見出し画像

3月に観た新作映画

令和5年3月に観た新作映画は7(+1)本。
その中でも個人的なフェイバリットは以下の3本です。

🥇:エンパイア・オブ・ライト
🥈:長ぐつをはいたネコと9つの命
🥉:Winny

まさかのエブエブがTOP3落選!

観たのが早い順に過去ツイートを引用しつつ一言感想を綴ります。

▼エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス

初見は今年の映画館ではなく、昨年の東京国際映画祭でもなく、海外版4Kブルーレイでした。当時は観賞後のツイートはしなかったらしいです。

去年ちょうどタランティーノがヒーロー映画に出ている俳優はスターじゃないという趣旨の発言をしたとかで炎上していた頃に米アマでまとめ買いした円盤が到着しまして、ワンスアポンと一緒に楽しみました。(笑)

時間が経ってしまったので今回再視聴しましたが、すごく良い映画だというのは大前提として、しかしそこまで圧倒的な凄みがあるとは思えませんでした。なんというか「愛をテーマにして力強く語りつつ、センスオブワンダーを思い切りよく映像化しつつ、ディルドなどオゲレツな小道具を散りばめて刺激を足してる」という点は斬新で独特なコラボを実現していますが、逆に言えばそれだけかなと。いや、これまさに前作の『スイス・アーミー・マン』でやっていたので、どうしても薄味に感じてしまう部分もありまして。

あとはアジア系の俳優が活躍しているから人権擁護大好きのリベラル左派が猛プッシュして幾多の映画賞を総ナメしましたが、学術的な視点での映画のクオリティとかテクニックとか演技とかに関しては『イニシェリン』の方が軒並み格上だったと思います。あの抑えた色調の中で濃淡を描いたのは素晴らしい仕事でした。

アカデミー賞までもエブエブに完全に傾倒したのは予想外でした。私はキー・ホイ・クァンが駄目だったと言ってるのではありません;ブレンダン・グリーソンの演技の方がもっと凄かったやろという個人的な感想です。

▼フェイブルマンズ

映画の内容には全く文句なしです。素晴らしい!

しかし、日本語字幕が酷かった。

厳密にはそこまで酷い部分はなかったような気もしますが、そもそも読まないようにしていたので分かりません。それよりも、ユニバーサル配給作品の場合は映画の冒頭に蓋絵でタイトルと日本語字幕担当者の名前が出るので、そこに戸田奈津子の名前があるだけでテンションがダダ下がりしちゃうマイナス効果が大きかったです。画面に文字が映るとどうしても読んでしまうので、いっそ字幕が当たる部分だけスクリーンを破いてしまいたいとさえ思いました。

私のように英語が得意であればまだ良いですが、得意でない人達はほぼ全員が戸田奈津子に改変された下品で粗い解像度でしか物語を味わえていないと思うととても不憫です。彼らが物語の深さを堪能できるはずの機会を損失しているとも思えて、私は怒りさえ覚えます。

これは真面目な意見ですが、ユニバーサルは戸田奈津子との契約をできる限り早く切るべきです。007ノータイム・トゥ・ダイもグリーンブックも目に余る酷さでした。映画の内容がどんなに素晴らしくても日本語字幕だけが30年くらい時代遅れです。これは日本の映画ファンの文化的損失ですよ。早く気づいてください。

私がここまで強い語調で言うのは、私の映画体験を邪魔されるのが嫌だからではなくて、何も知らない普通の人達が気づかずに被害を受けていると考えるからです。ユニバーサルのようなビッグタイトルで間違った情報や劣化した情報を観客に届けることは、広く社会の公共性に鑑みてマイナスだと言えます。成田悠輔じゃないですけど、役に立たなくなった高齢者には「自害」を考えていただくべきです。(*ここで私が言ってるのは比喩表現ですよ!笑)

解説:
 『アバター』でクオリッチ大佐が科学者をバカにする場面。原文セリフでは「Bunch of limp-dick science majors」と言っていて、これは直訳すると「理系を専攻したやわらかいチンコの集まり」となるが、これを戸田奈津子は「科学系で頭でっかちのヘナチン野郎ばっか」とlimp-dickをこれ以上ないくらい正確にヘナチンと翻訳しただけでなく、わざわざ頭でっかちという要素をアドリブで追加。
 普段から「字幕はいかに文字を削るのが勝負だ」と言ってる人だとは思えないビックリ字幕だが、この作品に限らず戸田氏の翻訳には悪口にこだわりが強そうな事例がよく見られる。戸田氏は基本的に下品なジョークが好きなのか、もしくはアメリカ人は皆このくらい下品だと思っているらしい。
 ちなみに吹き替え版では問題のlimp-dickの部分は「腰ぬけ」と少し柔らかい表現に変えてあり、全体的にクオリッチ大佐の印象が下品になりすぎないように調整してある。これは米軍を日本の自衛隊に置き換えて言葉もそれに合わせた結果だと思われる。日本語吹替版は日本人が見るという前提に立つと、このくらい上品な方が自然だと私は思う。換言すると、戸田氏の翻訳は悪い意味で直訳すぎる。

▼エンパイア・オブ・ライト

美しい映像や、情感を味わうタイプの映画でした。

3月の1位に選ぶほど良かったので、あえて気になった点を書くと:

なぜデモの時にスティーブンにドアを施錠させたのかだけはマジで謎です。賢明な経営者と従業員なら何よりも先に黒人従業員を隠すことをすべきだったと思います。スティーブン本人もガラスのドアに向かって走っていくのはアタマ悪すぎなんですよね。正義感とかじゃなくてまずは身の安全を確保するように動くべきです。だって日常的に黒人差別や暴行事件が起きていた時代設定ですからね。ここだけは映画の脚本を展開するためにわざとバカな行動をさせた(ご都合主義)ようにも見えてしまいました。

また主人公2人が歳の差カップルであることは別にOKなのですが、だとしてもヒラリーとスティーブンが惹かれあった理由の描き方が甘いような気はします。特にスティーブンが年増女の白人に恋する理由があまり説明されていないと感じました。彼にはもともと同世代の恋人がいたことからもシンプルな熟女好きだとは考えにくいです。ただ母子家庭だったのでマザコン気質があるのかもしれませんね。

それともヒラリーに「言葉で説明しづらい魅力」みたいなものがあったのかしら。サム・メンデス監督の性的嗜好なのかしら。彼女にフラれて、大学受験に落ちて、移民で疎外感を感じているところにキスされて心が絆されたのかしら。などなど詮索は色々できる余地はありますが。まあ理由などなくても惹かれあうのが恋愛なんだ、ということでも全然OKです。(笑)

まあでも、そういう些細な不満点は差し置いて、全体のテーマと撮影がとても素晴らしい映画だと思いました。サム・メンデス監督版『ニューシネマパラダイス』ですよね。私は彼の作品では一番好きです。

特に劇中に登場する詩はよく味わって読むことをオススメします。

パンフレットで詳しく解説してくれていたら嬉しいな。買ってないから分かりませんけど。(映画のパンフレット、各配給会社は記事見出しだけでも良いからネット公開してくれないかしら)

▼西部戦線異常なし

昨年公開ですが私が初見だったので。アカデミー賞有力候補でありながら見逃していたので授賞式の前夜に駆け込みで。なかなかの力作でした。

ツイートに伏せて書いたのは、映画の魅力を損なう範囲ではないと思うのでこちらでは軽くネタバレします。ラストで主人公があっさり死んでしまったことに私は納得できませんでした。仲間が皆死んでしまったのに、一人だけ祖国に帰ってきて、そこで苦悩したり償ったりするまでがセットだろうと思って途中まで観ていたので。そしたら、なんと原作小説ではそういう展開だったと知りました。おっと、なかなかやるじゃん、私。(笑)

▼Winny

やっちゃいけないと分かっていたはずなのにやってしまった

という点で、東出昌大は適役すぎます。(失敬)

エンタメ作品として優れていながら、ものづくりに携わる人達や、将来ものづくりを志す若者の背中を押してくれる大変に良い映画です。もっと評価されてほしい!

▼バニシング・ポイント(4Kリマスター版)

意味がありそうで意味なんてない、それがアメリカン・ニューシネマ。

虚無感を描いたのだから、当然の帰結なのです。(笑)

CGがなくて実物を壊すしかなかった時代だからこその質量感や緊張感のこもった映像には迫力がありますね。

▼長ぐつをはいたネコと9つの命

これはスマッシュヒットでした。まさかの個人的3月ベスト2獲得です。伊達にアメリカでアバター2とタメを張っていません。ドリームワークスのアニメ映画は日本で盛り上がりにくいのが悔しいです。

アニメだと思って油断してたら、心をツメでクリーンヒットされますぜ。

▼コンペティション

ペネロペ・クルスは何歳になっても美しくて圧巻です。

映画の中身はリッチなのに、描いてることは終始ナンセンスという「悪趣味な贅沢」を極めたような映画です。『逆転のトライアングル』ともよく似ていますし、リバイバル上映の『バニシング・ポイント』と同時期に観覧したという巡り合わせも奇遇でした。厭世的な作品は癒しになりますね。

▼刑事ジョン・ルーサー: フォールン・サン

これタイトル『刑事ジョン・ルーサー:堕ちた太陽』じゃダメだったのかしら?『緋色の弾丸』みたいで格好良いじゃん?ジュラシック5の『フォールン・キングダム(炎の王国)』でもそうでしたけど、日本タイトルをつける人達ってネガティブな日本語を極力避けようとする傾向ありませんかね?マーケティング的に導き出されたメソッドなのかもしれませんけど。(笑)

ツイートにも書きましたが最後にかかる曲(そのままエンドクレジットに突入)は"Paradiseパラダイス Circusサーカス"で、サーカスはイギリス保安局(MI5:Military Intelligence Section 5:軍情報部第5課)の通称ですから、はっきりと名乗らず匂わせるスタイルがお洒落で格好良いですね。テレビシリーズでは市警だけど、映画ではセキュリティサービスに転職ということでしょうか。となると、2作目から「もう刑事じゃなくなる」のですが、日本タイトルはピンチですよ!(笑)こういうことが度々発生するから日本タイトルで下手に情報を追加しない方が良いんです。本作の場合はテレビドラマの映画化なので仕方なかった部分もあると思いますが、それだって元を辿ればドラマの日本タイトルを決めるときに「刑事」を追加したのが原因ですよね。

映画は普通に面白かったです。Netflixはこのまま独自の007シリーズを持ちたいのかなあと思いました。ヒットしたら制作費が増えて、派手なアクションやVFXが増えて、MGM/ユニバーサルの本家007みたいになっていくのかもしれません。

撮影が美しくて感動しました。

▼さ〜て、来月の映画館は?

4月公開の映画で気になるのは…

テトリス(3月キャリーオーバー)
マーダーミステリー2(3月キャリーオーバー)
AIR/エアー(7日)
ザ・ホエール(7日)
ノック 終末の訪問者(7日)
イントゥ・ザ・ネイチャー自然が教えてくれること(7日)
サーチ2(14日)
スーパーマリオブラザーズMOVIE(28日)

7日が大渋滞ですな。(笑)

サーチ2は日本語字幕が邪魔になると思うので映画館では観ないかも。1作目もNetflixで字幕を消して視聴しました。画面上の文字を全部読むくらいの勢いで観るのが楽しい映画だと思うので。そこに日本語字幕を被せられると物理的に隠れてしまうんですよねえ。

キャリーオーバーの2作品は31日公開でした。今月末はちょっとピンチ(笑)だったので後回しにさせていただきました。

来月(以降)も楽しみですね。

了。

この記事が参加している募集

#コンテンツ会議

30,821件

#映画感想文

68,495件

最後まで読んでいただきありがとうございます。ぜひ「読んだよ」の一言がわりにでもスキを押していってくださると嬉しいです!