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コメンテーター津良野房美#30

「房美さん!旅行行きませんか?」

百合絵に誘われて、房美は喫茶ルパンにいた。

「再来週の週末どうですか?
土日でいきましょうよ!」

「エッ」

他愛もない話をペラペラし続ける百合絵に適当に相槌を打っていた房美だったが、百合絵の突然の提案にハッと我に戻った。

「まぁ、再来週の週末なら大丈夫だけど...」
房美は週末の予定などあるはずも無いのに答えた。

「房美さん、ポンタさんが辞めてからずっと心ここにあらずって感じだし、気晴らしに行きましょ!」

「そーねー」

ポンタがいなくなってからというものキレキレだった房美のコメントは鳴りを潜めた。そして番組収録中に見せる寂しそうな表情。
変化を間近で見ていた司会の羽嶋や百合絵は房美を案じていた。

しかし、時折ワイプに抜かれる秀麗な房美の少し物悲しげな表情は視聴者やスタッフの男達のハートをむんずと捕まえた。
房美の心とは裏腹にモーニングタイムの視聴率は上がっていた。


「行き先とかは私に任せてください!手配も全部やりますから、」

「じゃ!行こっか!」

房美は溶けて程よい大きさになったアイスコーヒーの氷を口に含み、伏し目がちだった顔を上げて言った。

"百合絵ちゃんありがとう、
あなたは本当に思いやりのあるいい人ね"
房美は百合絵のさりげなく深い優しさに心底感謝していた。


つづく

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