建築防災コンサルタント よもやま話「番外編:スウェーデンから考える防火設計の話」
パリオリンピックが始まりました。
開催地のパリとの時差は-7時間。現地の夕方から夜に行われるメインイベントは日本の深夜から早朝になり、昼夜逆転生活をしないとライブでは楽しめません。開会式も当然同じ時間帯で、前日の夜10時には布団に入って、3時過ぎに起きてテレビで見るという作戦で臨みました。
開会式はセーヌ川沿いを選手団が船に乗ってパレードするという画期的な演出で、覆面姿にマントを被った人物が苦難を乗り越えながら聖火を会場に届けるショートムービーと川沿いの舞台や橋の上で行われる音楽とダンスのパフォーマンスがパレードの中に取り込まれ、テレビで見るには飽きない演出となっていました。
ただ、あいにく当日は雨模様で式が進むにつれて雨脚は強くなり、正装のジャケット着用で臨んだ日本を含む多くの国は降り注ぐ雨に耐えられずポンチョをかぶってのパレードでした。透明のポンチョとはいえ、有名デザイナーに頼んだ、せっかくの式服は隠れてしまい残念でした。
そんな中で目を引いたのはスウェーデンチームです。
国旗の一つの色である鮮やかな黄色のパーカーを全員が身にまとい、選手たちは降り注ぐ雨も気にならず船上から笑顔を振りまいていました。このユニフォームをデザインしたのは日本のユニクロです。
スウェーデンチームは式服もジャケットスタイルではなく上下紺のトレーニングウェアーですが、そのまま式典に参加しても場違いにならない端正なデザインになっています。
(※開会式の写真、映像等は下記よりご覧ください。スウェーデンチームの服装もご覧いただけます)
(※ユニクロ×スウェーデンアスリートコレクションのプレスリリースは以下ご参照)
当初からどんなコンディションにも対応できるアウトドアウェアーでユニフォームを統一したスウェーデン+ユニクロの一人勝ちでした。
さてそろそろ、建築防災の話をしないと編集者から怒られそうです。
私は防火設計の立場でもこの件から学ぶことが多いと思います。防火設計は、火災という予想できない事象への備えです。起こりうる事象に柔軟に対応できる設計が必要です。
伝統あるオリンピックの式典は長い歴史があり、その中で作られたこうでなくてはならないという決まりがあり、それが各国のユニフォームのデザインにも影響していると思います。
防火設計で言えば、長い歴史の上に作られた建築基準法の様々な規定に従って設計するスタイルです。これに対してイズミコンサルティングが提供する避難安全検証法は、当該建物の火災安全を確保するために本当に何が必要かを考えて設計する設計手法です。これによって無駄なものを廃し本当に必要なものを整えて、設計します。
避難安全検証法は2000年に新たに性能設計の手法として建築基準法に取り入れられたものなので、当然のことながら遵法性も確保されます。これによれば想定されるどんな状況にも対応できるスウェーデンチームのユニフォームのような防火設計をお届けすることができるのです。
ちなみにスウェーデンでは防火設計の分野においても日本の制度より自由度のある性能設計法が使われています。
王室を維持し長い伝統と歴史を持ちながら、良いものは他国の企業の物であろうが柔軟に取れ入れていくスウェーデンからは色々な点で学ぶものが多いと思います。