魔術
仕事をRPGで例えるならば、やはり自分は魔法使いがいい。薬草やキノコや得体の知れない骨などをまとめて全て壺にぶち込み、大事に抱えて持ち運ぶような怪しい魔法使いがいい。イケメン枠でありたい。
強大で理不尽で意味不明で、ひたすら危ないエネルギー弾を前方に向かって放ちたい。余波で黒焦げになりたい。
怪しげな状態異常呪文を唱えたい。
押し寄せる敵たちが1匹残らず混乱し、かつ自分も目を回してぶっ倒れるくらいがいい。
いよいよ追い詰められた時は壺のフタを開けて、波動の中にドクロの霊が渦巻くようなビームで辺り一面を更地にしたい。ベルギム・E・Oの『ディオガ・リュウスドン』的なやつ(金色のガッシュ!より)
もちろん比喩である。
とはいえ2年近く社会人をした上で、RPGで例えた時の理想の仕事イメージがかような代物であった際の私の心情を想像してみて頂きたい。厨二病と言えたらまだマシなのだろうが、理性で考えてみた結果がこれなので余計にタチが悪い。
一般に社会人としての充実感と言えば、成果が認められるとか関係者に喜んでもらえるとか。簡潔で清潔な例が挙げられる。私としてもそういう分かりやすい見返りが好きで、つまらん日々を耐えてる節がある。
それでも内心は、壺の中で禍々しいカタマリを錬成しながら、一人不気味に笑っているような感じの仕事がしたいと思っている。あくまで「ような感じの」。
調整、調整、また調整。終わりなき事務作業がいかに肌に合わないかを実感する日々。物理的に肌も荒れてきているので、例えに「肌」を持ち出した先人はすごいなと思う。
読書も、資格勉強も、文章を綴ることも、私にとっては壺の中身を充実させることだ。全てはいつかどこかでぶちかますための種まきで、禍々しい呪術の錬成作業。せっせと材料をかき集め、壺に放り込み、熟成を待つ。
どこでどう役に立つか分からないので、興味の湧いた分野は全て味見する。レヴィーストロースの用いた「ブリコラージュ」的な意味合い。
あくまでもRPGで例えるならの話ではある。
それでもこれから先、魔法使いへの転身がいわゆる転職のタイミングなのだろうなと薄ぼんやり考えている。
抽象的な「魔法使い」が具体的な職業に結びつくまで、急ぎつつ待つ。
壺を豊かにする。
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