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今の時代に求められるデザイン思考。デザイナーから教えてもらう生き方デザイン

僕が社長になった理由-伊藤 太一さん-
めちゃくちゃかわいい遊び心に富んだおしゃれなデザインをする伊藤さん。伊藤さんを最初に知ったのは、キャラクターデザインや紙(2D)でのデザインだったので、プロダクトデザイン出身というのを聞いて少し驚きました。でも、お話を聞く中で、デザインということの本質的なところからのスタートなので、あるテーマから広がる発想すべてがデザイン対象なんだとわかりました。そんな伊藤さんのまずは幼少期のお話からスタートです。
※文中写真は、彼のお仕事作品です。モノコト、空間やブランディングに至るまで。彼のいうデザインは”体験価値を創造すること”なんだそうです。

2019年夏、”いわみんプロジェクト”として、社長や起業家、独立して活動している方を対象に100人インタビューを実施しました。彼らがどんな想いで起業し、会社を経営しているのか? その中での葛藤や喜び、そして未来に向けて。熱い想いをたくさんの人に伝えたいと思っています。

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伊藤 太一(いとう たいち)さん

ベクトカルチャー株式会社 代表取締役社長
大学でデザインを学び
デザイン事務所に就職
その後、大手メーカーのデザイン部門を経験し
2011年独立

大学まで仙台で過ごし、デザイナーを目指す
東京のインターンで衝撃を受けアクセル全開に

 うちは母が食事にこだわりを持っていて、無添加とか手作りものを大切にしてくれていたんです。その影響もあってか、小さいころはコックさんになりたいと思っていました。
 小さいころから絵を描くのが好きで、小学生に入るとよく迷路をノートに描いていました。結構、ち密な感じに仕上げて、それを学校に持って行って友だちにやってもらうのが楽しみでした。ひとつだけじゃなくて、いくつかのステージになっていて、ひとつクリアすると次のページはちょっと難しくなる、みたいな感じで、土管の国とかステージごとにテーマも決めて描いていました。

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▲食にこだわりのある環境で育ったせいか、食品関係のお仕事も増えているそう。繊細で上品なセンスは伊藤さんならでは。

 高校は進学校だったので、国公立を目指すのが当たり前みたいな雰囲気の中、まんま素直に従うのはイヤだなって思っていました。とはいえ、東京まで出る勇気はなく、仙台の大学で工学部デザイン科に入りました。大学2年のときにバイク同士の事故で空を飛んだんですよね(笑)。死ぬ前に見るとか言われている、意識がゆっくり走馬灯にように流れるっていうのを、経験しました。足の骨を複雑粉砕骨折して4か月の入院。かかとの肉がそげちゃって、骨が見えるほどの大けがでした。当然、大学は行けなかったんですが、教授に相談してリポートを出せばOKになったので、留年することにはならずにすみました。

 僕は、将来絶対にデザイナーになりたいと思ってデザイン科にいたのですが、実際に大学を出てデザイナーになる人はほとんどいません。そんな危機感から3年では、ちょっと厳しい専攻をあえて選択したりしました。一度死んだって思ってますからね。そこと比較をすると、たいていのことはガマンできました。
 自分としては相当がんばっていたのですが、3年の長期休みに東京のデザイン事務所にインターンに行ったとき、ある衝撃的な経験をしました。インターン期間は1~2週間、同じ大学のメンバー3人と東京のデザイン学校で学んでいた子が1人という状況でした。東京で学んでいた子に、東京のおしゃれなインテリアのお店に連れて行ってもらっては、東京のレベルに驚愕しました。

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▲卒業制作の作品。試行錯誤の末に完成させていくんですね。

 また、卒業制作のための展示会を自分たちで開催する活動があり、彼はその前年度の代表をやっていたんです。会場の手配、スポンサー集め、全国の学生に呼び掛けて作品を集めることまでを執り行う、全国から集まった有志たちによるチームの代表です。同い年の子の意識の違いに焦り、自分はなんて生ぬるいところにいたんだと気づきました。仙台に戻ってからはさらに加速させるようにがんばりました。ポートフォリオを作ったり、自主的に作品づくりなどにも取り組むようになりました。

デザイン事務所からメーカーのデザイン室へ

 就職先はデザイン事務所に入ってキッチン用品や衛生用品、医療機器、飲料缶パッケージなどのプロダクトデザインを手掛けていました。その後、僕はもともとメーカー希望だったこともあり転職しました。新卒だと最初からデザイン部署には入れないところも多かったので、経験積んだ今だから中途で入れるチャンスだってこともありました。たまに友だちと集まったとき、デザイン事務所に入った子も、メーカーに入った子もいたんですが、どちらも相手をうらやましいって言うのを聞いて「隣の芝は青く見えるんだな」と思ったことを覚えています。

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▲ブランディングからパッケージデザインなども手掛けた岩手県大野にある、ミナミ食品。かわいい!

 メーカーデザインチームで4年くらい過ごしたあと、起業を考え始めました。デザイン業界では、独立する人も多いのでそれほど特別なことではありません。大学時代からうっすら考えていました。雑誌なんかで、デザイナーの人たちがカッコよく語っているのを見ていたので、あこがれのような気持ちもありました。ちょうど同じ時期に起業したいと思っていた友だちがいて、彼と一緒にスタートしました。

デザイン事務所と企業デザインチームの両方を経験し、どちらかを選ぶのではなく、独立の道を選んだ伊藤さん。デザイン事務所の仕事は企業からの受託も多いため、企業の中を見たことはプラスなのだそう。とはいえ、最初のスタートはデザインとは少し違ったビジネスを考えていたと言います。

独立して最初の挑戦はものづくりから

 僕たち2人の興味ある領域が教育(主体的な学び)、ものづくり、デザインでした。自分がやってきたことをメソッド化して後世にどう残すか、ということを考えていました。彼は議論とかディベートする場ということに興味があって、それらをどう実現しビジネスにしていくのか? ってことを議論していました。
 最初は紙子っていう和紙で衣服を作ったりする日本古来の手法があって、その技を使ってコインケースやバッグなんかを作ってみました。これは、僕がエコ系のコンペに出展するためのアイデアを考えているときに思いついたものだったんですが、まずはものづくりからスタートさせようということで始めました。

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▲OKIMAKを実際に製作している様子と、完成した商品。味のある素材感がいい味出してます。

 会社を設立して、デザインの仕事をしながらこの紙子で作ったものをOKIMAKってブランドにして販売したりしてました。ただ、ずっと製造工場を探していたんですが断られ続け、自分たちの手作業で作って売っていました。さすがにこれを継続させるのは無理だね、ってことでこのビジネスは終わります。

 当時、僕はシェアオフィスで仕事をしていたのですが、そこに打ち合わせに来た子が入社することに。彼女は大学で版画を学んでいたこともあり、版画アクセサリーというものを商品化することにしました。途中までは工場で作業してもらえて、最後の仕上げ部分だけが手作業です。最初の経験から、なるべく手作業の工程を減らしたんです。その後、『切手のこびと』というスタンプなども作りました。これは切手の横に押すことでちょっと遊びが加わるもので、サンリオとのコラボなども実現した商品です。

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▲「切手のこびと」は、切手を貼った横に押すスタンプ。こびとたちが切手を運んでいたり、寄り添っていたり。遊び心をくすぐられる商品です。

デザインをする仕事だけでなく、
大好きなものづくりもやっていきたい

 僕の仕事のメインはデザイン受託ですが、ものづくりも好きなのでそのバランスをとっていきたいと思っています。そのために何かしらコンテンツや商品を今後も作っていきたいと思っています。できれば、半々くらいのバランスが理想です。
 作るものは特になんでもいいんですが、おもしろいもの、あとは使う人が入り込む余地があったり、その人が遊べる隙間があるものがいいんです。その考え方の根源は、小学生のときの迷路を描いていたときの気持ちに通じているのかもしれません。自分が作ったもので、みんながそれぞれ楽しんでくれるような世界です。
 だから、特にジャンルは問わずなんですが、最近考えているのは、子どもの時の思いにさかのぼって食品を作るとか、知育系玩具とか、そういったものに興味があります。

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▲おはしで木のブロックを積み重ねていく知育ゲーム『箸でCUBEs』。ゲームクリエイターの方とのコラボ商品なのだそう。テトリスをアナログでやっている感覚で、子どもも大人も夢中になれます。

 デザインの仕事って、ただカッコよく見栄えを考えるのではなく、そのものの存在の意味から考える必要があります。「なぜそれが必要なのか?」「どんな存在であればいいのか?」「そもそもそれって何をするためのものなのか?」から考えていくんです。
 例えば、オーダーでは「掃除機を作る」って言われても、「そもそも掃除できればいいんだとしたら、箒とちりとりののような関係性のほうがいいんじゃないか?」とか。そこからデザインの発想をしていくことで、広がりが出てくるんです。そんな発想から生まれたものを自社商品として、ファンを作っていけたら楽しいだろうって思っています。

確かに伊藤さんのデザインは、遊び心をくすぐられるものが多いのが特徴です。一方で、古いものとか文化的なものを新しく方向づけていく、そんなことをしていきたいのだそう。事務所も日本橋で、古き良き日本を感じつつ新しいムーブメントが起きているエリア。これからの日本により求められる価値への貢献、楽しみにしています。

※伊藤さんのこだわりは、ご本人のnoteでぜひ☆
独特の視点での語りがステキです。
https://note.com/itotaichi

下町の2D&3D編集者。メディアと場作りのプロデューサーとして活動。ワークショップデザイナー&ファシリテーター。世界中の笑顔を増やして、ダイバーシティの実現を目指します!