正問題】 日本学術会議をめぐる動き

2023年4月5日

 2020年に当時の菅総理が学術会議会員の候補者のうち、6人を任命を理由を明らかにしないまま任命しなかったことで大きな話題になった「任命拒否」から2年あまり。
 学術会議は今も6人の任命を求めていますが、政府はすでに「手続き終了」として学術会議の「改革」に論点を移しています。その後の経緯について簡単にまとめます。

 改革案については、2020年12月に自民党PTが改革案を示

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【日本学術会議_法改正問題】内閣府担当官が会議側に法改正の検討状況を説明

【日本学術会議_法改正問題】内閣府担当官が会議側に法改正の検討状況を説明

2023年4月5日
日本科学技術ジャーナリスト会議 事務局長    滝順一

日本学術会議の幹事会が4月5日午前にオンライン開催され、政府が国会提出を目指している学術会議改革法案の検討状況について内閣府の担当官が説明した。梶田隆章会長ら学術会議幹部からはアカデミアとの対話なき法改正に重ねて懸念が示され、4月17、18日の臨時総会で具体的な法文案を示すよう求めた。

内閣府の担当官が改革法案に

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【日本学術会議 任命拒否問題】 全米アカデミーズが価値の高い報告書を作成するための工夫

【日本学術会議 任命拒否問題】 全米アカデミーズが価値の高い報告書を作成するための工夫

 アメリカの3つの組織(NAS、NAE、NAM)からなるアカデミーである、全米アカデミーズでは、科学的に質の高い、不偏・不党の独立した提言を行い、調査プロセスのすべてのステップでチェックとバランスを適用するために、以下のような厳格な決まりがあります。

以下は全米アカデミーズのウェブサイトにあるOur Study Processの全訳です(2020年10月12日閲覧)。
(写真はNational

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【日本学術会議 任命拒否問題】 主要国のアカデミー(設立年順)

 アカデミーの設立の歴史は古く、17世期に遡ります。
 古いのはヨーロッパ、新しいのはアメリカとアジアです。
 地域限定であったり文系・理系に分けたりと複数のアカデミーが存在する国もいくつか見られます。

1603年 イタリア リンチェイ国立アカデミー(Academia Nazionale dei Lincei)
1660年 イギリス 英国王立協会(The Royal Society)
1666年

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【日本学術会議 任命拒否問題】 海外のアカデミーについての情報整理

 アカデミー(学術に関する権威のある団体)は各国に存在します。一流の科学者で構成され、科学を通して社会に寄与・貢献する、政府とは独立した科学者コミュニティの最高機関として社会の中に定着し、国民に認知されています。

 このコーナーでは、海外のアカデミーの状況についてまとめていきます。
 おもに『各国アカデミー等調査報告書』(2003年、日本学術会議)、『主要国のアカデミーの比較』(2001年、内閣

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【日本学術会議 任命拒否問題】 海外の学術アカデミーに関するまとまった資料2つ

 代表的な基礎資料には次の2つがあります。内閣府による『主要国のアカデミーの比較』と日本学術会議による『各国アカデミー等調査報告書』です。この2つの違いを経緯を含めて紹介します。

 2000年(平成12)12月、日本学術会議主催で緊急シンポジウム「21世紀の科学アカデミーをデザインする」が開催されました。
 このシンポジウムは、翌2001年に新たに内閣府に設置される総合科学技術会議に「日本学術会

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【日本学術会議 任命拒否問題】 各国アカデミーの設置の理由と形態

 ほとんどのアカデミーが、王室勅令、大統領勅令、大臣令、議会令、法令、定款のいずれかにより設立されています。このことによって、その国の学術界の中で高い地位に位置づけられていると理解できます。

 一方で、それぞれの組織の設置形態は、欧米とアジア諸国とで明らかな差異があります。欧米各国のアカデミーは、おおむね非営利団体・法人などの非政府組織です。対照的に、日本をはじめアジア諸国の大半は政府機関のなか

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【日本学術会議 任命拒否問題】 各国アカデミーの会員の決め方

 海外のアカデミーでは、会員をどのように決めているのでしょうか?

 会員の選出方法は、海外のほとんど全てのアカデミーにおいて、そのアカデミー内の会員により推薦・選出される方式(co-optation)を採用しています。

 理由は、アカデミー会員は学術上高い評価を得た者で構成されているべきであり、会員選出の判断はアカデミー会員のみによって可能であるという基本的な考え方があるためです。

【日本学術会議 任命拒否問題】 各国アカデミーの会員の任期

会員の任期は、会長・理事などに3〜4年程度の任期制をとる機関がある一方で、普通会員を終身か70歳程度の定年制をとる機関が多いことがわかりました。
 
○終身会員制のアカデミー
全米科学アカデミー、イギリス王立協会、ブリティッシュアカデミー、フランス科学アカデミー、ドイツ科学・人文科学アカデミー連合(65〜70才で義務免除など)、ベルリンーブランデンベルグ科学・人文科学アカデミー(68才で義務免除)

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【日本学術会議 任命拒否問題】 各国アカデミーの会員人数と外国人会員

全米アカデミーズの会員数は群を抜いて多く、いずれも数千人規模です。他の国のアカデミーの正会員数は、ほぼ数百から一千人の規模です。

多くの欧米諸国のアカデミーは、自国内はもちろん、国際的にも貢献するべき組織として、会員数の20%からほぼ同数程度の外国人会員・会友を有しています。
※日本学術会議には外国人会員・会友はいません。

○主要アカデミーの会員数は以下の通り(2001年調査時の人数『主要国の

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