【学術会議_法改正問題】学術会議改革で開かれた議論を
2023年4月21日
日本科学技術ジャーナリスト会議 事務局長 滝順一
政府は日本学術会議法改正案の今国会提出を見送った。改正案の提出をいったん思い止まるよう求めた学術会議の勧告を受けた格好だ。後藤茂之・経済再生相が言うように「学術界と政府との決定的な決裂を招くおそれ」があった。話し合う時間ができた。両者が「開かれた協議」のテーブルにつくことを期待したい。
勧告は政府に対し「改正案の今国会への提出をいったん思いとどまり、日本学術会議のあり方を含め、さらに日本の学術体制全般にわたる包括的・抜本的な見直しを行うための開かれた協議の場を設けるべき」と求めた。
学術会議改革を担当する後藤大臣は20日、岸田文雄首相と会談し今国会への法案提出を見送った。学術会議の梶田隆章会長は「歓迎する」とした上で、学術界と政府との信頼関係の回復と「開かれた協議の場」の設定を改めて求めた。
学術会議はこれまで、選考諮問委員会の設置など改正法案の中身を問題視すると同時に、法案が学術界の意見を聞くことなく一方的にまとめられたことに強く反発してきた。改革に関し対等な立場での話し合いが持たれないこと自体が学術会議の独立性を侵しているとみてきた。
報道によれば、政府・与党には学術会議の民間法人化も視野に入れた改革を唱える声があるようだ。民間法人化は選択肢のひとつといえる。しかしまず学術界との地道な対話が先だ。
学術会議側も、政府の法案を拒む理由が会議の「保身」ではなく、日本の学術、科学研究力の向上、さらには国民生活にどのようなプラスになりうるのかをていねいに国民に示していく努力が必要だろう。
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