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【映画】孤児から立身出世、アメリカ建国の父『ハミルトン』を描いたミュージカル、裏主役は妻のイライザ!

(この記事はネタバレを含んでいますので、ご了承ください)

娘と私は、週日に家で映画を見ることがよくあるのですが、大体は「1時間だけ見ようね」と話していても「うー、もうちょっと見たい!」と3時間ものをつい見てしまったりしています。週日なのに。

しかし! この大人気ブロードウェイミュージカルを映画化した『ハミルトン』は、なんと5回に分けて見ることになったのです。。

それは、つまらなかったから、というわけではありません。

特に最初の方、野心的な孤児であったハミルトンが、アメリカ独立戦争に従軍、ジョージ・ワシントン司令官の副官に抜擢され、さらには弁護士となり、アメリカ合衆国憲法を起草する・・・と、とにかく内容が濃過ぎて、それをラップでガンガン語ってくるので、ちょっと見ただけで「お腹いっぱい」になってしまうのです。

そのハミルトンの出世/アメリカ建国物語に絡んで、妻のイライザ、イライザの姉のアンジェリカ、そしてハミルトンの不倫相手のマリア・レイノルズという「ハミルトンを愛した3人の女たち」が出てきて、パーソナルライフを描いていきます。

義理の姉アンジェリカはハミルトンと「不倫してたんじゃないの!?」という親密さをチラチラ見せているので、「ここがミュージーカルの一つの山場?」と思ったんですが、そうではありませんでした。

マリア・レイノルズとの不倫問題は、夫にバレて脅迫されるなどの汚点となり、のちに政治家としての立場を難しくしてしまうことになるので、思ったより重要なのですが、これも山場ではありません。

実は、一見それほど重要ではなく、忙しい夫の陰に隠れた貞淑な妻であり母の役目を演じていたイライザが、最後の最後、20分ほどで劇的に重みを増します。

それは、イライザが数多くの堪え難い不幸に見舞われるところからスタートします。まずは、将来を嘱望されていた息子のフィリップが、「父ハミルトンを侮辱した」相手と銃で決闘をし、その結果死んでしまったこと。

しかも、ハミルトンはこのとき、フィリップに「銃を撃たないように」アドバイスもしていました。

最愛の息子を失ったハミルトンとイライザの失意と許しの場面は、私には映画の中で最高のシーンでした。

それから3年後には、ハミルトン自身が、政敵であるアーロン・バーと同じ場所で決闘をすることになり、結果死んでしまったこと。

息子、そして夫を次々に失ったイライザ。しかし、この「妻であり母」であったイライザが、なんとこの後50年も生きのびます。そして、単に悲しい生涯を送ったのではありません。彼女は夫が書いたものや、数多くの連邦党支持者と話をしたものをまとめ、夫の偉業をきちんと語られるように残したのです。イライザがいなかったら、ハミルトンの業績は、闇の中に葬られてしまった可能性もあります。

さらに、イライザは「私が一番誇りに思っていることを話してもいい?」と、ニューヨークで初めての私立孤児院を設立し、700名以上の孤児を救った、とミュージカルの締めで語ります。そして、そのひとりひとりに、夫のアレクサンダーの面影を見ていた、と。

97歳で亡くなる直前まで、夫を愛し、積極的に防御し、政治界でも一目置かれていたイライザ。

なんだ、これは終わってみればイライザの映画だったんだ!とまで私には思えました。そして、そのようにも見えるように、最初から最後までの巧みな構成をした脚本・作曲・作詞・主演のリン=マニュエル・ミランダ。とてつもない天才の、すごい作品です。

時間かかったけど、最後まで見て「いい映画だった」と心から思いました。



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