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西伊豆古道を歩く〜宇久須ー小下田編〜

2022年7月9日。おととい歩いた、一度歩くと「もう来るか」となる不来坂(こじがさか)に続き、今回もインターネットでは情報に出会えない大洞峠(おおぼらとうげ)を歩く。賀茂トンネルを使わずに小下田へ歩く推定3kmの峠越えコースだ。

前回の道、不来坂はこちら↓

おととい不来坂の歩き終わりに、地元の歴史に詳しいカネジョウさんから教えてもらった大洞峠の入り口。カーブミラーの右手が入り口だと教えられたが本当に道はあるのだろうか。

今まで伊豆半島の海沿いの古道を、熱海から時計回りにここまで歩いて来たが、今回が一番不安であった。明治19年の測量図だと月原神社のあたりから上っていく古道があるはずなのだけど、下見した際は全くの手がかりなし。今回は唯一の貴重な情報の道を歩くことにした。

8:00 草むらに入ってみるとブロックが積み上がり、道のように連なっている。こんな道ははじめてだ。でも、方角がわかりやすいので助かる。

但し、急峻な上にブロックの座りが安定はなく滑りやすいので十分に気をつけた方が良い。歩きやすそうに見えるけど杖は必須、後半は歩きやすくなるけど、特に序盤はブロックがあってもまともに歩けるような道ではない。

ブロックが途絶えると、広い尾根に辿り着いた。おお!鹿がたくさんいる。みんながこちらを見ている。カメラを向けると一斉に逃げ出した。山の中に鹿の鳴き声が響いている。「人が来たぞ〜!」仲間に知らせてるのか。

ハッカ油と精製水で作ったお手製の虫よけスプレーが壊れてしまった。マダニ対策なんだけど、仕方ないのでスプレー部を外して、じゃぶじゃぶと塗りつけることにした。

今度は小型のイノシシが逃げていった。突然、草むらから現れたので驚いた。最近、周辺で目撃情報のあるツキノワグマに出逢ったら早々にフィーバーする。鈴の音だけでは心配になり「森のくまさん」歌ってみたり。

時折り視界が開けるが、今日の西海岸は曇天、海は凪。宇久須の港が見える。

尾根が広いので、とにかく道を外れていかないようにGPSを確認しながら稜線を辿る。稜線が細くなって来たら上には上がらず、一本下の広く平坦な道が古道だ。

まもなくして、見晴らしの良い開けた渓谷に出る。

西伊豆町宇久須地区には、ガラス原料となる珪石(けいせき)とアルミニウム原料となる明礬石(みょうばんせき)を産する伊豆珪石鉱山がある。一時期は日本の板ガラスの原料の90%を産出していた時期もあり、国内有数の珪石の産地として知られていた。現在では、貯蔵されている珪石を需要に応じて出荷しているそうだ。

そんな宇久須にあるガラスのテーマパーク黄金崎クリスタルパークでは、世界中の現代ガラス作品や万華鏡を楽しめる美術館。ガラス工芸品美術品として一見の価値ある展示内容だ。

開けた下りを道なりに歩くも、探してる古道とは一致しそう。もしかしたらこのまま道を下れば、月原神社周辺へ続く古道に繋がる可能性も見えてきた。今回は北上を目指しているので、Uターンして当たりをつけていた山中へ入っていく。

上り道が続く。シダをかけ分け前進あるのみ。

大きな崩落で道が消えてしまい、やがて道を見失う。

道はわからないけど、GPSを頼りにとにかく山神社を目指し薮を漕ぐ。

道なき道を上っていくと、、、おや?ジグザグ道が見えてきた。

10:00 山神社に到着。

社のサイズは小さいけど、それは目に見える世界の事であって、ただの投影に過ぎない。目に見える価値だけを追うと盲目になり、それは虚しいものであることをいずれ知ることになる。光は闇の中に輝いている。闇はこれに打ち勝たなかったのだ。お手製の虫よけを身体に塗り、休憩する。

山神社に挨拶し、振り返ると杉の参道が見えて来た。この道で間違いない。

しばらく歩きやすい杉の林道か続くが、すぐにシダと倒木が道を阻む。だけど、山神社までの道よりずっとマシ。次第にはっきりと道が見えてきた。

竹林が混じりはじめた。緩やかな下り坂が続く。

あまり見かけないお顔立ちの石仏一体。

舗装道路に出てきた。森の中では静寂だったのに、合わせたように一斉に蝉が合唱をはじめた。

Y字は右を。道なりに次の伊豆峯次第チェックポイントを目指して歩く。

見事な椎茸のほだ場があちこちに。伊豆の椎茸栽培は、1741年に伊豆の石渡清助が国内で初めて行ったとされ、ワサビと共に自然の恩恵とも言えるジオとの関係性が強い農産物だ。西伊豆の土肥周辺は椎茸の産地となっている。

「こんなところ歩いてどこから来たんだ」この道、今日は集落の有志総出で草刈りをしている。お一人が手を止めて声をかけてくれた。大洞峠を歩いたことを伝えると、地元では誰も通らないと驚いていた。古道の存在は知っているようだ。

道の途中、右折できる石の階段を下りる。わかりづらいけど道なりに細道を上る。

ソテツとアロエの参道を通り、伊豆峯次第の183番目のチェックポイント・小峰八幡神社に到着。

国道に出たら斜めに渡って、西伊豆歩道 廻り崎コース入り口で本日のゴール。

その直後、目の前に車が一台停まり、車窓が開くと声をかけてくれた。なんと、Twitter経由で知り合った方が車で迎えに来てくださったのだ。丁度、お昼時だったので、一緒にランチへ。その後は、石化した樹木・珪化木のある場所と、仁科の栗原昔穴古墳まで案内いただいた。

感謝です。次はぜひ一緒に歩きましょう。

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