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#私のコーヒー時間

仕事放棄

「午前中にコーヒーが切れてしまったので」
「今日の仕事は午後一の時点で終わったも同然」
「ちょっと誰にも話しかけられなくない」
「新作シフォンケーキまだ食べてないんです!」
「今朝の淹れ方失敗したから外で調達」
「我ただただカフェインを欲す」

・・・その時々で色んな理由をつけて、コーヒーを求め会社から出ていく私。仕方がないだろう、仕事を手に付けなくないんだから。


私のコーヒー時間は

申請者が提出してきた資料の内容と、それに基づいた報告書類の内容との差異を確認し、申請者にそれらの修正依頼をしたり、不足している資料の追加提出依頼を行う。それらが消化されたら次の工程の担当者へ引き継ぐ。ここ数カ月変わらない私の仕事。非営利団体が運営するその事業の運営方針や対応手順は、転職経験を経て中途半端に知識を獲得し、派遣社員として配属された私には緩いと感じるもので、過去の仕事で学んだ、合理性のある対応手順を業務改善に取り入れることに成功した私が、そこに溶け込むのに時間はかからなかった。年度末までに消化する必要があるその事業も、世間の夏休みと比例して落ち着いた業務量になってしまった。しかしながら割り振られた仕事に手を付けすぎるとあっという間に消化してしまい、暇な時間の方が長くなってしまう。仕事に手を出す時機を自ら手放し、お昼ご飯を終える私はいつも睡魔と向き合い、眠くて仕方がなかった。気分を切り替えるためにも、私のコーヒー時間は長くなる一方だが、私の心を軽くした。


コーヒーオタク

お昼を終え、毎日自慢気にプラスチックカップに入ったコーヒーを印籠のように携えるようなお金は私にはなく、普段は節約のため、家で淹れたコーヒーをポットに入れて出社している。思うに重すぎて現実的でないが、可能ならば1リットル以上を持って行ってもいいくらい、コーヒーを飲む時間を欲している。そういえば私のポットには「WE ARE COFFEE GEEKS」と書かれていて、おそらく購入当初はそんなことはなかったかも知れないが、結果的にCOFFEE GEEK(コーヒーオタク)となってしまったかも知れない。会社から出た私が過ごすのはスターバックスか公園、喫茶店だったりだが、携帯電話で好きなドラマを見たり、音楽を流しっ放しにしたり、コーヒーを飲んでいる間は好きなことしかしていない。申し訳ないが仕事をする人の気が知れない。


きっかけ

私は好きな人物に影響されやすい。それはパートナーにも度々突っ込まれている。例えば、大好きなドラマに出てくる、事件を解決するため捜査チームを引っ張る眼光鋭い主人公は狂信的にコーヒーが好きだったし、ゾンビでいっぱいになってしまった世界で命を懸けるゲームの主人公も、せっかくの貴重な物資をコーヒーと交換していた。大好きなハードロックバンドで髪を振り乱し、詰めかけたファンと一緒にシャウトするあの方も、リハーサルの間はコーヒーなしでは居られない。好きな人物と同じ行動をしたりして、その人物像に近づいたり、同じ感情を味わいたいと思っていた。眼光鋭くもならないし、命を懸けることもそうそうない、ハードロックバンドとしてデビューすることもなかったけれど、単純にコーヒーを好きになった。美味しいと感じる以上に理由を説明できず申し訳ないが、そういう点では私にとってはお酒と同じでコーヒーを飲むことが「大人になる一歩」だったと思う。大人ではない大人なんていくらでも居るが、私が好きな人物は絶対的に大人。というかおじさまだ。


大人の定義

私の中では明確に定義されている。自身の心を整理できていて余裕があり、自身がやるべきことや生き方を体現できる格好いい人。また重要なのはその人間性が他人に善い影響を与えていることだと思う。そう言ってしまえば私は全く大人とは言えない。生きていれば色んな理由があって大人から遠ざかってしまう瞬間はあるかも知れないけれど、理想の大人の人物像を忘れないでいたいし、そういう人物を見習うようにしたい。そんなものを考えてはいられない、現実と向き合うことが優先になってしまうけれど、そればかり突き詰めているとつまらない大人になってしまうはずだ。


子供

あなたには居ないだろうか。格好いいおじさまが。またこういう人物に限って子供に好かれるようなシーンや、子供を全力で庇ったり、子供にとんでもなく優しいエピソードを持っていたりする。私も子供は好きだし、子供には好かれたいので、友人の子供の遊びにはどこまでも付き合う。子供にさせたくないことは私もしない。親になれば変わってしまうかも知れない。それこそただの理想としてしまうのは、現実に生きている私が大人でないからだ。悲しいのが、私の顔を見るだけで怖がる友人の子供も居て、曰く髭を生やした男性は子供にとっては怖いものらしい。これは困ってしまった。私の好きな人物はどちらも髭を生やしているではないか。

どうやら私のコーヒー時間が終わってしまった。


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