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EP024. あなたの人柄、とても好きですよ

「あぁー、今日はオンライン模擬面接だー。苦手なんだよなー。」

今日は面接指導の日。大学の先生が相手の模擬面接。
対面なら得意って訳ではないけど、どうしてもオンライン面接は好きになれなくて苦手だ。どんな顔して相手のディスプレイに映っているのかと思うとゾッとする。

とりあえず上半身だけ着替えて面接に挑む。下半身は映らないから着替えなくても大丈夫。そんな考えだと上手くいかないなんて精神論は却下。スカートにまたアイロンをかけないといけなくなるのは大変だ。
メールで通知されていたIDとパスワードでオンラインミーティングにアクセスする。少し待機するとディスプレイに先生が現れた。

「よろしくお願いします…。」

元気よく受け答えしたいんだけど、声を張れない。

「よろしくお願いします。今日は模擬面接をしますが、肩の力を抜いてリラックスして受けてくださいね。」

「はい。」

「元気がないようですが大丈夫ですか?体調が悪ければ日程を再設定するので遠慮なく教えてくださいね。」

「大丈夫です。すごく緊張してしまって。すみません。」

「問題ないですよ。みなさんそうですから。それではスタートしましょう。」

どんどん緊張が高まってしまって、上手くいく気がしない。

「まずは名前と略歴を教えてください。」

答えたものの、しっかり話せているのかどうかが心配。

「はっきり聞き取れないので、もう少し大きな声で。相手はあなたのことを知ろうとしているわけですから、ちゃんと相手に届くように声を張って。相手に届かないのは大きなハンディーですよ。では、もう一度。」

「分かりました。」

受け答えとは裏腹に、心の声は「分かってるんだけどできないんだって…。」なんて反抗的。

「次は自己紹介をお願いします。1分でまとめてくださいね。」

これが一番苦手だ。
略歴は決まったことをただ覚えて話すだけなので難しくはない。でも自己紹介は自分をアピールしなくちゃいけない。自慢できるところがない私にはそんなの無理。

「えぇーっと…。」

「『えぇーっと』は止めておきましょうね。」

「すみません…。」

「では続けて。」

なんとか最後まで自己紹介を終わらせた。どうやら3分も話していたらしい。私は時間が余ったんじゃないかと思っていたのに。

「時間オーバーは調整するとして、まずあなたのアピールポイントがわかり辛い。『あなたならでは』の差別化ポイントが見えないですね。そして一番問題なのは、あなたの自信のなさ。画面全面から滲み出ています。これはしっかり修正していきましょう。なぜ自信がないのか分かっていますか?」

「面接が苦手で、どうしても試験に通らない気がするんです。それでちゃんと話せないというか、上手くアピールできないんです。そもそも漠然と自分に自信がなくって、何をアピールしていいのかも分からないんです。」

「そうですね。自分の良いところを見つけるのってなかなか難しい。でも、あなたはあなたの良いところに気付いていないだけじゃないですか?」

「先生、どういうことですか?」

私は先生の真意が分からず問い返した。

「指導担当としてだけでなく、普段の受講態度を見た上で意見を言わせもらうと…。」

私の何が良いのだろう。

「あなたの人柄、とても好きですよ。」

人柄?あまりにも意外過ぎて拍子が抜けた。

「あなたは人柄がとても良い。だから普段の空気感で自信を持って話せるともっと良い。」

「人柄なんて、アピールポイントになるんですか?」

「『人柄が良い』ってのは最高の褒め言葉ですよ。誤魔化しても百戦錬磨の面接官は一発で見抜きます。作れないところですからね。あなたはそれが自然とできる。だから大丈夫。他の人にできないことなんだから自信を持ちなさい。」

その後も自己紹介の指導を受けて、詰まりながらもそれなりに話せるようになれたところで模擬面接は終わった。

「私ってそんなに人柄がいいんだ。もちろん疑ってかかるのもいいけど、先生がせっかく褒めてくれたんだから信じてみても良いかも。」

そう考えるとググッと自信が湧き上がってきた気がした。
人柄が良いと言われただけで自信が沸くなんて不思議。

「これで明日の面接も頑張れる!」

先生の言葉を胸に絶対に合格すると信じて、明日の面接を受ける力がみなぎってきた。

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