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ふたを開ける

あー、やっぱり結婚がうまく行ってほしかった。愛し愛される結婚生活を送りたかった。ずっと私のわがままを聞いていてほしかったし、甘やかして欲しかった。家族でいて欲しかった。私はずっと子どもだった。ずっと子どもでいたかった。一緒に料理したり、協力して家事をしたり、そうやって暮らしたかった。

昔より今の自分の方が少しはマシだと思うし結婚生活は苦しかったから、離婚は必要な過程だったと思うけれど、本当は家族をやめるなんて選択をしたくなかった。
戦いのような結婚生活だった。命があるうちにお互い生還できてよかったけれど、本当は完全に崩れる前に立て直して、崩れそうになる前に手入れをしたりして、大切に守りたかった。
母と子の2人。世界で一番小さい家族になった。愛おしい小さな家族だけど、もっと賑やかな家族を作りたかった。

離婚して4年以上がすぎて、ようやく当時の本当の気持ちを言葉にできるようになった気がしている。本当のことを認めてしまうと前に進めない、悲しくて壊れてしまうと思っていたのだろう。後回しにしたことは、後から何倍にもなって自分に降りかかる。このことをわかっていたつもりだから、別れることの辛さとは正面から向き合った。とにかく苦しくて悲しくて辛い時期を逃げずに向きあったつもりだった。胸の苦しさは1年ほどたってどこかへ消えていた。
ようやく最近になって、自分の中にあるこの箱を開けても良さそうだという頃合いになったのだろう。ギリギリで堪えていた頃に開けていたら自分を保てなかっただろう。今がちょうどよかったのだ。
新しい家に越した時、前の家では毎日泣いていたので、ここでは泣かないと決めた。本当に3年間全く泣かなかった。それが最近ようやく、泣けるようになった。少しずつ少しずつ、癒えている。私にちょうどいいタイミングで自分を慰めている。
この箱が最後なのだろうか。それともまだこの先開けていない箱を自分で見つけていくのだろうか。時間がすぎると過去に起きたことはぼんやりとしていくけれど、自分の中の輪郭は明確になっていく。

そう思っていた自分を認めると、結婚なんてもう死んでも嫌だと思っていたのに、また誰かと家族になれたらいいなと思っている。
誰かのことを好きになって、幸せな暮らしができたらいいな。



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