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生理って年々重くなるくね?と思ってた

けどまず生理以前の話するね。中学とか


最近ようやく自分のことが分かり始めたように思う。というより、「自分は自分のことをこんなにも知らなかったのか」という感慨に近い。感慨と言うとポジティブに響くようだが呆れの気配を感じる感慨である。

自分は中高一貫校で10代の後半をやたら楽しく過ごした。少ないが親密な、礼儀正しい友人に囲まれて、ごくたまに人間関係のもつれにウンウン言いながらも平和に暮らしてきた。6年間も同じ学校にいると、毎年入る新入生に「あらなんて生まれたてのヒヨコちゃんたちかしら」と懐かしい視線を向けては年々変わっていく自分を自覚して、いわゆる一人前という状態に近付いていると思っていた。

  10代の自分は「感情とは理性で抑え込めるし、律すべきもの」と考えている節があった。誰かに強いられたわけでもなく、自然と己の中に生まれた教義のようなものだった。これは日常で腹を立てたり、泣いたり、大げさに興奮して喜んだりするのを抑えるものではなく、自分を見失ってあからさまに狼狽えたり、衝動的に人を罵ったり、"大人げなく"感情を爆発させたり、そうして自分の感情的なコントロールが効かなくなった状態を嫌った。"大人"とは、感情の波が頂点まで上り詰めてしまう前に理性によって抑え込めるものだし、努力してそうあるべきだ、と考えていた。


年齢によって生理が変わるとか知らんくね  知ってた?


大学生になった。中学と高校で出会った知り合いはおらず、それまでの自分の小さな常識を軽く飛び越えていく様々な人と知り合うようになった。中学時代とは違い、ほぼ自我がしっかりと確立しつつある相手と新たな人間関係を構築するのはなかなか難しい。それまでにいた自分のコミュニティの小ささを実感しながら(小さくも豊かで、居心地のいい場所だった)、そのうち信じていた「大人は己を律して、感情を理性で制するもの」という観念が崩れていく事態にぶつかった。

歳を取ると人は涙もろくなる。それは生きてきた中で得た経験や感情が降り積もり、共感性が上がるからであったり、脳の機能が加齢とともに低下して感情を抑制しにくくなるからであったりと様々な理由を耳にする。20代に入った自分がぶつかったのは、主に前者の理由に加えてホルモンバランスの変動による感情の変化だった。

10代の頃は全くと言っていいほど共感できなかった、「イライラが止まらない」「どこまでも落ち込み気持ちが切り替えられない」という状態に自分が陥ることがあるなんて。よく食べ、よく眠り、一晩経ったら辛い気持ちからも立ち直れる。そんな単純で軽やかな時期は去り、自分は途方に暮れてしまった。と同時に、出血量が増えたため貧血でふらつく日は増え、自分は痛みがなくて一生気楽だと思っていたのに生理痛が来るようになった。些細なきっかけが始まりで「もう自分は終わりだ」と絶望し、「死ぬしかないのかもしれない」というところまで気分が落ち込み、三日ほどどん底の状態でいると出血が始まり、ああ、あの落ち込みは生理前だからか…と呆れや諦めが混じりながら孤独に対処する。これが毎月。不安ではなくイライラに襲われる月もある。書き出してみるとこんなに辛いのだが、例え出血量が増えても正常な範囲内であるうちは、生理が毎月必ず来ることそのものは健康の証なのだ。なんてこった。

そうして段々と心や身体の収拾がつかなくなって行くような歯痒さを感じていた時、気分の波が激しくなっている気がする、と母にぼやいたことがある。母は「ああ、そういうもんだよ。(その傾向は)年々強くなるよ」とにべもない返答で、自分は衝撃を受けて思考が停止したのを覚えている。今でさえ手に負えないのに、さらに悪化するのかよ!?勘弁してくれ。

そんなこんなで、「感情は理性によって抑え込めるし"大人"ならそうすべきもの」という信条は崩れ去った。イライラや落ち込みに振り回される体験をしてからは、むしろ感情に正直になるのは仕方ないのだと諦めがついた。10代から20代に入ってより激しく怒ったり泣いたりするようになり、自分がこんなに感情の揺れ幅が大きかったなんて、と驚く瞬間が何度かある。(そして今後この目測からさらに大きく外れていくこともあるだろう)その影響は映画鑑賞が趣味となったのも関係しているので、そのうち映画についての話も書きたい。


落ち込むシーズンってあるよねでも生きてこうねって話


前記事にも書いたが、9月は自分が特に落ち込みやすい日だ。

10代の自分はごく近い将来の自分が制御できない感情に振り回されているだなんて思いもしなかっただろうが、「感情は理性によって抑制されるべき」「自分にはそれが比較的得意だ」と傲慢にも錯覚していた時期があるせいか、気分がどうしようもなく落ち込んで不安に駆られる時、自分が過去の自分よりも非力な存在だと感じることがよくある。ただでさえ、気合いひとつでくよくよした気持ちが切り替えられないという状態が、ひどく無力感を味わわせるというのに。

でも、恐れつつも歳を重ねて良い側面もある。初めはひどく戸惑い、なぜこんな変化が起こるのかと動揺する。嫌な変化が訪れたら、それを拒否したくなるのは当然だ。ただそれも何度か繰り返すと「そうか、自分は6月と9月は上手くいかない月なのだ」と分かってくる。突発的なイベントというより、周期としてつかめるようになる。するとその受け止め方も変えられる。受け止め方が変わると、台風の目から一歩出たみたいに色々な物の見え方が変わってくるものだ。コントロールが効かない感情の揺れは、その枠組みさえ見えればもはや季節の風物詩のような気さえしてくる。

感情を制御できるのが大人だと信じきって、納得できない友人の発言に対して反発心が湧くのをグッとこらえたり、些細なことで落ち込みそうになればいや、これは悩んでもしょうがない、と割り切って意志の力で不安を押さえ込んでいた頃の自分は思い出すと懐かしい。でも今は、感情に振り回されるようになったぶん、感情を味方につけることも学びつつある。まだ成功率が非常に低いが、気に食わない意見には不快感を表出させて噛みつくこともできる。落ち込む時は涙が流れるに任せ、自分の悲しみの感情をただ見つめ返すようにする。多分これからは力づくで抑え込むのではなく、そうやって感情と一緒に生きていくのだ。


【追記】

自分はなんだかんだ3~4年ほどPMS(月経前症候群)に苦しんでいたが、最近は心療内科に通い、産婦人科から処方されたピルを飲んでいる。だがピルを飲み始めたからと言って落ち込みやすさが明確に変わった気は正直しない。生理だけではなく、ストレスや性格の要因もありそうだ。明確に変わったのはニキビができなくなったこと。実際、ピルはニキビの治療にも使われているとのこと。ドラマ「オレンジ・イズ・ニュー・ブラック」であんた最近肌が綺麗になっただろ!と女囚人の妊娠がバレたシーンがあって「そんなので分かるわけ🤷」と内心思っていたのだが、ピルを飲み始めたことでやっと腑に落ちた。

※生理に振り回されて辛い人は躊躇わず病院へ。日本も早くピル無料にしてください。

※年齢によって生理が変化する時期は実際人それぞれ。学生から社会人へとか、環境が変わるタイミングもあるみたい。


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