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振り上げた拳をおろせなかったんだろうなぁ

第2次安倍政権においてアベノミクスは ”三本の矢” を柱とし、日本経済の停滞を立ち直らせるという経済政策だった。

第一の矢 大胆な金融緩和
第二の矢 機動的な財政政策
第三の矢 民間投資を促す成長戦略

ぼくは決して悪い経済政策だったと思わないけれど、結局放たれたのは第一の矢だけだったように思う。
第二、第三の矢を撃てなかったのにはいろんな背景があっただろうけれど、それにしてもなぜあのタイミングで、それも二度も消費税増税をしてしまったのか(2014年4月に8%、2019年10月に10%)。

まだデフレを脱却していないのに消費税増税というのは拙速で景気に水を差すとしか思えないし、二度目の時(10%に増税)というのは、景気後退のタイミングだった。凡人であるぼくからすれば正気の沙汰とは思えないし、だから次の矢を放つことができなくなったのでは、という気さえする。

まぁ、それでもウルトラスーパー賢い黒田・前総裁には勝算があったのだろうと思っていたら、少し前に読んだ本にこの時の状況が記されていた。
アベノミクスを支えるリフレ派の人たちや内閣官房参与といったブレーンの人たちでさえ指摘や提言をし、消費税増税には反対だったらしい。
それでも増税を実施することになったのは安倍元首相が、というよりも頑固でブレない黒田・前総裁に押し切られた印象が強い。
2013年9月の総裁会見でもこう話されている。

私どもは、予定通り消費税率を引き上げたもとでも、基調的に潜在成長率を上回る成長が続くと思っており、景気が腰折れするとは思っていません。

黒田・前総裁が推し進めてきた金融政策は、大量の通貨供給によって物価の押し上げを目指す世界でも類を見ないものだった。だから ”異次元” であり「非伝統的金融政策」と呼ばれた。
伝統的金融政策を重んじるウルトラスーパー賢い経済学者の先生たちからすれば、ほぼ財政ファイナンスをしたこと自体をけしからんと憤慨されているだろうけれど、僭越を重々承知で経済素人のぼくには、金融緩和の引き際を間違ったことが一番の問題(失敗)だったと思えてならない。

2013年4月に異次元金融緩和が開始され、2016年にはマイナス金利、イールドカーブ・コントロールが追加で導入された。

ちなみに雑な説明で申し訳ないけれど、マイナス金利というのは、銀行など民間金融機関が日銀に預けている預金の金利をマイナスにすること。そうすることで、それなら日銀に預けるより企業に貸し出したり投資にまわす方がえええわ、と金融機関に促すことで経済を活性化させようとした政策。だからこれは、ぼくら一般人には適用されていない。

イールドカーブコントロールについては終わらなくなるので割愛するけれど(興味のある方は調べてください)、いずれも不景気が続く日本経済を上向きにしようとするためのものではあった。けれど長期金利を0%付近に抑えるためには、大量の長期国債を買い入れる必要がある。
要するに、国債の需給をコントロールすることで長期金利の調整をした(多分合ってると思う)。

景気、経済を良くするためとはいえ、日銀が人為的に市場を歪ませるのもいかがなものかと思うし、それ以上にこうしてアベノミクスの下、国債買い入れを続け巨額な ”国の借金” を作ってしまったのは、どうなんだろうね。

その是非はともかく、個人的には量的緩和をやってみたことまでは悪くない、仕方がなかったと思うけれど、その後のマイナス金利、イールドカーブコントロールは本当に必要だったのかな。

ぼくがこう思う理由は、以前にも載せた米ドル・日本円の推移を見てもらうのが早い。

米ドル・日本円の推移

アベノミクスによって(知らんけど)過度な円高が是正され、2016年1月にマイナス金利を導入した時のレートは、1ドル・約121円だった。
1ドル何円が適正かは立ち位置によって違うのでわからないけれど、ぼくはこれくらいが輸出入業どちらにとってもほどよい価格帯じゃないかと思っている。
もしここで金融緩和をやめていれば、その後どうなったのかは神のみぞ知るだろうけれど、1ドル・160円という過度な円安による物価高騰で国民が苦しめられることや、現在のような巨額の ”国の借金” にはなっていなかったのでは、と思ってしまう。

それでも金融緩和をやめるどころか、追加でマイナス金利、イールドカーブコントロールを導入されたのは、頑固でブレない黒田・前総裁が就任時に大々的に公言された「持続的、安定的な2%目標」というインフレ率(物価上昇率)2%に固執された結果なんだろう。
率直に述べれば、黒田・前総裁が ”振り上げた拳をおろせなかった” のではないか、とぼくは結構本気で思っていたりする。

今年の3月に植田日銀によってマイナス金利の解除、イールドカーブコントロールの廃止が大きなニュースになった。もちろん金融政策正常化への一歩であり、これは長期に渡り続いてきた異次元金融緩和の終わりを意味する。

遅すぎるわ。

つづく

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