コメンテーター津良野房美#39最終話
「えーっ!どうして?」
房美は驚いて聞き返した。
「さっき局から電話があって、急遽明日仕事になっちゃいました!」
百合絵はそう言うと流しのタクシーに手を挙げた。
タクシーが止まり、ドアが開いた。
「じゃ、ポンタさん!房美さんの事よろしくねっ!」
百合絵はそう言うとタクシーに乗り込んだ。
「高松空港までお願いしまーす」
と百合絵が言うとタクシーのドアが閉まった。
「ちょっとー!百合絵ちゃん!」
房美はタクシーの窓を叩く。
百合絵はタクシーの中でバイバイをしている。
そしてタクシーが動き出すとピースサインをした。
◇
ポンタと房美は二人取り残され、呆然と百合絵の乗ったタクシーを見ていた。
すると、タクシーは少し進んだところで突然ブレーキランプが点灯して止まった。
タクシーのドアが開いた。
百合絵が降りて来て、こちらに小走りで駆けてくる。
「ヤバイ!ヤバイ!
忘れるところだった!」
と百合絵が言う。
「ポンタさん!房美さん!
スマホ貸してください!」
ポンタと房美は訳わからず、黙ってスマホを百合絵に差し出した。
百合絵は、右手にポンタのスマホ、左手に房美のスマホ、両手で操作し始めた。
ものの数十秒で百合絵は
「はい!コレでオッケー!」
とポンタと房美にスマホを差し出した。
「全く二人とも、じれったいんだから!
じゃあねー!」
と百合絵はまた止めてあるタクシーに向かって走り出した。
「LINE交換しといたからー!」
と百合絵は言いながらタクシーに乗って行ってしまった。
◇
ポンタと房美はしばらくその場に佇んでいた。
房美は百合絵に渡されたスマホを見た。
LINEの新しい友達に「本田武史」と入っていた。
「そうか、ポンタさんは『ほんだたけし』なんだよね」
房美が言った。
ポンタも自分のスマホを見た。
新しい友達に「山田花子」とある。
"やまだはなこ?"
ポンタは顔を上げて房美を見た。
「私の本名ですよ」
と房美が微笑む。
「そうか!房美は芸名だよね!
、、、
でもこれからも『房美さん』って呼んでもいいかな?」
ポンタは言った。
「もちろん!
私もポンタさんでいいよね!」
「もちろん!」
「ハハハハハッ、、、」
月あかりに照らされた讃岐富士が二人を包むようにそびえていた。
終わり
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