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甲子園は虐待?エコ・テロリスト?英語を話すバカ?

みなさまご機嫌よう、もーやんです。
本日は読書感想文。1960年~2018年まで連載された『週刊新潮』の人気コラム『東京情報』。日本に住む外国人特派員ヤン・デンマン氏の立場から日本を語るそのコラムをまとめた本です。

『外国人記者が見た平成日本』ヤン・デンマン著

膨大な話題をまとめた厚さ3cmにもなる本書。外国人記者達の会話形式で進むため、スイスイ読み進めることができます。

そして驚くのは、日本人よりも日本に詳しいこと。日本史や古典、伝統芸能に赤坂の料亭まで、貪欲に調べるからこその知識ですよね。

気になる話題はすべてですが、その中でも私が唸ったネタを取り上げていきます。

(*'▽')前提として

日本が好きだからこそ、悪い点が目についてしまう。
本書を読んでそう感じました。

日本人である私が取り上げるのは、日本の伝統が廃れることを嘆くテーマより、日本の改善すべき所や注目すべき所、改めて考えたいことです。

なので、日本の悪口だけを連ねている本ではない、ということをご了承くださいませね。

○夏の甲子園は児童虐待?

特派員仲間のフランス人記者はこう言います。

それで負ければ半ベソかきながら甲子園の土を掻き集めるわけだ。恥を知れと言いたいね。

p.29

冷静に考えれば、高校野球は児童虐待である。人生の大事な時期にロクに勉強もさせずに、毎日野球漬け。炎天下で試合をさせるのもおかしい。
同じ投手が短期間に連投を重ねて体を壊しても、「この一球に高校生活、青春のすべてをかけます」という実況により正当化されてしまう。
いや、むしろボロボロになる姿に、そして無残に滅びゆくことに美学を感じているのだから退廃も極まれりというべきだ。
これは本来のスポーツの姿ではない。
「応援してくれるみんなのために最後まで投げろ」とロマンを強要することで病んだ大人たちは癒されるのかもしれないが、結局、ガキをいいように使っているだけではないか。

p.30,31

高校野球を児童虐待と繋げるなんて初めて聞いた私は、あまりのショックにポカーンとしました。なんてヒドイ言い方をするのでしょう。。。

それに、日本も変わりました。昔と違って熱中症対策として水分補給が奨励されたり、行き過ぎた上下関係も敬遠されるようになり、そもそもコロナで様変わりした日本の部活動。

『部活』と聞くと、「青春=素晴らしい」と頭に浮かぶわたくし。
確かに筋トレは大変で、仲間と対立したり、部活と勉強の両立は大変で、土日も長期休みも潰れたりします。そんな大変さを乗り越えた自身の楽しい想い出までも否定されたようで、ムッとしてしまいました。

でも、違うのです。

彼らが伝えたいのは、『おいおい、やりすぎだよ』ということ。才能や美談を求めて東奔西走する身勝手なメディアや大人に物申しているのです。

夏の甲子園は、多くの大人が浮かれ、夢を託し、想いを馳せています。
その美しさに子供たちも進んで熱狂しますが、一歩引いた視点が必要なのですね。

世間では、日本の高校野球=児童虐待と考える人もいるということ自体、わたくしは初めて知りました。部活や学校行事の素晴らしさは残しつつ、子供の安全第一で考えていきたいと思う説です。

○欧米人もクジラ肉が好き

一部の反捕鯨カルトに、むやみに譲歩するのはナンセンスである。

p.326

本書においてエコ・テロリストとして名指しされているのが、かの有名なシーシェパードとグリーンピースという団体。

そもそも、日本の捕鯨やイルカ漁は伝統文化であり、他国から干渉されるものではないということ。

なぜ、牛や豚は良くてクジラやイルカは駄目なのか。それこそ、優生学に繋がる危険思想ではないのか。

日本の居酒屋では、わざわざ赴いてクジラ肉に舌鼓を打つ欧米人がたくさんいるのに。

実際、世界には様々な珍味があります。アザラシやクジラ、イルカ、カエル、犬、猫、果てはカニバリズムなど。自分に「その習慣がないから食べないだけ」です。昔は、日本人も雀の焼き鳥を屋台で食べていました。食べる人について、何も思いませんし、干渉すべきとは考えません。なぜなら文化だから。

アイヌの人々が神に捧げてから熊肉を食べたように、食事と神事・風俗は表裏一体。捕鯨だって、縄文時代から続いてきたもの。

「なぜ」を考えずに、相手を『悪』と貶していると戦いになってしまいます。それがエコ・テロリストです。

侵略者と野蛮人の戦いは、それこそ壮大な歴史のテーマに繋がりますが。わたくし個人のレベルに落として考えると、自分と違う人を攻撃するのではなく、お互いのテリトリーを守りながら共存したいです。そのために、人間は話せるのですからね☆彡

○英語を話すバカは沢山いる

もっともで、唸ります。

「日本人は総理大臣がサミットで何を言ったかではなく、英語の発音が正しいかどうかに注目する。五輪のプレゼンでもそうだ。しかし、どこの国の人間も下手な英語をしゃべっているではないか。
英語が喋れないなら、私みたいに通訳を雇えばいい。
その前に、『源氏物語』はどういう作品なのか、世界の中で日本はどういう役割を担うべきなのか、今のウクライナ問題をどのように見るのか、靖国神社とA級戦犯の問題についてどのような意見を持っているのか……。
こうした一つ一つの問いに、きちんと答えることができるのがグローバル人材なんだ」

P.390

この言葉は、ドバイで金を生業にする佐竹氏という日本人の言葉として紹介されます。1泊50万の宿をドーンとおごっちゃうTHE・成功者です。

そうなんですよね。話すことよりも、内容の方が大事なんです。
中国語を生業にするわたくしは、耳が痛い。。。ついつい、楽な方へ流されますが、本を読んだり歴史を学ぶことこそ価値があるのです。

むかーし話題になった『楽天の英語公用語化』について。外国人記者の暇つぶしの鉄板ネタだそうです。その中で話題になるのが、日本人の英語コンプレックス。

楽天の三木谷会長の話に、記者達は首をかしげる。なぜなら、かつて日本は確かに世界経済を席巻し、『Japan as Number One』が書かれているから。

「日本語だけを使っていると、世界で何が起こっているか把握できない。日本の大企業は英語ができず、世界のリーダーになれなかった」と述べていたが、われわれにはジョークにしか聞こえない。

p.381

日本企業も常に戦争をやっているようなものだ。敵との交渉に英語は必要かもしれないが、仲間同士で軍事戦略を練るときに英語を使うバカはいない。

p.383

英語を公用語にすることの弊害を、ヤン氏は心配しています。「もののあはれ」や「遠慮」という精神まで途絶え、外資系の食い物にされるばかりと考えているからです。

わたしは、ちょっと違う考えです。

楽天の三木谷さんは、『日本流を世界に』と考えているからです。英語の公用語化というと売国奴のように聞こえますが、逆です。言葉の壁を壊し、柔軟性に富んだ日本スタイルで、世界を席巻しようという壮大な野望なのです。

英語の必要語彙は、日本語より圧倒的に少ないです。
もともと、勉強しやすい言語なのです。

英語を話せるバカは、確かに沢山います。アメリカだって、イギリスだって就職難です。でも、博識で理知的な人材が英語を身につけたら?

佐竹氏の言うグローバル人材が、これからの日本には増えるのではないでしょうか。ワクワクしてきますよね(*´ω`*)

最近、大学院に入りなおすような大人の勉強も話題になっていますが、これからはそーゆー時代なのでしょうね。
私も、源氏物語と平家物語を読み直して、中国語の素晴らしい本も勉強します。将来のお客様と、楽しくお話しできる日を目標に♡

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