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EP020. 三姉妹の中であなたが一番幸せよね

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「お母さん、お茶入ったよー。」

たまに実家に帰ってきては母とお茶を楽しむ。
私にとっては母を一人占めできる大切な時間だ。

今日も母とお茶をしようと実家へ帰ってきた。
他愛のない話を楽しんでいた時、母が突然こんなことを言い出した。

「あなたは恵まれてるわね。」

「えぇー、そうかなぁ…。」

「そうよー。良い家族に恵まれてるじゃない。」

「でもね、お母さん。お姉ちゃんや妹の方がお金を持ってるよ。旦那さんはエリートだし。タワーに住んでる。それも高層階にね。」

私は三姉妹の真ん中。
いわゆる中間子。

姉は頭が良くてしっかり者。
妹は愛想が良くて誰からも可愛がられる人気者。
私はどっちつかずのお調子者。

幸い三姉妹とも今は自分たちの家族を持つことができて、お金に困ることなく生活できている。

そんな私たちだが、妹が生まれるまで私は家族の中でNo.1だった。いつもチヤホヤされて可愛がられていた。しかし妹が生まれたことで状況は一変、妹が親の注目を一気に奪っていった。一方、姉はいつも新しい服やオモチャを買ってもらえるし「お姉ちゃん、お姉ちゃん」と妹が生まれる前と変わらず頼りにされてたが、私はともすれば忘れられていた。幼い私にとって親の注目を失うことは死活問題だったから、なにかにつけ親の気を引こうとバカなことばかりしていたのを覚えている。

三姉妹の中での立ち位置も微妙だった。
姉はいつも優しかったけど、姉妹の中で姉の言うことは絶対。妹は可愛かったけど、ワガママでいつも優先しなくてはならない。姉妹の中で私はまるで中間管理職。お姉ちゃん扱いされたり妹扱いされたり、その時々で都合良く扱われた私の幼少期は切ない想い出で一杯だ。今でもその頃感じていた劣等感を忘れられない。
ただそのおかげか、私は世渡り上手になれたので悪いことばかりではなかったかも知れない。


大人になってからも、姉妹の中で私は劣等感を感じていた。
結婚でも。

姉も妹も、大企業に勤める年上の男性と結婚した。IT系と外資系。どちらも高給取りでとても恵まれている。親からもとても祝福されていた。
私はと言うと、年下の夫は稼ぎが良いとは言えない。まじめだけが取柄。父からは結婚を反対され、時間をかけてなんとか説得して結婚させてもらった。
姉たちは年下の旦那が羨ましいなんて言うけど、本心で言っていないことは分かっている。

そんな私を母は恵まれていると言う。

「私の方はお金もないし恵まれてなんかないよ。なぜ私が恵まれてるの?」

「見れば分かるでしょう。お姉ちゃんのところは冷めきってる。お金はあっても恵まれてるとは言えないわね。その証拠に、実家に帰ってきたらいつも愚痴ばっかり言ってるでしょ?」

確かにそうだ。本人は決して恵まれていないなんて言わないけど、いつも愚痴をこぼす姉は幸せには見えない。

「妹もお金はあるけど…。これは内緒にしてって言われたけど、あの子の旦那は浮気してるみたいよ。まだ子供たちが幼いから別れるわけにもいかないって、この前泣きながら電話してきたわ。」

オタク風のあの人が浮気をしているとは…、人は見かけによらないものだ。

「それに引き換え、あなたの所は良いわよ。稼ぎは少ないかも知れないけど、とってもまじめで働き者じゃない。家族のために一生懸命頑張ってくれてる。子供も女の子二人だから将来はあなたを守ってくれるわよ。あなたたちが結婚したいって言ってきたときにお父さんは大反対したけど、ふたを開けてみると、三姉妹の中であなたが一番幸せよね。」

確かに言われてみればそうだ。

「私たちは、お金がたっぷりあるわけではないけど、ちゃんと住む家があって、とても素敵な家族がいて、幸せだなーって思えることがたくさんあるな。」

「そうでしょ。それが何よりも幸せなのよ。」

心に正直に結婚相手を選んで良かった。
スペックに惑わされず、愛する人を選んで良かった。

一番幸せだと母に言われた私は、今になってようやく、幼少期に感じていた劣等感を払拭出来た気がする。

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