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少子高齢化と漆産業

先日、少子高齢化についてのオンライン勉強会に出たのですが(伝統工芸の業界でも大きな課題です)、その中で取り上げられた韓国の2023年の出生率が0.72で過去最低を更新したというデータは衝撃的でした。もう1を切っているどころか0.7…

日本も1.2くらいと言われていて、1を切るのも時間の問題という気がします。

韓国でもそんな状況だったのかと初めて知った次第ですが、韓国ではこれを危機的に捉えて関係省庁が合同で「2024年社会政策方向」という政策を取りまとめています。それを読んでいくと子育て給付とかは当然入っているのですが、「社会的価値と自己実現の土台となる、豊かな文化享受と生涯学習の活性化」という大きな項目があり、様々な文化振興策を取りまとめています。

日本では異次元の少子化対策として手当の拡充とかニュースになっていますが、そういうレベルを超えた政策になっていることに参加者も私も驚きました。異次元とは韓国の方ではないかと思いました。

私としては、海外では今金継ぎブームでもあり、予想以上に漆に対する関心が高まっており、漆文化はなんとか海外の理解者が増えているので産業として残せるのではと前向きに捉えています。日本国内だけを見ていると駄目かもしれませんが…

深刻なのは地域に根ざしたお祭りとか行事の方で、全国ニュースでも取り上げられましたが、岩手県奥州市の黒石寺蘇民祭のような歴史ある儀式も、少子高齢化で担い手がいなくなり今年の開催をもって終了しました。外の人が関わることで存続させようというのは単純な発想で、今まで1000年近く地域が守ってきた伝統の尊厳を壊すことになります。それであれば自分たちの代で終了を決断したほうがましであるという檀家の決断は受け入れるしかないですね。

そういうことが高齢化先進地である東北で真っ先に起こり始め、次々に顕在化してきています。岩手らしいお祭りがどんどん無くなっていくでしょう。その中には蘇民祭のように受け入れざるを得ないものと、対策すればなんとかなるものがあると思います。

しかし、伝統文化をロボット化したり、外注したり、AI化というのは本末転倒で、やりかねない自治体が現れそうです。バーチャル蘇民祭とか...

ただ、漆についていえば原料の漆採取の生産性を高める分野には積極的にAIやロボット化を進めるべきです。漆生産は農林業であって伝統工芸ではないです。「漆掻き」は文化になりつつあります。

国産漆を育て後世に継承するための活動を行っています。ご支援をよろしくお願い致します。