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【映像技術】Blu-rayでアホ毛をVFX修正した衝撃の理由(ジュラシック・パーク)

ひょんなことから2011年と2013年それぞれのBlu-ray画像を比較してる動画を見つけました。するとタイトルのアホ毛を筆頭に、かなり興味深い修正がされていたのでまとめてみます。

●基本的な変更

2013年版では3つの修正がされました。

  1. カラーグレーディングを暖色寄りに。

  2. ブラックをより深く。

  3. ノイズの除去。

暗いシーンで拡大するとノイズ除去の効果がよく分かります。

好みの問題もあると思いますが、全体的に2013年版の方が引き締まっていて、特にノイズ除去は素晴らしい仕事をしています。こんなにクリアになるなんて驚きです。

一方で、2011年版の明るく自然な色合いも捨てがたく、特に青空と植物の美しさはこちらを好む方が多いと思います。こちらがオリジナルフィルムに近い発色なのでしょう。ノイズに関してもフィルムグレインと呼ばれるフィルム特有のものなので完全に無くなるのはマニア的には寂しい面もあります。

しかし変更点は、これだけではありませんでした。

1993年公開時点で映像に見切れてしまっていた「明らかに余計なもの」が、2013年版ブルーレイではデジタル処理で除去されました。Tレックスが転がした車の撮影時の安全ケーブルや、ディロフォサウルスの操作用のピアノ線などが画面から消えました。

まあ手塚治虫や藤子不二雄も出版を重ねるごとに細かい修正を加えていたりしましたから、こういう事故タイプのミスを都度修正するというのはあっても良いと思います。オリジナル素材を尊重するファンも多くいらっしゃると思うので、スタジオは発売時に明言した方が良いとは思いますが。(*こっそりやるのにはあまりぞっとしないです)

そして驚くべきは、ここから先の修正です。

●タバコの煙

なぜ?

タバコが映るのを嫌う世論(教育上良くない)を反映して煙を少なくしたのでしょうか?…だったら、いっそキャンディとかにすればいいのに。ETでショットガンをトランシーバーに変えたみたいにさ!(皮肉やで;笑)

●アホ毛の修正

マルコム博士の頭がスッキリ。
ハモンドのおでこのアホ毛が消されてます。

なぜ??

有るよりは無い方が良いですけど、そこまでする必要ありますか?笑

●フレームの拡大

車の窓枠が太くなってます。
ドアの窓が小さくなってます。
看板が大きくなってます。

何のため???

●マイナス小顔効果

サトラー博士のお顔が大きく…
トリケラトプスのツノが太く…
Tレックスのお顔まで…?!
太ももの筋肉がアップ!

何のためぇぇぇぇ????

まるでインスタで写真を盛るセレブみたいですね。(笑)

しかしノイズを除去するとかなら理解できますけど、このような変更は全く意味不明で、むしろオリジナル作品を壊していく作業じゃないですか!こんなの私は明確に反対しますよ。

…ご安心ください。

ちゃんと理由がありました。

実は、、、

●不自然な修正の理由

2013年は3Dブルーレイなのです。

遠近感を強調するために手前のものを大きくしていたのですね!

もともと2Dで撮影した映画から3D映画を作るときには、後からデジタル処理で3Dに変換することになります。具体的には、右目用と左目用の画像で位置をズラして描き変えて、立体的に見えるようにしています。

分かりやすくするために実験してみましょう。試しにご自身の手のひらを目の前に持ってきて、右目と左目を交互に閉じて見てください。右目で見てる時は手が左に寄って、左目で見てる時は手が右に寄って、それに合わせて手の後ろに隠れて見えない部分が微妙に変わると思います。このように元の2D映像の中身を少しずつ右または左にズラすことで3D映像を作成できます。

このとき手前の物体になればなるほど、画像が右または左へ伸びることになります。このため手前にある物体ほど横に伸びてしまうのです。だからサトラー博士やTレックスの頭が膨らんでいたのです。

物体を大きくすることで、少し作業がラクになるだけでなく、奥行き感をアップさせることができます。これは一石二鳥だということで積極的に採用されたのだと考えられます。

アホ毛については一本一本の作業が大変になるので、まるでブラシをかけたように綺麗にカットして、3D処理を大幅に短縮したのでしょう。細い物や隙間がある物だと、動かした後に「新たに見える部分」を描かなくてはならないので飛躍的に難しくなるからです。

実はよく見ると、先程のディロフォサウルスの看板のシーンでも、車に掛かっているシダ植物は本来はクシにように隙間だらけの葉なのですが、3D版ではベタ塗りされていることが分かります。これも3D処理を簡略化する作戦です。(*というか技術の限界でこうするしかなかったのかもしれません)

車のバンパーに掛かる部分がベタ塗りされています。

静止画で見ると違和感がありますが、映画の中の短いシーンでは殆ど気になりません。このシーンでは殆どの人が看板の文字を読んでいるか、動いている車を目で追っているでしょうからね。

タバコの煙も同じく濃淡の処理が面倒なので一度全部消して、3DCGでゼロから描き直したといった所でしょう。煙のアニメーションくらい今やコンピューターのソフトを使うだけで簡単に描けますからね。

こうなってくると、冒頭に紹介した基本修正でカラーグレードが暖色系にされたのも、実は3Dメガネをつけた時を想定しての変更かもしれません。ちょっと技術的なことまでは分かりませんが。

= = =

画像引用元の動画はこちらです。

ちなみに引用元動画では違いを並べるだけで、修正の理由は3D化のためだというのは私のオリジナル視点です。

面白かった人はぜひ高評価押してってね。

了。

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