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小説 トビの舞う空 第4話


舜太は、海岸へ下る坂道の途中にある公立高校に進学した。この高校の最上階にある美術室から見える海岸の風景が素晴らしいことを聞いていた。

舜太は、美術部に入ることに迷いがあった。風景画を描きたい気持ちは強かったが、デッサンと木目オヤジの様な先生はごめんだった。

カレンちゃんと渡辺は、もっと偏差値の高い高校も目指せたのだが、何故か舜太と同じ高校に進学した。渡辺は一緒に芸術大学を目指そうと舜太を誘った。

入学式の日のクラス発表で、成績の良い渡辺とカレンちゃんは特進クラス、舜太は普通クラスだった。

舜太のクラスは運動部の推薦入学の連中が多く、文化系の舜太とは体格もノリも違った。このクラスでやっていけるのだろうかと舜太は不安に感じていた。

入学式を終えると運動部の勧誘合戦が待っていた。ゴツい先輩数人が「来たれ柔道部」と書かれた看板を持ってやって来た。

「ねえねえ君、いい体してるねえ」

渡辺の腕をつかみ連れて行こうとしたが、舜太と渡辺はからがら逃げた。

校舎の四階の角にある美術室の横の引戸に「美術部」と書かれた紙が貼られていた。四角に止められたセロテープは黄ばんで乾燥し、下の二つは剥がれていた。

舜太と渡辺は引戸を恐る恐る開けた。

ギシギシときしむ引戸を開けると、中は油絵のキャンバスがうずたかく積まれていた。薄暗く人の居る気配がしなかった。

「すみませーん」

渡辺が呼ぶが返事は返って来ない。

「誰か居ますかあ?」

少し声を張って舜太が呼ぶと「誰だ」と奥から小さな声がした。

「美術部に入りたいんですけど」

「入って来なさい」

二人は恐る恐る中に入った。

積み重なるキャンバスの間を、体を横にして通った。絵の具とタバコの匂いが充満する澱んだ空気の中を、二人はそろそろと奥に入って行った。

突き当たりの壁を身体をよじらせ曲がると、古い事務椅子にもたれて、タバコをくゆらせている銀髪の先生が座っていた。

「入学おめでとう。待ってたよ」

先生は、つまむのが難しいほど短くなったタバコを灰皿に擦り付けて消し、のそりと立ち上がった。

腰が曲がった小柄な先生は、美術室に直結するドアを開け入って行く。舜太と渡辺は後ろを付いて行った。

美術室に入ると、差し込む日の光がまばゆいほどの明るさで、二人は一瞬焦点が飛んだ。美術室の左右全てが大きな窓で囲まれていた。

ガランとした美術室に、部員らしき姿は一人もいなかった。

「部員はいないのですか?」

渡辺が聞くと、先生はゆっくりと窓の方に歩いて行き、校庭を指差した。

「ほれ、あそこに」

二人は先生の指差す方を見た。校庭の花壇の前で一人の女子生徒がスケッチブックに何やら描いていた。

「あの子は花が大好きでのう、毎日花ばかり描いとる。そして向こうの男子、あやつはシンボルの二本松が気に入った様で、そればかり描いとるんじゃ」

二本松の横で、画板を抱えた男子生徒が一心不乱に筆を走らせていた。

「好きな物を描けばよい。だから美術室には誰もおらんのよ」

舜太は海岸が見える窓に歩いて行った。

「すごい!」

校舎のある高台から俯瞰すると、見慣れた海岸の風景はひと味も二味も違い、迫力満点だった。

「どうじゃ、この部屋からの江ノ島、中々の景色じゃろ」

「先生、僕はこの景色が描きたくて、この高校に入りました」

「舜太君と渡辺君、君たちの事はよう知っとる。あそこで描いてる姿をいつも見とったぞ」

先生はヤニで黄色くなった歯を見せた。

「そうそう、二人ともくれぐれもワシがタバコを吸ってた事は内緒じゃぞ。最近はタバコ吸える場所が無くてのう。女校長にもし知れたらえらいことになる」

美術部顧問の小森先生は七十歳を越えていた。定年で一度職を退いたが嘱託として美術教師に復帰した。

職員室にも一応机はあるが、ほとんどそこにはいない。いつも一人で美術準備室でタバコを吸っている事が多かった。

舜太は授業が終わると、真っ先に美術室へ向かった。海岸の風景が一番綺麗に見えるポジションにイーゼルを立てた。

渡辺はいつも舜太より一時間程遅れて美術室に来る。特進クラスの渡辺は普通クラスの舜太よりも授業時間が長い。同じ特進クラスのカレンちゃんを連れて来る事も良くあった。

今日も渡辺はカレンちゃんと一緒に美術室にやって来た。舜太の隣にイーゼルを立て描き始めた。

「おはよ、舜太」

カレンちゃんは二人の後ろの机にヒョイと座り、描く様子をジッと見ていた。

カレンちゃんは最近制服のスカートが一段と短くなった。舜太がチラリと後ろを見ると、足を組んでいるカレンちゃんのミニスカートから、綺麗な太ももとにょきりと長い脚が目に入った。舜太はドキリとした。

準備室のドアが開き、小森先生が出て来た。

「よう、進んどるかあ」

先生はキャンバスに向かっている舜太と渡辺に声を掛けた。タバコの匂いで先生が近づいて来たのがわった。

「もう先生、タバコ臭いよお」

カレンちゃんが鼻を摘んだ。

「まあ、大目に見ろや、ハハハ」

先生は黄色い歯を見せた。

「私のお父さんは随分前に辞めたよ、タバコは体に良く無いんだから」

カレンちゃんはヒョイと机から降り、美術室の窓を一つずつ全開にして周った。カレンちゃんは誰に対しても物怖じしない、ハッキリと物を言う。

「おお、女子はきびしいのう、かなわんな」

先生は見事な銀髪をポリポリ掻きながら言った。

「校長先生も小森先生のタバコのこと心配してたよ。とりあえず電子タバコにでもすれば」

「あの女校長はオレの教え子でな、生徒会長だったんじゃ。口うるさいのはその頃から変わらん。ワシそんなにタバコ臭いかな?」

先生はあちこち絵の具の付いた白衣の袖を、クンクンと嗅いだ。

「先生、この絵は?」

カレンちゃんが美術室の片隅で立ち止まった。

「おう、それな、昔生徒が描いた自画像じゃ」

「ふーん」

カレンちゃんは不思議そうな表情でジッと絵を見詰めている。

「何で顔が無いんだろう」

カレンちゃんは首を傾げながらポツリ呟いた。

「その自画像を描いた生徒はな、決して頭の悪い生徒では無かったんじゃが、受験の為の詰め込み教育が嫌いでのう。卒業出来るギリギリの出席時間を計算して、授業をよくサボってたんじゃ」

小森先生はゆっくりと立ち上がった。美術室の分厚い遮光カーテンの影に、ひっそりと掛けられていた顔の無い自画像の存在を、舜太と渡辺はその時初めて知った。

「他の教科は計算通り、ギリギリの出席時間で卒業単位を取れた。でも美術の出席だけ足りなくてのう、卒業が危うくなったんじゃ」

舜太と渡辺は、小森先生の話に惹かれ描く手を止めた。

「絵とギターが好きな生徒でな。準備室にいつも来とった。他の授業をサボってな、ハハハ」

舜太と渡辺はカレンちゃんの横に来て、顔の無い自画像の前に立った。

不思議な自画像だった。ピンク色の背景に、黄色く塗り潰されたのっぺらぼうの顔が描かれている。

何かを強烈に訴えかけて来るその自画像に、三人は見入っていた。

「ワシは言ったんじゃ。単位が欲しければ何か一枚描いて持って来いと」

小森先生は一旦話しを止めた。白衣の胸ポケットのくしゃくしゃになったタバコの箱から、一本を取り出して口に咥えた。そしてライターで火を付けようとした。

ギロリと睨み付けたカレンちゃんの視線に気が付いた先生は、慌ててライターをポケットにしまい込んだ。

「その生徒は美術部員では無かったんじゃが、それから放課後になると毎日美術室にやって来た。鏡に自分の顔を写しながらこの絵を描いとった」

先生は舜太と渡辺のイーゼルが置いてある窓際を指差した。

「お前たちと同じあの辺で描いとった。顔の部分は本当は描いてあったんじゃ。でも何度も描いては消し、描いては消し、多分納得いかなかったんじゃろう」

自画像の顔の部分は、油絵具が何層にも塗り重ねられたのか、分厚くなっていた。

自分自身を見つめ直せば、結局何も無い自分に気付く。自分は一体何者なのか。これからどうなって行くのか。この顔の無い自画像は、そんな得体の知れぬ不安を描いた絵なのかも知れない。

舜太はその生徒の気持ちが何となくわかる気がした。

「ワシはこの生徒に芸術大学を目指してみては、と薦めたんじゃ。でも受験科目にデッサンがあってな。この生徒はデッサンが大嫌いだったんじゃ」

同じくデッサン嫌いの舜太は渡辺と顔を見合わせた。

「此奴はロックとか言う、ワシらには理解不能な音楽を一生懸命やっててな。親御さんも大層心配されてた。でも今では結構な有名人になりおったわ」

その生徒とは、誰もが知る、かの有名なロックミュージシャンだった。

「でも癌で早死にしてしもうた。教師にとって、教え子に先に逝かれる程悲しい事は無い。天才はみんな早死にする。ワシみたいな凡才は、タバコを何本吸おうと長生きするんじゃ」

その生徒が亡くなって十年以上経った今でも、この絵を見る為に遠方からわざわざ訪ねて来る人が多い事を、舜太は後に知った。

「ねえねえ、美術館で江島早雲展があるんだって、今度の日曜日に見に行こうよ」

カレンちゃんが美術室に駆け込んできた。

「いくいく!それは絶対行かなきゃ」

舜太は即答した。

「渡辺君も行こうよ」

カレンちゃんは渡辺も誘った。

「いや、オレは日曜日予定があるから、ダメだ」

「ええ、そうなの?じゃその次の日曜は」

「ああごめん、次の日曜もダメだ、オレはいいから二人で行って来な」

渡辺はそっけなかった。

カレンちゃんは最近一段と綺麗になった。江ノ島の美人高校生サーファーとして、湘南界隈では今や知らない人はいない程だった。

長身でスタイル抜群、栗色のロングヘアーに小麦色の肌。サーフィンの日本代表候補にも選出され、次のオリンピックでは活躍が大いに期待されていた。

そんなカレンちゃんをマスコミが放っておく訳も無く、テレビ取材や芸能事務所のスカウトも訪れる様になったが、カレンちゃんは全く興味が無い様子だった。

日曜日、カレンちゃんのサーフィンの練習を終えてから、二人は昼前に東京に向かう為、江ノ電に乗った。

観光客もまばらな車内に舜太とカレンちゃんが並んで座った。背の低い舜太はカレンちゃんより頭一つ小さい。見た目は姉と弟のようだった。

有名人のカレンちゃんに、乗客達がこちらにチラチラと視線を送っていることに気づいた舜太は、照れ臭いような、気まずいような気持ちだった。

運動部ばかりの舜太のクラスは、最近カレンちゃんに彼氏はいるのかと言う話題で持ちきりだった。

彼氏は隣の高校のイケメンサーファーだとか、東京の大学生とか、はたまた、イケメンアイドルのOだ、など明らかなガセネタを言う輩までいた。

クラスでただ一人文化部の舜太は、チビの痩せっぽちで、背の順で並ぶと一番前。身体も声も大きな積極的な運動部の連中の中にいて、なるべく目立たない様にしていた。

クラスで全く存在感の無い舜太が、カレンちゃんと二人で出かけた事を知られようものなら、クラスの男子どころか学校中の話題となってしまうだろう。

江ノ電に揺られながら、舜太はあれこれ思い巡らせていた。

舜太はカレンちゃんとは幼馴染で長い付き合いだが、二人きりで遠出するのは意外にも初めてだった。

「ねえねえ舜太!お昼ごはん何食べようか、ここなんかどうかなあ?」

カレンちゃんは美術館の近くのイタリアンレストランを見つけると、舜太に顔を寄せてスマホの画面を見せた。

「あ、ああ」

か、カレンちゃん、近いよ、舜太は小さな声で答えた。

とりあえず江ノ電さえやり過ごせば、学校の奴らに見つかる事は無いだろう。でも鎌倉駅が危ない。東京行きの列車に乗り換えるまでは気が抜けない。舜太は上目でキョロキョロと周囲を警戒していた。

二人は鎌倉駅に着いた。舜太はそそくさと東京行きの電車のホームに向かうが、カレンちゃんはのんびりと歩いていた。

「カレンちゃん!早く」

「電車まだ来ないから大丈夫」

「いいから早く!」

舜太はカレンちゃんの手を掴んでホームの階段を登った。力強く舜太に引っ張られたカレンちゃんは、少し嬉しそうな表情をした。

「おう舜太じゃねえか、お前...」

ホームへの階段を登り切った所で、野太い声がした。舜太は驚いて顔を上げた。

舜太に声を掛けたのは、同じクラスの柔道部のランボーだった。

ランボーはカレンちゃんと手を繋いでいる舜太を見て固まっていた。舜太は手を慌てて振り解いた。

「ランボー君こんにちは!」

あっけらかんとカレンちゃんは言った。

「か、カレンちゃん、こ、こんにちは」

ランボーはガチガチに緊張しているようだった。ランボーはカレンちゃんに何度も告白した事があると噂されていた。

「部活?がんばってね」

カレンちゃんは何食わぬ顔でランボーに言うと、いこ、と舜太の手を引っ張った。

カレンちゃんと手を繋ぎ去って行く舜太の後ろ姿を、ランボーは呆然と見送っていた。

東京行きの電車の中で、舜太の心は穏やかでは無かった。

週明け学校で大変な事になる。あのお喋りなランボーの事だ、クラス中に言いふらすに違い無い。これは困った事になった。

舜太の気持ちを知る由もないのか、カレンちゃんは、ランチのお店を優雅に検索している。

舜太は、ランチどころでは無かった。月曜日に必ずやってくるであろう悪夢を、果たしてどの様に切り抜けようか、と思い悩んでいた。

大理石で出来た美術館は威厳に満ちていた。

「江島早雲特別展」と書かれた大きな垂れ幕の前には、既に長い行列が出来ていた。二人は行列に一時間並び、ようやく中に入る事が出来た。

天井が高く、ほの暗い館内に入った。二人の前にいきなり巨大な絵画が立ちはだかった。

江島早雲ことお爺さんの作品だった。舜太の部屋のトビの舞う空の何倍もの大きさがあった。

その絵から発せられる凄まじい気に圧倒された二人は、ぽかんと見上げたまま立ちつくした。

二人は美術館の大展示室に足を踏み入れた。巨体な展示室には、大小様々な江島早雲の作品がズラリと並んでいた。

一点ずつスポットで照らされ、絵は空中に浮いているかの様に見えた。舜太とカレンちゃんは、作品を一つ一つ丁寧に鑑賞して周った。周りの観客は遅い二人を次々と追い越していった。

二人は最後の作品の前に立った。江島早雲の息吹を心に焼き付けて行こうと、舜太は絵の具の膨らみ一つすら見逃すまいと凝視していた。

「いい絵ですねえ、おじいさん」

「ああ、とてもいい絵だ」

「何だか、元気が出ますねえ」

「そうだね、元気が出るね」

舜太とカレンちゃんが夢中で絵を鑑賞している背後で声がした。

二人が立っている後ろのソファーに座り、老夫婦が絵を見ていた。絵に夢中になり、二人は老夫婦の存在に全く気づかなかった。

「あ!すみません!僕たち邪魔になってるよ」

舜太はカレンちゃんの手を引いた。

「気付きませんでした、ごめんなさい」

カレンちゃんは老夫婦に会釈をした。

「大丈夫ですよ、どうぞご覧になって、私達はゆっくり見てるから大丈夫よ」

老婦人が優しく微笑んだ。

出口の前で舜太が振り返ると、老夫婦はまだベンチに座って絵を眺めていた。

「いい絵だねえ」

「そうですね、来て良かったですねえ、おじいさん」

「そうだな、良かったな」

舜太は出口の手前にとまり、老夫婦の会話を聞いていた。

「舜太グッズコーナーあるよ!早く行こ」

カレンちゃんに手を引かれ、ようやく舜太は出口へと向かった。

「ここのパスタ美味しいね、舜太のトマトソースはどう?私のカルボナーラと交換しよ」

二人は窓際の席に向かい合って座りパスタを食べていた。カレンちゃんはこの店に入ってから、ずっと喋りっぱなしだったが、舜太はほとんど聞き流していた。

「ああ、いいよ」

カレンちゃんは舜太と自分のパスタを交換した。

「うーん!これも美味しい!この店当たりだね」

カレンちゃんは舜太のパスタを頬張りながら、嬉しそうに笑った。

「そだね」

「もう、舜太、私の話聞いてる?何か全然楽しくなさそうじゃん!せっかくの二人切りのデートなのに」

カレンちゃんは頬を膨らませた。

デ、デート、これってデートなの?舜太は焦った。

「あ、ごめん、楽しいよ、ちょっと考え事してたんだ」

「何、考え事って、ランボーの事なら気にしないで。舜太に何か言って来たら、私がタダじゃおかないんだから」

舜太はランボーに見られた事を、すっかり忘れていた。それはそれで大問題なのだが、舜太が気になっていたのはそれでは無かった。

「カレンちゃん、僕、トビの舞う空を美術館に寄贈しようと思う」

「え、どうして?」

「さっきの老夫婦を見ていてわかったんだ。江島早雲の絵はみんなに元気を与える力がある。トビの舞う空は僕が独り占めしてはいけない絵だと思う」

「ふーん、舜太、その事を考えてたんだ」

「それに、僕が買った安っぽい額ではトビの舞う空が可愛そうだ。あの部屋は名画を保管するのに環境でもないし」

カレンちゃんはテーブルに頬杖を突いて舜太をジッと見詰めた。

「ウフフ、舜太、お前やっぱりいい奴だな」

カレンちゃんは大きな舜太のオデコを人差し指で突いた。結構な強さでオデコを突かれた舜太は首を後ろに反らせた。

「なにすんだよ、カレンちゃん」

「舜太のそゆとこスキよ♡」

カレンちゃんは小悪魔的な笑みを浮かべた。

「でも私の絵は寄贈しない。あの絵には大切な思い出がいっぱい詰まってるから」

「そうだね、あの絵はカレンちゃんが持っている方がいい。江島早雲もきっとそう言うと思うよ」

二人は割り勘で会計を済ませ、お店を出た。

「舜太、今日は初めてのデートだよ!」

カレンちゃんが舜太の手を握った。背の高いカレンちゃんの手は意外に小さく、指は細く華奢だった。

二人は東京の雑踏の中を手を繋いで歩いた。チビと美女の凸凹カップルを、道行く人たちが、振り向きながら通り過ぎて行った。

みんな見てくれ!僕の彼女カレンちゃんだ!可愛いだろ!うらやましいだろ!舜太はしっかりと前を向いて、撫で肩をいからせながら歩いた。

舜太が手を強く握ると、カレンちゃんはその手をぎゅっと握り返した。


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