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【連載】岩波文庫で読む「感染症」|山本貴光

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【連載】岩波文庫で読む 「感染症」第3回|現実がゆらぐとき、物語は世界を照らす灯となる ボッカチオ『デカメロン』|山本貴光

【連載】岩波文庫で読む 「感染症」第3回|現実がゆらぐとき、物語は世界を照らす灯となる ボッカチオ『デカメロン』|山本貴光

 日頃はとかく「役に立たない」と無理解にさらされることの多い文芸だが、このたびの新型コロナウイルス感染症パンデミック下では、過去の物語があらためて思い出され、読まれている。ボッカチオの『デカメロン』はそのひとつだ。

 例えば、『ニューヨーク・タイムズ・マガジン』 による「デカメロン・プロジェクト」 をご存じだろうか。2020年の7月に公開されたものだ。

 同プロジェクトのウェブページを訪れ

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【連載】岩波文庫で読む
「感染症」第2回|パンデミック・シミュレーター カレル・チャペック『白い病』|山本貴光

【連載】岩波文庫で読む 「感染症」第2回|パンデミック・シミュレーター カレル・チャペック『白い病』|山本貴光

 過去に書かれた小説や戯曲に触れて、まったく他人事とは思えないことがある。カレル・チャペックの『白い病』(★1)は、つい最近、そうした物語になった例である。

★1――カレル・チャペック『白い病』(阿部賢一訳、岩波文庫赤774-3、2020)

 カレル・チャペック(1890-1938)といえば、チェコの作家にしてジャーナリスト、あるいは批評家であり童話作家でもあった多彩な人。日本でも『ロボット(

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