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【映画】 アートや写真好きな人を恍惚とさせるよ 『フレンチ・ディスパッチ』 

ウェス・アンダーソン監督の『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』(The French Dispatch)は、娘が前から見たいと言っていた映画だが、今日ようやく見た。

スタイリッシュな映像で知られるウェス・アンダーソン監督だけど、この映画はホントーに全てのカットが完璧に構図・配色の計算がされていて、写真家としては、何よりも「こんなに毎シーン作り込むのは、どれほどの作業なんだ!」と驚嘆するしかない。

ファッション、俳優の動き、カメラの動き、プロップ、色味あわせ、構図、ライティング(←特に私はここに驚嘆・・・フラットに見えるものが多いけど、あれだけの要素の入っているところで、全部をきっちり見せるのは難しい! レンブラント的な計算が必要)・・・。何もかも、凄い。

凄い、といっても、可愛くてオシャレな感じにまとまっていて、ジャック・タチ監督の『ぼくの伯父さん』の青や黄色が思い出された。そう、フランス好きな人もグッとくると思う。

映像スタイルには、フランス映画へのオマージュが見られる。
ー白黒(フィルム・ノワール)
ーフレンチ・カラー(ジャック・タチのパステルカラー)
ー鮮やかな色合いの日常のシュール(80年代「恐るべき子どもたち」と呼ばれたジャン=ジャック・ベネックス、リュック・ベッソン、レオン・カラックス監督を思わせるもの:ティモシー・シャラメとリナ・クードリがバイクで逃げるところ)
ーアニメーション(ニューヨーカー誌/タンタン風)

これらスタイルの違うものをうまく詰め込んでいて、それがスムーズなトランジションで繋がっていた。ある意味「どのシーンがニューヨーカー誌に出てきてもおかしくない」とも思える。フレンチだけど。とにかく。アート好きな人は、垂涎ものの映画だと思う。

・・・と、映像関係のことばかり褒め称えてしまった。が、この作品、実はウェス・アンダーソン監督の作品の中では、評価が低めらしい。

もしかしたら、映像の方にあまりに力が入ってしまい、話の筋のほうがおろそかに・・ではないけど、分かりにくくなっちゃったのかなあ、とも思う。

私はDisney+ の英語版・英語字幕で見ていたんだけど、途中でフランス語が入るところもあり、そこでは画像内に英語字幕が入るんだけど、これがまた早くて、読みきれない・・・。

内容も、なんだか良く分からないシーンやセリフがところどころあったんだけど、めくるめく映像力にうっとりしていた、というところだ。

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内容は、フランスの架空の街アンニュイにおける特集雑誌『ザ・フレンチ・ディスパッチ』の最終号のストーリーを映像化したもの、という構成で、短編が4つと、編集部の様子が前後に入っている。

編集長(ビル・マーレイ)が、記者のクリエイティビティを徹底的に尊重し、長すぎる記事も削らず、記事を書けない記者もクビにせず・・・とまあ理想のボスだ。ありえない・・・素晴らしい。

話の中では、私はベニチオ・デル・トロの殺人犯/稀代のアーチストの話が好きだった。でも正直、話はどうでも良かった。

それよりも、(映像の楽しさに加えて)出ている俳優が、とにかく「ウェス・アンダーソン監督の作品に出られて嬉しい! この撮影現場にいられることが幸せ!」というのが良くわかる演技をしているので、それが楽しいのだ。

ティルダ・スウィントン、フランシス・マクドーマンド、エイドリアン・ブロディ、ティモシー・シャラメ、レア・セドゥ、オーウェン・ウィルソン等ががっつりセリフのある役をしていたが、その他にもカメオ的にウィレム・デフォー、エドワード・ノートンまで出ていて、クローズアップされたそれぞれの顔にインパクトがあって、「この監督は、個性のある俳優の『顔』が好きなんだなあ」と思う。

一緒に見た夫からは「これは凄い。要素があまりに濃いから、また見たいな。大きい画面でも見たいけど、そうすると止められないなあ」と珍しく「また見たい」評価が出ました。

娘は『DUNE/砂の惑星』のティモシー・シャラメが見られたから、いいんじゃないかな。

これから、我が家の#家族で映画の日、ウェス・アンダーソン映画が続くかもしれないなあ。来週は私が映画を選ぶ番なので、『犬が島』行きたいと思います。




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