創造性を発揮するために必要なこと――「IDEO流 創造性を取り戻す4つの方法」
ハーバード・ビジネス・レビュー編集部『デザイン思考の教科書』に掲載されている論文を読みながら、デザイン思考とはいかなるものかについて考えていく連載企画第2弾です。10本の論文が掲載されているので第10弾まで続く予定です(無事2弾目!)。よろしくお願いします。
今日の論文
今日みていく論文は以下のものです。
本論文ではデザイン思考において重要な要素である創造性について押さえられればと思います。
4つの恐れが創造性を阻む
冒頭で、創造性は誰しもが持っているにもかかわらず、成長とともに仕舞い込まれてしまっていると指摘し、そのために筆者らがすることは「創造性を教えること」ではないのだ、と述べています。
仕舞い込まれてしまった創造性を再び使えるようにするためには4つの恐れを克服する必要があるとして、その戦略を教えてくれるのがこの論考です。4つの恐れとは以下の通りです。
やっかいな未知なるものへの恐れ
評価されることへの恐れ
第一歩を踏み出すことへの恐れ
制御できなくなることへの恐れ
(わー思い当たる節がたくさんあるー)という感じです。4つ目だけ最初ピンと来ませんでしたが、解説を読んでみると(なるほどな)という感じになりました(私が恐れていないことでした)。
この4つの恐れを克服するための全体的な指針として、次のように述べられています。
私が惹かれたところは「創造性は天賦の才能だけでなく、修練するものである」という文です。なぜなら、私自身がこの論考で指摘されているように自分自身を「創造的ではない者」だと「諦めてしま」っていたからです。天賦の才能による部分が少なかったとしても、修練で補うこともできるというのは励みになります。それが多少であったとしても!
さきほどの引用に出てくる「ヘビ恐怖症」については、文章を引用するより次の動画を観ていただく方がいいと思います。お時間ある方はぜひご覧ください。10分程度のTEDの動画です。(決して入力するのが面倒なわけではありません!)
この動画でも登場する「案内付きの習得」(アルバート・バンデューラ、心理学者・スタンフォード大学)ですが、読んで字のごとく、本当に案内する人が付いている、つまりそれについて詳しい人がそばにいてくれると、自分では恐れを抱いているところにも気軽に行けるような気がします。
たとえば私の場合だと、おしゃれな洋服屋さんにはどうしても一人では入れませんが(入ったとしてもすぐに撤退しますが)、おしゃれな友人となら入ることができます。
創造性についても同じことが言える、というのが本論考の主旨です。以降は4つの恐れを克服する方法について述べられています。
やっかいな未知なるものへの恐れ
1つ目は「『やっかいな所』に飛び込む」ことについてです。
慣れ親しんだところから出ることによってこそ、見つかるものがある。これは以前の記事で書いた「イノベーティブな発想を引き寄せるには既知と未知とのギャップが必要になる」ということをいっているのでしょう。
しかしケリー氏! その飛び込むことこそが難しいんですよ! と思うのは私だけではないはずです。ここはやはり、まずは慣れ親しんだところから出ることによってこそ、インサイトやブレイクスルーを見つけることができることを理解して、そのうえで実際にそうした活動をしている人を見つけて一緒に出掛けてもらうようにするのがいいのだろうと思います。3つ目の克服法もこことつながりそうです。
評価されることへの恐れ
2つ目は私にとって一番大きな恐れでした。
最近よく聞くようになった「心理的安全性」も大事な要素になるだろうなぁ、と思いながら読んでいましたが、ここでは一人でできることを挙げてくれています。
思い付いた考えを消えていくままにせず、メモ帳に書くなどして体系的につかまえる
(そのために)浴室にホワイトボードとペンを設置する
毎日の予定表に思考や散歩、空想のための「空白の時間」をつくる
アイデアを生み出そうとする時は、10個ではなく100個挙げてみよう
評価は後回しにすれば、週末にはどれだけ多くのアイデアを持っているか、気に入るアイデアがあるかに驚くことだろう
たしかに、心理的安全性があったとしても、自分が自分を「検閲」していたのでは意味がないのです。まずは自分を評価せずにアイデアを生み出す修練が必要になるわけです。
もちろん、フィードバックの方法についてもヒントを提示してくれています。
フィードバックする場合も、月並みな言葉は使わないようにし、協働者にも同じことを勧めるとよい
dスクールのフィードバックでは、通常、「よい点は」から始め、「~だとよい」へと移行する
ここで事例として紹介されているニュージーランド航空の「スカイコーチ」がおもしろかったのでサイトを貼っておきます。ブレインストーミングによって、国際線のエコノミークラスに(占有スペースを拡張せずに)フラットシートを導入する方法が誕生したというものです。サイトをみてみると(そうきたか!)と膝を打ってしまうと思います。
第一歩を踏み出すことへの恐れ
3つ目は「踏み出すことへの恐れ」ということで、1つ目の「『やっかいな所』に飛び込む」ことへの具体的な進め方と言えそうです。
ここでいう「小さな断片」のことを先ほどの動画の中では「baby steps」と表現していたのだと思いますが、いずれにしても、(これならできる!)と思えるくらいに小さく分解することが克服の第一歩ということなのでしょう。
そして、そのための問いを教えてくれます。
準備を始めると「あれもいる」「これもいる」とどんどんコトが大きくなっていきます。大きくなると今度は(ほんとにこれで大丈夫なのだろうか)と不安になってさらに「あれもいる」「それもいる」とどんどん膨らんでいきます。これらを「すぐできることはなにか?」という問いによって封印して、はじめの一歩を踏み出すことが大事なのです。
制御できなくなることへの恐れ
4つ目の「制御」というのは、自分で自分の事業をコントロールできなくなることを指しているようです。
自信とは謙虚さを持つということ。なかなかに重い響きです。
事業を成功に導くことが目標であるならば、自分のアイデアにしがみ付き続ける必要がないのは明らかといえば明らかです。その恐れを克服するために謙虚さが必要ということなのでしょう。
と、書いてみて、(たしかに!)となりました。私の上司に伝えなくちゃ!
号砲
今日からできる1歩を探して、一緒に修練を始めましょう。